歪んだ声・ダミ声で歌う為には?

ロック系の歌手の歪んだ声に憧れている人は多いと思います。

欧米のロックシンガーに、綺麗な声で歌う人は少なく、ほとんどのシンガーが様々な種類の歪みを自分の歌声の魅力の一つとしています。

そもそも「良い声」の概念が、彼らと僕たち日本人では違うのかもしれません。

そんな歪み声は「ガム声」とも呼ばれ、その聴いた印象とは裏腹に「健康的」な声なのです。

今回はそんな歪み声=ガム声について、色々書いていきたいと思います。

お付き合い下さい。


喉を潰して歪み声を作った等々・・・全て都市伝説です

歪み声を作るために「布団に顔をうずめて喉を潰した」「ウォッカを一気飲みした」・・・等のロック歌手のエピソードは、ほとんど全て「都市伝説」だと思います。

冷静に考えても、そんな無茶な事をして、その後も歌い続ける事は不可能だと思います。

声は、それでなくても体調の変化を受けやすいです。

喉をそんな劣悪な状態にしてしまって、あんな難しい「歌うということ」を満足にやり遂げられるはずはありません。

「ウォッカで喉を潰した」と語るロック歌手が、元々並外れた喉の機能を持っていて、「ウォッカを飲んで歌った時に、喉が今までにない動きをして歪み声のコツを掴んだ。その後その歌手は歪み声で歌う事が出来るようになった。」という事ならあり得るかもしれません。しかし、この場合は「ウォッカで喉を潰した」というよりも、「喉が新しい動きをするチャンスが、ウォッカを飲んで歌う事により訪れ、その結果、歪み声のテクニックをマスターした」と考えた方が正確だと思います。

歪み声は、「仮声帯」という声帯の上にあるヒダが震える事によって起こる、れっきとした(それも知的で高等な)テクニックです。

「仮声帯」云々に関しては、最近はネット上でもよく取り上げられている、ボイトレ界では割とポピュラーなキーワードとなりました。

この歪み声、皆さんにとっては、もちろん「かっこいい」「荒々しい」という声のトーンとしての憧れの対象であると思いますが、もう一つ、歌う事にとってとても大きな役割を含んでいます。

 

歪み声は「安全な声のバロメーター」

歪み声を得るためには仮声帯のヒダを震わさなければならないのですが、このヒダは「強い息」が通ると震える事が出来ません。

声を出すのに必要な自然で適正な息の量が、声の通り道を通った時にしか震えないのです。

そして「強すぎる息」は喉を傷める最も大きな要因です。

つまり「歪み声が出ている状態」=「適正な息が声帯を通っている状態」=「喉が安全な状態」という図式です。

また、逆に「張りのある声しか出ない」=「強すぎる息が声帯を通っている状態」=「喉が危険にさらされている」という法則も成り立つので、「充実した張りのある声しか出ない状態」は、必ず安全とはいえないのです。

 

歪み声を出すための練習

歪み声を出す為には、かなり高いレベルでの「喉の機能回復」が必要になります。

つまり歪み声に強い憧れをもっているとはいえ、簡単に手に入るものではないので、基本的な訓練により喉を回復させ、その上で少しづつ「歪ませる練習」をしていく事が大切です。

 

基本的なボイストレーニングを進めながら、少しづつ・・・

分離~強化~融合の基本的なボイストレーニングを進めて、喉の自由度を高めながら「歪ませる」練習を加えていきますが、喉に違和感を感じた時は「自分の喉はまだ“歪みの練習“に耐えられる状態ではない」と判断して、また3カ月後を目安に再挑戦する事をお奨めします。

具体的には「咳払い」の延長で歪みの感覚を掴んでいく練習がありますが、一朝一夕に「コツを掴む」というようなものではなく、あくまでも「充実した喉の状態」が大前提となるテクニックだと考えて下さい。

しかし「誰でも習得可能な技術」であることは間違いがなく、巷で言われるように「ああいう声の人は喉が強いから」とか「出来る人と出来ない人がいる」といったものではなく、誰にでも習得のチャンスはあります。

僕も、かつてこのテクニックを先生に教わっていました。レッスンで少し歪み声を出してみて、先生が「痛いとか、痒いとかない?あったらこれ以上続けられないから」というと、僕は「痛いし、痒いです」と答えていました!(笑)つまり、それぐらい最初は難しいテクニックであり「出来るようになる事すら想像できないレベル」でした。

僕は、歪み声に対する憧れがかなり強く、いつも歪みの練習をしては喉を傷めていました。当時の僕の喉では荷が重い練習だったのだと思います。しかし、失敗しては基本の練習をして・・・を繰り返している内に、必ず自然に出来るようになってきます。

歪み声を一度出してしまうと「発声が楽で、簡単に声量が出る、しかもかっこいい!」ので、つい頼りがちになってしまいます。しかし、最近になって「クリアな声」あってこその対比としての「歪んだ声」という美意識が必要な事だと思います。

 

まとめ

一見、不健康で荒っぽい歪み声、実は高度で健康的なテクニックなのです。

このテクニックをマスターする事で、生理的にも表現的にも、間違いなく声の幅を広げる事が出来るので、長い目で見てじっくりとトライしてください。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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