書物を鵜呑みにしない。ボイトレ本は正しいとは限らない。お薦めボイトレ本の紹介

僕は”声に関わる仕事”を始めて10年ほどになります。

そして僕の前職は「印刷屋」なのですが、ステージで歌ってギャラを頂くようになってからもこの「印刷屋」としての仕事はずっと続けていました。つまり昼間は印刷の仕事をしながら、夜はミュージシャンの仕事をする、そんな”ダブルワーク”を何年も続けてきました。

僕が携わっていた印刷物は「名刺」「封筒」「はがき」「チラシ」といった小さなものがほとんどでしたが、時には出版物の仕事に関わることもありました。

お客さんからいただいた寄稿文や写真を編集してレイアウトやデザインを考える・・・やっぱり名刺や封筒とは違って時間とお金をかけて仕上げるものだけにとても神経を使う仕事です。紙面のデータを印刷機にかけて、それを製本所さんに持ち込みます。待つこと二週間、立派に製本された状態を確認するまでは気が気ではありませんが、完成品を手にするとやっぱり達成感がふつふつと湧いてきます。

僕が関わったものは「自費出版物」がほとんですが、過去には何種類かの”本屋さんの店頭にならぶ”出版物の仕事にも携わった経験があります。

しっかりした表紙がついてきちんと製本され、洗練された書体で印刷された完成品をみると「大きな仕事に関わったんだなあ」と強く感じます。

名刺や封筒くらいならパソコンとプリンターがあれば自宅で誰でも作れる時代ですが、「出版物」となるとそう簡単にはいかず、プロの手を借りずに完成させるのは難しいでしょう。やっぱり出版物は”特別なもの”というイメージがあります。

そして、ページを開くと正しいことばかりが書かれていると錯覚してしまうのは、僕だけでしょうか・・・

 

出版されたから「内容が正しい」わけではありません

「本屋さんの店頭に置いてある」ことが”内容が正しい”こととは一致しませんが、僕たちの中に「こんなにちゃんとした形で出版されているのだから、きっと内容も正しいのだろう」という思い込み・先入観が少し芽生えることは否定できないのではないでしょうか?

特にボイトレなどの”ノウハウもの”は、そんな錯覚に陥りやすい分野ではないかと思います。

また、例えば本屋さんのボイトレ関連の本棚を眺めます。表紙が正面を向けられて”スタッフお薦め”の表示とともに堂々と並べられた本と、かたや本棚の隅の方に背表紙だけが見える状態で申し訳なさそうに置かれている本・・・僕ならやっぱり前者を先に手に取ります!そして「内容が正しい」という前提で読み進めてしまうかもしれません。

人間とは、こういった心理的な操作に弱いものですね・・・

「装丁の立派さ」と「内容の正しさ」が連動しないことも、言わずもがなですね!

 

書物に書かれていることは、鵜呑みにしがちです

多くの場合、書物は神聖なものだと考え、そのまま鵜呑みにしてしまいます。

チェザリー

有名なボイトレ本「The Voice Of The Mind」の著者・ハーバートチェザリーの言葉です。

たくさんの情報が溢れ読者側から情報の正誤を判断しやすい時代になったとはいえ、確かに「書物は神聖なもの」という先入観は僕たちの中に今でも生きていると思います。

チェザリーは「読者は知的に挑戦するべき」とも書いています。

しっかりと製本された本であっても、その書かれている中身に対して”知的に挑戦”して、自分の見識で内容への判断を下すことが大切だと思います。

 

立派な出版物であっても、作られるプロセスは単純なものです

最近は安くて品質の良いプリンターもたくさん売られているので、会議用のレジュメ作りなども簡単にきれいに出来るようになりました。データを作ってプリンターで印刷して、ホッチキスや製本テープで仕上げる・・・誰でも出来る作業です。

「出版される書物」と「自分で作る会議用のレジュメ」・・・極端にいうと、この二つを作るプロセスには大きな違いはありません。基本的に必要なものは「データ」「紙」「インク」だけです。(もちろん出版物は最終的には製本所さんの手に渡って装丁されますが、これも機械がやることなので・・・)

ただし「紙」や「インク」はお金を出せば簡単に買う事ができますが、「データ」だけはそうはいきませんね!出版物であってもレジュメであっても、著者の言いたい事が書かれていてお金を出しても買う事ができないのは「データ」だけです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

僕の前職の経験も交えて「出版物」について書いてみました。

本として立派に仕上げられているかは、中身の良し悪しには全く関係がないことなのです。決して書かれている内容を鵜呑みにせず、”知的に挑戦”することが大切です。

最後に、ボイストレーナーとしての僕に大きな影響を与えてくれた出版物、その「内容」について共感し何度でも読み返したくなる書物・・・そんなボイトレ本を三冊ご紹介したいと思います。ぜひ手に取って読んでみてください!

「最高の声を手に入れるボイストレーニング フースラーメソード入門」(武田梵声著)

「うたうこと 発声器官の肉体的特質」(フレデリックフースラー著)

「ベル・カント唱法 その原理と実践」(コーネリウスLリード著)

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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