「楽器としての喉」その特性パート2(再投稿)

この記事は2018年3月11日に公開したものを2018年5月31日に追記・再編集したものです。

さて、喉を楽器としてみた時、他の楽器とどんな違いがあるか?

もちろん、どの楽器もそれぞれ特性があり、個別の考えや扱いが必要でしょうが、こと喉に関してはより独特な特性がある事は間違いないと思います。

今回の記事は喉を楽器として捉え、「きちんと音を鳴らす」段階から「音楽的表現の完成」までについて注目してみます。

お付き合い下さい。


楽器として完成させるまでに時間がかかる

どんな楽器でも演奏者のタッチによる音質の差があり、良い音を鳴らせるようになるまでに練習を重ねなければいけません。

ギター等はもちろんの事、ピアノのような機械的な楽器にさえタッチによる音の違いがあります。

でも、ギターやピアノは「音程が高い方と低い方に二つに分かれてしまっている」「真ん中の音程の部分に出せない音・出しにくい音がある」なんて事は考えられません。

一方、ほとんどの人の声は「高い音(裏声)と低い音(地声)」に分断されています。それだけならまだしも実際の問題はもっと複雑です。人によっては高い音ばかり鍛えられていたり、低い音しか出なかったり、最悪の場合両方がこんがらがっていて、ほどくのに一苦労!みたいな事もあります。

喉は「楽器としては壊れてしまっている場合がほとんど」だということになります。

そしてボイトレとは、壊れている楽器を全ての音が出るように直していく作業だといえます。

極端な言い方をすると、ボイトレとは「声を低い方から高い方まで一本化して自由に歌えるようにする」という一言で言い表すことが出来ます。

僕は「声は元々一本化されていた」という考え方が”好き”です。その方が、ボイストレーニングを進めていく上で「回復させる・元に戻す」という考えを持てるからです。事実、ある程度トレーニングが進んでくると、声は不思議に「一本化」されてくるようになります。

しかし、それが中々に努力と忍耐の必要な事なのです。

生身の人間の、しかも目に見えない器官の動きに対してあれこれと手を加えていく事なので、その難易度は他の楽器と比べてみても決して易しいとはいえませんし、むしろとても扱いの難しい楽器である!といえます。

何しろ「全ての鍵盤が美しい音で鳴るピアノを手に入れる」事と同じ状態、つまり「地声と裏声が一本化された声を手に入れる」までには「6年~10年」かかるとも言われています。

ひるんでしまいそうな年月ですが、素晴らしい歌手の素晴らしい声を聴くとトライするに値する事だとは思います。

人間の喉は、上手く使えば「宇宙一」の楽器になるといった人がいます。僕もこの意見に100%同意いたします!きちんと鳴らされた喉は美しい声を作り出し、全ての人の魂を揺さぶります。こういった表現が全く大袈裟に感じない程の魅力が人間の声には宿っていると、僕は信じています。

 

完成された楽器には相応の音楽性が宿る

何年もかけてボイトレして、声がある程度自由になった、つまり完成された楽器を手に入れた時、「さあ、これから歌の勉強をして良い音楽性や表現を身に付けていこう!」などと謙遜して考える必要はありません。

そもそも人間は皆一人一人が「とても個性的な歌心」を持っています。試しに友人たちとカラオケに行って、他の人の歌にジッと耳を傾けて下さい。何も歌について勉強していない人の声にも「独特な歌心」が宿っている事に気が付くはずです。鼻歌のように無意識に出た声でさえ、皆それぞれ個性的です。僕は、歌に関しては「喉という楽器の完成」こそが一番難しく、一番時間がかかるものだと考えています。これは喉と他の楽器の大きな違いだと思います。

自由になった声には「美しい音色」「適切なビブラート」「音から音への滑らかな移動」「自然な息づかいの中での自然な歌い回し」のような具体的な歌のテクニックは大いに身についているはずだからです。

自由になった喉は「美しい音を発する」事ができ、「美しい音を発する」事によって「更に良い喉の状態へ自然に調整される」と考えられるからです。聴いていて美しい声は、そのまま喉の機能を回復・調整していると考えます。

ですから、喉が楽器としての完成をみたなら、音楽的にも相当素晴らしいものが身についているはずです。

ボイトレとは純粋に発声の改善を目的とするものであり、「喉の機能回復・声の完成」を目指す、言い換えればメカニカルで、ある意味、歌唱テクニックの前段階的な訓練と思われがちですが、実はテクニックや音楽性も大いに身に付けてくれると考えて良いと思います。

ボイトレでは「良い声を出す!」「自然に音を繋ぐ!」のような音楽的な思考を常に持つべきです。ただ機械的な発声訓練だけに陥ってしまわないようにしたいですね。

「楽器として完成された状態」まで到達すれば、「感動させる歌」までは、あともう少し!ではないでしょうか?

 

以上御精読ありがとうございました。

PAGE TOP