歌と飲み物 ~歌う時に飲み物は必要か~

歌を歌う時に、ミネラルウォーターなどの飲み物を傍らに置いておく人はとても多いと思います。

「はちみつ入りの飲料が良い」「ウーロン茶は油分を流してしまうからダメ」「冷えた飲み物はダメ、常温が良い」・・・様々な意見があります。

さて、僕自身も「歌と飲み物」については、とても真剣に考えていた時期もあり、その考えもその時々によって変わってきました。

今回は「歌と飲み物」について、僕の経験と考えを書いていきたいと思います。

お付き合い下さい。


「歌と飲み物」~僕の経験~

僕が歌の仕事を始めた頃、つまり「正しいボイストレーニング」を知らなかった頃は、多くの人と同じように練習中はミネラルウォーターを片手に、本番でさえステージに飲み物を置いていた事もあります。

「声を出すと喉が渇く」というより、「歌には飲み物が必需品」という固定概念もあったと思いますが、とにかく練習でも本番でも、飲み物には神経を使っていました。

僕は今でも、練習を始める前にコーヒーと氷水を用意します。これは「喉が渇く・声帯を傷めない」というよりは、「トレーニングを始める」というモードにメンタルを切り替える目的です。

この頃は、ステージの合間には必ず飲み物を多めに摂るようにしていました。

そして、当時の僕は自分の発声の悪さをカバーしてくれそうなものなら、何でも試していました。

ネットや本の情報から試した事は「オリーブオイルをスプーン一杯飲んでから歌う」「コーラを飲んで歌う」「唐揚げやとんこつラーメンなど、脂っこいものを食べてから歌う」「塩水でうがいしてから歌う」「水を2リットル飲む」などです。

当然ながら、どれも効果は感じられませんでした。

当たり前ですね、喉の機能が滞っていたのですから・・・

万が一、上記のどれかが効果のあるものだったとしても、僕にはそれがどれかは分からなかったと思います。それほど、色々な事を試し過ぎていました。

そして「腹式呼吸」による発声をやるようになってからは、異常な喉の渇きに悩まされました

腹式呼吸の訓練を毎日やっていると、歌う時に吐ける息の量はどんどん増えていきます。

それに伴って、声帯は歌うたびに、強すぎる息によってどんどん渇いていきます。

つまり、呼吸が強くなる→音程を息の量で稼ぐ癖がつき、異常な声量で歌うようになる→声帯が常に乾燥する、という悪い流れです

この時期の一番ひどい時は、1曲通して飲み物なしに歌う事が難しかったくらいです。

また「僕は人より喉が渇きやすい特異体質なのではなかろうか?」と、真剣に悩みもしました。

キャバンクラブ大阪でのイベントの時、アンプの陰に飲み物を用意していた事があります。それほど「絶望的な喉の渇き」に悩まされていました。

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発声が改善されると飲み物は必要なくなります

そんな僕も、フースラーメソッドを根幹とする正しいボイストレーニングと出会ってからは喉の渇きに悩まされることもなくなり、今では飲み物をステージ持って上がる事もなくなりました。

これはいわば当たり前のことで、腹式呼吸やその他の一切の「呼吸」に関する練習をやめ、「喉だけに仕事をさせる」練習に切り替えたため、息の量は「必要な分だけ」しか声帯に当たらなくなったためです。

全ては「発声の問題」だったのです。

おかげで僕は今、飲み物の心配を一切せずに歌を歌う事が出来ています。

溢れている情報の中には、一見正しいように見えても、今振り返って冷静に考えると「怪しいな」と思える事もあります。例えば「ウーロン茶は声に良くない」という、割と広く流布している説です。「声帯の油分を落としてしまうから」と言われていますが、はたして発声する時に声帯に油分はあるのか?また必要なのか? 仮に油分が必要だったとして、わずか数100ミリ程度のウーロン茶に油分を流してしまう程の力はあるのか? 僕も当時は藁にもすがる思いだったので、そんな冷静な分析は出来ずに情報を鵜呑みにしていました。

お酒によって喉が渇く事は、また別の問題だと考えてください。お酒は体の内側から水分を奪い、息のコントロールも乱してしまいます。つまり声帯も含めた体全体が「普通ではない」状態になっているのです。

 

「人間は歌える生き物」だという前提から考えてみる

人間は「話すより先に歌っていた」と言われます。

そして、ボイストレーニングとは、喉を「本来の正しい状態に戻すためのもの」、喉を「成長」させるというよりは「回復」させるのだという考え方に、僕は大きな夢を感じます。

そんな、僕たち人間にとって「自然な行ない」であるはずの「歌うこと」のために、「ペットボトルのミネラルウォーターを必ず用意する」「ウーロン茶はダメ」「1曲歌ったら必ず飲み物を飲むように」・・・こんな「不自然な行ない」が必要なはずがありません。

昔の僕のように、上記のような「不自然な行ない」無しに歌う事が出来ないなら、その人の喉には「本来の正しい状態に戻す事=正しいボイストレーニング」が必要だという事です。

元ビートルズのポールマッカートニーは1ステージ(3時間弱)を、飲み物なしで歌い切る事で有名です。世間では「飲み物なしで何時間も歌うポールは怪物だ!」と言われていますが、僕はそう思いません。ポールは「人間が歌う」という事の「自然さ」を見せてくれているのです。ポールの喉は「人間本来の正しい状態」なのです。

 

まとめ

もし皆さんが「歌うと喉が渇く」と感じているのなら、それは「発声に問題がある」ためです。

程度の差はあれ、喉を「本来の状態に回復」させる為に正しくボイストレーニングする事で、必ず「飲み物なしで」歌えるようになります。

「歌うこと」は僕たちにとって自然な行いであるはずです。

人間は本来、水を飲まないと歌えない生き物ではありません。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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