日常生活上、いつも僕たちは行動を抑制して生きていかなければなりません。
立ち居振る舞い、言葉遣い・・・、ほとんど全ての事が「社会のマナー」の中に収まっている事が普通です。
「声の使い方」も同じです。
男性が甲高く話す事、女性が太く低い声を出す事、叫ぶこと、唸る事・・・こういう事は「声のマナー違反」として進んでやりたがる人は少ないですが、ボイストレーニングの枠組みの中では「声のマナー違反」は許される事、いやむしろ「率先してどんどんやるべき事」です。
しかし、実際はボイトレ中に発声している声を、無意識のうちに「マナーの中に封じ込めて」抑制している事があるという事を、僕自身のトレーニング中にも感じます。
また、様々な理由から「出さないままでいる」声も、実はたくさんあるので、こういう未開発な声の中にこそ成長の材料が詰まっている、と考えましょう。
そんな例を挙げながら、書いていきたいと思います。
お付き合い下さい。
奇声を発する練習 ~僕の場合~
僕も日々のトレーニングや演奏活動・レッスンなどで、放っておくと自分自身で声をマナーの中に(声質的に表現的にも)封じ込めてしまっている、と感じます。
そして、時々は意識的にマナーから解放する事は必要だと思います。
奇声を発してマナーから解放する
奇声には声の成長を促す素晴らしい効果がある事は、以前のブログにも書いています。
僕は一週間に1~2度、奇声の練習をしていますが、やり方は・・・
車を運転しながら、適当に「ぐが~~」「ぎゃ~~」「ぼえ~~」と叫びます。
時間は長くはありません。休み休みで20分くらいです。
こんな冗談みたいな練習ですが、僕は効果を感じています。
具体的には、この練習をした後はミックスボイスを発声しやすくなります。(「融合が加速する」事を感じます。)
是非参考にしてください。
信号待ちの時は、一旦休止した方が良いでしょう!(笑)
全ての発声を認めてこそ「真のボイストレーニング」
僕たちが声を封じ込めてしまう理由はいくつかありますが、そんな風に封じ込んで「出さない声・出せない声」として、そのままにしておくのは勿体ない事です。
そんな声を出してみる・解放することによって、新しい成長がみられるかもしれません。
いくつか例を挙げて書いてみたいと思います。
喉を傷める可能性があるから
代表的な例では「地声の持ち上げ・張り上げ」です。
「地声は高くなっていくと、裏声とミックスされて、やがては裏声に抜けていく」事が理想だ、というのがボイストレーニングのマナー・常識です。
喉を傷める可能性があるために「地声で高い音域を発声すること」を、完全に封じ込んでしまうメソッドもあります。
しかし「地声の持ち上げ・張り上げ」を全く練習しない事は、声の可能性を狭めてしまいますので、喉を傷めない程度に少しづつ練習するべきだと思います。
生徒さんに地声の持ち上げをやってもらうと、ほとんどの人は咳き込んだり、苦しそうだったりします。確かにハードな発声なのであまり長くやらない方が良いとは思います。ライブや発表会の直前も避けた方がいい練習でです。
ガム(歪み声)の練習も長くやるとダメージが残りやすいと思います。
ただ、喉を傷める事を極端に怖がっていたのではボイストレーニングは出来ません!
元も子もない言い方ですが、どんな発声をしていても、たとえ普通に日常会話だけをしていたとしても、喉は少しダメージを受けますし、全てのトレーニングが喉に負担をかけるものだと思った方が良いと思います。
そして、負荷をかけることでしか喉は成長せず、声も変わらないのです。
歌いたいジャンルに必要ない声だから
レッスンや自主練習の中で、まさか「こんな声で歌う事はない」という理由で発声しない事はないと思いますが・・・
例えば、僕を含めたロック・ポップスを歌いたい人がオペラ的な太く豊かな声を嫌って出さなかったり、クリアーな声が好みの人が歪んだ声を出さないでおく、という事は「声の抑制」と言えるでしょう。
オペラ的な声は豊かな地声を育て、歪んだ声は適正な息の量の目安となります。
むしろ、貪欲に模倣する人の方が喉を早く成長させ、声を変える事が出来ると思います。
ジャンルの先入観から誤解を与える例としては、YUBAメソッドを思い浮かべます。プログラムCDつき 奇跡のボイストレーニングBOOK
この本のサンプル音源の声はまさに「オペラ的」なので「自分はこんな声で歌う事はない」と考えて拒絶する人がいても不思議はありません。
しかも、サンプル音源は「曲に合わせて歌われている」ので・・・発声練習的に断片が収録されていれば、また印象は違うと思います。
この時に「これは純粋にボイトレなんや!訓練の為に歌っているんや!」と思えるかどうかです。
歌いたい歌に必要ない音域だから
僕もかつては「僕が歌いたい歌は、もっと高いキーだから」という理由で、低音を練習しなかった時期があります。
もちろん、発声練習では広い音域を満遍なく出しますが、実際の歌でも「得意ではないキーの歌」のレパートリーを持っておいたほうが良いと思います。
3分間の低いキーの歌を歌う・・・訓練価値は高いと思います。
発声練習で3分間続けて低い音域を継続して出し続ける事は、あまり無いからです。
ほとんどの人(特に男性)の練習は、高音に偏りがちです。巷では高いキーの曲がたくさん溢れていて、そもそもボイトレの目的自体がシンプルに「高い声を出したいから」という人も多いので、高音の練習は意識的・無意識的にたくさんやっていると思います。低音を意識して練習する事で、伸び悩んでいた声が変わってくる事もあります。
まとめ
場所が許せば「奇声の練習」、是非やってみて下さい!
また、出さないままにしている声は無いか?と、一度考えてみて下さい。
実は色々な理由で封じ込めてしまっている声がたくさんあるのだ、と気付くと思います。
以上、ご精読ありがとうございました。