コーラス(ハモり)のパート分けの”現実的な”やり方 パート特性はあるのか?

「高音パート・中音パート・低音パート・・・やっぱりコーラスのパート特性はあるのでしょうか?」「コーラスのパート分けをする時の注意点は?」

このような質問を受けました。

3人でハモる曲があったとします。その曲を歌う場合に「高音パート・中音パート・低音パート」に”パート分け”をしなければいけません。そんな時は、その人が元々持っている音程・音質の”特性”があり、それによってパート分けをするべきなのか?つまり「君は高音パートに適した声だから高音だね、君は低音の声の持ち主だから・・・」といった風に、生まれ持った”素質・特性”によって歌うパートが自動的に決まってしまうのですか?という質問です。

言い換えれば「低音の特性の人は今後一切、高音パートを歌うことを諦めなければならないのか?」ということです。

この問題については、僕も慎重に答えたいと思います。「理論的に」と「現実的に」の間には隔たりが大きいと考えているからです。

今回は、この質問に答える形で書き進めてみたいと思います。

お付き合いください


「高音の声」「低音の声」という”特性”は、”現状の”喉の筋肉バランスの現われです

シンプルに言うと、全ての声は「喉の筋肉のバランス」の現われとして一定の音質や音程を伴って発せられています。

つまり、今あなたが出している声は「今の筋肉バランス」に依存しているだけであり「金輪際、他の音質・音程は出せない」わけでは決してありません。

なので「パート特性」は確かにありますが、それには”現状の”という修飾語が必要です。

少しネガティブに言えば、その「現状のパート特性」は、そのまま「現状の声の固着」であるともいえます。

 

”理論的には”ほぼ全てのパートを歌うことが可能です

前項に書いたことから、少なくとも「生まれながらのパート特性」というものはほとんどありません。

もちろん生まれつきの喉の形や大きさの特徴(声帯の長さや各筋肉の強さ)によって個人差はあるでしょうが、それも実際考えられているよりはずっと少ないと言われています。

上記のような大きさや形の多少の個人差はあっても「機能的な差」は、喉にはほとんどありません。つまり、あの人の喉が出来る仕事を他の人の喉は全く出来ない、ということはありません。

ただ、現状のあなたの喉は「その声しか出せない(その声が一番出しやすい)状態」になっていることは事実です。

 

”現実的には”歌うパートは限定されますが、ボイトレに”パート特性”を持ち込んではいけません

バンドで3声のボーカルハーモニーを歌う・・・3人のシンガーの”現状の”声を聴いて高音パート・中音パート・低音パートに振り分ける・・・やはり、”現実的には”このようなパート分けをすることになるでしょう。

いくら「私の声は”今の筋肉バランス”によってこの音程しか出せないだけだ!」と言ってみたところで、3人のシンガーの「完全な声の開放」を何年も待つなんていう時間はないでしょうから。

よって現実的には、今歌って、その音程や音質を聴いて、パート分けをしていくことになります。

ただし、ボイストレーニングにおいては「現状のパート特性」を持ち込まないようにしてください。

つまり「自分の歌うパートばかり練習する」「歌に必要ない音程や音質を全く発声しない」・・・このようなボイトレを続けてしまうと、あなたの声はより一層、特定の音程・特定の音質に偏ってしまい、時間とともに不自由さを増すことになります。

上記のことは「ボイトレにジャンルのマナーを持ち込まない」ことと同じ意味合いです。ボイトレはあくまでも”機能訓練”であり、美醜・好き嫌いといった主観を持ち込むことはボイトレを失敗させます。(フースラーは「声の訓練は”治療”である」とさえ書いています)

 

パート分けをする時は「その音を長く歌えるか」に注目してください

パート分けをする時は「その音を長く出し続けられるか?」に注目してください。

特に高音パートを決める場合「突発的に高い音が出る」ことは何の役にも立ちません。それどころか「サビだけ歌えた」場合も参考になりません。喉にとって一番大切なことは「いかにその音を長く続けられるか」という点です。

なので、3声のパート分けをする時は「1曲全部」か、もっと言えば「数曲続けて」、そのパートで歌えるかどうか?を目安にして下さい。

 

もう一つの注意点「ドラマチックな声」と「リリカルな声」

もう一つ、パート分けをする時に声の音質のついて注意してください。

声の音質は(極端に2つに分けると)「重く劇的な声=ドラマチック」と「軽く漂うような声=リリカル」に大別されます。

そして、上記の二つの声のトーンは「ドラマチック=地声優勢」「リリカル=裏声優勢」という”機能的な”違いの現われであるとも言えます。

そこで注意したいのは「ドラマチックな声のシンガーに高音パートを歌わせること」です。

もし、そのドラマチックなシンガーの「喉の機能回復」があまり進んでいなかったら・・・裏声の足場が出来ていない状態で、ドラマチックに高音を続けて歌うことは喉を危険にさらすことになります。

もちろん、喉の機能回復が進むとドラマチックに高音を歌う(ベルト発声・ベルティング発声)ことも可能になります。思えば僕も、裏声の足場が出来ていない状態でドラマチックに高音を歌い続けて声帯結節を患ったことがあります。そうなると一か月間は歌う事を我慢しなければなりません。皆さん、どうか注意してください!

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今のあなたのパート特性は「現状の喉の筋肉バランスの現われ」なので、”理論的には”他のパートも歌うことは可能です。

しかし、現実問題としては「今の声」から判断してパート分けをしなければなりません。しかし、ボイトレでは意識的に普段出さない音程・音質の声をたくさん出すようにしてください。

「裏声の足場」の弱い人に高音パートを任せることのないように注意してください。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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