ボイトレは「悪い発声」を「良い発声」へと導くために行うものですが、喉が自由になってくると「悪い発声」でさえ、いつでもデモンストレーションする事が可能になってきます。
そして、その「悪い発声の体感」は「良い発声」をより前進させてくれます。
今回の記事は「悪い見本」とは?「悪い見本」をボイトレに取り入れる事について書いてみます。
お付き合い下さい。
目次
悪い見本をデモンストレーション出来るようになる
例えば、野球のノックを思い浮かべて下さい。
外野手にフライを取らせたり、ボテボテのゴロを内野に打ったり・・・
つまり、凡打を自由自在に打つ事は、下手な人には難しいでしょう。
YouTubeなどで、悪い発声が示されている動画がありますが、あのようなデモンストレーションも喉の自由度が低いと難しいと思います。
「悪い見本」とは、つまり本来使うはずの筋肉を敢えて使わないようにしたり、筋肉のバランスをわざと崩すような動作を必要とするので、ある意味喉の自由度の証とも言えます。
そして、悪い見本は、良い見本を示せる力が無いと出来ません。
ところが喉が自由になってくると、悪い発声を意図的にデモンストレーションする事が可能になってきます。
例えば、本来ミックスボイスになるべき音程を地声のまま張り上げる、これは裏声の筋肉を意図的に眠らせておくことで発声する事が出来ます。
「良い発声」と「悪い発声は」表裏一体
例えば「地声と裏声をミックスする力」と「地声と裏声を分離させる力」は常に正比例して育ってきます。
「高い音程で声が裏返って恥ずかしい!高音まで繋がるようにしたい!」という方が多いと思います。
そのためには「いつでも裏返る」、いや「いつでも裏返せる」事が必要になります。
つまり、地声と裏声が完全にミックスされた声を作るためには、地声と裏声が完全に分離した状態でいつでも発声出来る事を目指すのです。
僕のレッスンで「分離練習」をとても大切にするのは、そのためです。
「悪い見本」を使って喉の自由度を高める
僕のレッスンでは「悪い発声」も実行してもらいます。
代表的な例は「高音での張り上げ」です。
言わずと知れた悪い発声の見本のように言われているこの「高音での張り上げ」、これを直したい為にボイトレする人も多いと思います。
確かに癖づいてしまうとやっかいなものですが、「ミックスボイスができる」事だけを目標にして、声量を出さずに高い音程までスムーズに繋ぐ練習ばかりしていると「張り上げられなく」なってしまいます。
「張り上げる発声」が出来てこそ「張り上げずにスムーズに繋ぐ発声」との差、つまり使う筋肉や感覚の違いがよく分かります。
そして、その差を体感することで「良い発声」はどんどん促進されていきます。
そもそも「張り上げは悪!」というボイトレの概念は間違っています。「張り上げ気味」に歌う名歌手はたくさんいます。松崎しげるさんや尾崎紀世彦さん等です。ボイトレした事で「弱いミックスボイスは手に入ったけれど、張り上げられなくなった」なら、少なくとも彼らのように歌う事は出来なくなってしまいます。これは発声のバリエーションが一つ減った事に等しいです。
まとめ
生理的にも音色的にも、その真逆の動作が出来る事が「良い発声」が出来る事の証となります。
また、あえて真逆の発声を行なう事で「良い発声」の体感は深まります。
ぜひ、時々は封印していたかつての「悪い発声」を取り出して、訓練中の「良い発声」との体感の差を感じて下さい。きっと、トレーニングを前に進める手助けとなるはずです。
以上、ご精読ありがとうございました。