ソフトな曲とハードな曲。曲調の違いと声を操る難易度の関係

ライブにおいては「ソフトなバラード」より「ハードなロック曲」の方が歌うことは難しい。その理由は「バックの楽器の音量」「曲の旋律的な特徴」の違いによる。もちろん両方を上手く歌いこなせることがボイストレーニングの最終目的となる。

僕は年に1度か2度、ソロライブを企画しています。完全な「一人で弾き語り」の時間、演奏仲間を交えて何人かで歌う時間・・・色々取り交ぜて、自分の好きなカバー曲やオリジナル曲を並べて歌う・・・そんなライブです。

自分で選曲して、曲順を決めて、仲間やお客さんと一緒にライブを盛り上げていく・・・とても楽しく充実した時間を過ごすことが出来ます。

そんなソロライブの選曲では曲のバランスが重要になってきます。バラードばかりとかハードなロック曲が多すぎたりするとライブ自体が単調なものとなってしまうので、その辺りの“曲調”の偏りを作らず満遍なく構成することを考えて演奏メニューを作っていきます。

さて、上に書いたような“曲調”、つまり(極端に2つに分けると)「ソフトなバラード」と「ハードなロック」・・・どちらが“難しいか”と問われれば、経験から僕は迷わず「ハードなロックの方が難しい!」と答えます。

僕自身の声の特徴はどちからかといえば「バラード向き」の“柔らかい”音質だとは思いますが、僕が「ハードなロックが難しい!」と答えたい理由は、そういう”声の向き不向き”の問題からではありません。もっと根本的な問題、誰にでも平等に当てはまる”生理的な”難しさがあると感じています。

この記事は、このような書き出しで続けてみたいと思います。

お付き合いください。


「ハードなロック曲はバックの演奏も大音量」という、音響環境的な問題

※冒頭で「ソロライブ=弾き語り」の話を書いてきましたが、ここからは「ドラム入りのフルバンド形式」を前提として話を進めていきます。

ハードな曲の難しさは「バックの楽器の音量」に一つの原因があります。

「激しいビートのドラムやベースの入ったハードな曲」と「ギター1本をバックに歌うバラード」では音圧に“天と地ほどの”開きがあります。

音量の問題に加えて「色々な楽器の音が混在している中から自分の声を聴き分ける」という、とても難しいことをやらなければなりません。

こういったハードな曲の時に自分の声が全然聴きとれない状況で歌う・・・いつそんな場面が訪れるともわかりません。そのために「喉の感覚で声を捉える」訓練を日頃からやっておかなければなりません。なので、練習の時にあまりに潤沢に(音量面でも音質面でも過保護に)自分の声を耳からインプットすることは避けた方がよいでしょう。

 

「レガートに歌いにくい」という、曲の持つ「旋律的な特徴」の問題

少し極端な言い方ですが、バラード曲の”旋律的な特徴”は「レガート(音と音が滑らかに繋がっている)」である場合が多いのではないでしょうか?

さらにテンポもスローなことが多いので、意識的に「レガートに」歌うことも可能です。

実はこの「レガートに歌う」ということは、表現としての効果の他に「喉の機能的な効果」もあります。

音と音とを滑らかに繋いで歌う・・・この事は「声の破綻」、つまり声が裏返ったり掠れたりすることから守ってくれます。たくさんの筋肉から成り立つ喉は、その機能状態の“突然の変化”よりも“滑らかな変化”を必要としてます。

ブレンド(ミックス)した状態の地声と裏声が破綻して”声が裏返る”・・・こういうことは決まって“急に声を大きくした”“急に音程を移動した”といった「突然の変化」を喉に強いた時に起こります。

一方、テンポの速いハードな曲では、レガートに歌うことが難しくなるでしょう。曲の間中ずっと、喉に「突然の変化」を強いる・・・そんなこともあり得るでしょう。

実際には、テンポの速い曲でも「レガートに」歌わなければなりません。ただそのためにはより行き届いた喉の神経支配が必要となるでしょう。「速いテンポでも音と音を繋ぐ」という”鋭い喉の感覚”を鍛えていかなければなりません。

 

楽器の数が増えれば増えるほど、声を操ることは難しくなる

他の記事でも書いたことですが、歌の難しさは「バックの楽器の数や音圧」と正比例します。つまり弾き語りライブよりフルバンドライブで歌う方が、より難しいのです。

自分の声が良く聴きとれる「弾き語りライブ」では「耳からの情報」を頼りに出来ますが、音の大きなバンドサウンドの中では「喉の感覚」が鍛えられていないと、歌うことは中々難しいでしょう。

往々にしてバンドの音量は「ソフトなバラード」では抑え気味に、「ハードなロック曲」では大きくなるものです。”タイプの違ったそれぞれの曲が求めている音量・音圧”が全く違うものであるのは当然であり、ギタリストやドラマーは(感情に逆らわずに演奏すれば)ハードなロック曲でより大きな音量を求めてしまうことは、むしろとても自然なことであり、それは”音楽的な正解”だとさえいえます。

そんな理由からもハードな曲の方が声を操ることは難しくなります。

こうやって書いてみると尚更「耳からの情報」に頼りすぎない訓練を日頃から意識したい、と強く思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「バラードがロックよりも簡単だ」とは、我ながらかなり極論を申し上げましたが、喉の機能的・生理的な面から考えると、そんなに暴論ではないと思います。

何にしても、歌を歌っていくには少なくとも「ソフト」と「ハード」、二つの曲調のカラー分けが出来るシンガーを目指すことは必須です。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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