日本からチェストボイスが消えてしまう!(再投稿)

この記事は2018年3月8日に公開したものを2018年5月28日に追記・再編集したものです

「私、話しかけても何度も聞き返されてしまうんです。」

こんな悩みを持つ人、ほんとに沢山います。

実際、そんなにやかましくない環境で会話をしていても、僕自身が聞き返してしまう事が一日に何度もあります。

日常の伝達ツールはlineや種々のSNSに取って代わられ、おそらくスマホのマイクやスピーカーの感度は昔とは比べ物にならないくらい上がっているはずだから、そもそも大きな声を出す必要が無いのだと思います。

 

昭和○○年の一コマ

夕方の5時か6時頃、近所の空き地に遊びに出かけたままいつまでも帰らない兄弟を呼ぶ母親の声

「タカシ~!シゲル~!ご飯よ~」

 

商店街で魚を売る声

「この鯵、買っておいきよ!どうだいこの活きの良いこと!ねっ!

 

タバコ屋さんの店先の赤電話で話す声

(周りがウルサイというより電話のスピーカーの限界なんだろう・・・)
「え?!何!?ちょっと電話遠いな~!もう小銭無いからから切るよ!」

 

どれもこれも充実した声量のある豊かなチェストボイス(地声)です。

ここでいうチェストボイスは、広く「豊かな話し声」という意味で使用します。

そして、どれも現代では見られなくなった生活の一コマです。

これらのチェストボイスは日本の日常から無くなってしまいました

 

現代の一コマ

公演のベンチで小学生の男子が二人、それぞれスマホのゲームに興じています。

時々お互いスマホの画面を見たまま話かけます。

「なあ、今日も塾なんやろ?・・・ボソボソ」「うん、お前は?・・・ボソボソ」

 

スーパーのレジに並んでいます。
「○○円になります・・・ボソボソ。こちらの自動清算機でどうぞ・・・ボソボソ」

 

車にガソリンを入れようとします。

「油種を選んでください!!」おお!充実したチェストボイスだ!

なんや自動音声かい・・・

 

繁華街で

「お兄さん、居酒屋お探しじゃないですか?・・・ボソボソ」

「えっ!?何!?」「(ちょっと大きな声で怒ったように)居酒屋お探しじゃないですか?!!」

※客引きが聞き返されてたらあかんでしょう!

 

種類分けさえ不可能な聞き取りにくい声が溢れている現代には、熱心な営業マンや意欲的な政治家、それにボイトレの学習者のような限られた人達しかチェストボイスは使わなくなりました。

酔うと大声になる人もいるので一概にその機能が失われたとは申しませんが。

 

映画のセリフ

昔の邦画を観ると僕は時々「セリフが演劇調だなあ」とか「こんな悲しい場面でそんなにハキハキ話していいんかいな!」と感じてしまいます。

名優が出演する名画と呼ばれるものでさえそう感じます。

そして最近の邦画を観ると僕は必ず「セリフが聞き取りにくいなあ」とか「声が小さくて何言ってるか分からん」と感じます。

多分、昔は録音技術もマイクの性能も今とは比べものにならないくらい悪かったから、俳優は脚本の真意・セリフの意味を確実に観客に伝える事を最優先していたんだと思います。

だから多少表現的に場違いでもハキハキとしたセリフ回しを行なっていたんだと思います。

とりあえずセリフが聞こえる声と言い回しで」という前提(足かせ?)の上で他の要素、例えば全身の動きであったり表情で俳優としての表現を競っていました。

技術の進歩した現代ではリアル(を装った)なセリフ回しもマイクは克明に捉える事ができるので、細かい言い回しのニュアンスそのものも表現の大きな手段になったのだと思います。

現代は、映画の中で聞けるチェストボイスの物量は物凄く減ってきていると思います。

 

余談ですが、俳優の仲代達也さんがインタビューでこんなことを仰ってました。

俺の声は最初、全然ダメだった。芝居をすると声が枯れて出なくなる。でも何度も出なくなっては回復、出なくなっては回復を繰り返すうちにいつの間にか強くなった。

声帯は使えば使うほど強くなるなんてことはあり得ません。

もし仲代さんが一度声が出なくなって回復した後、また同じ声を出していたとすれば、いつまでも喉が強くなるなんてことはなかったでしょう。

仲代さんは声が出なくなる度に少しづつ声色を変えていって、無意識に未使用の喉の筋肉を使う方にシフトしていったんだと思います。

それを繰り返すうちにたくさんの未使用筋に神経が行き渡って発声の自由度が高まったんだと思います。

「出した事の無い声を出す→喉の未使用筋が鍛えられる→発声の自由度アップ」です。

 

チェストボイスを取り戻せ!

日本人全体を見ても明らかに声は「小さく」「弱く」「伝わりにくい」方向へ向かっているので、個人においてもその傾向は仕方がないと思います。

でも、チェストボイスは必ず取り戻せます。

また再び豊かな声で話すことは絶対に可能です。使われていない部分を「元どおり使えるように」すれば。

たかだか数十年前までは町中でチェストボイスが飛び交っていたのですから!数十年なんて人間の歴史からみたらケシツブみたいな時間です。

そして、チェストボイスで話せるようになったその先には、いよいよ「自由に歌う」という目標が待っています。

繰り返すようですが、人間は話すより先に歌っていた生き物なんです。

だから僕たちの声が最大限に回復した状態とは「自由に歌っている」状態なんでしょうね。

 

以上御精読ありがとうございました

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