感情の乗った歌声をお客さんに聴かせる。感情の高ぶり・抑圧を作り出す、シンガーは”感情労働者”

先日、街を歩いていたら”猫の病院”なる看板を見つけました。獣医さんのいる病院・・・一昔前なら「犬猫病院」「動物病院」などと呼ばれていたのですが、今は「ペットクリニック」「アニマルホスピタル」などの呼び方に変わっていているでしょうか?

それにしても”猫の病院”には驚きました。本当に猫しか診てくれないのでしょうか?・・・確かにインパクトのある看板でした。猫専門の獣医さん・・・・究極のスペシャリストという感じがします。

もちろん”猫だけを診る”、猫専門の病院があっても何の不思議はありませんし、猫だけを診続けている獣医師さんに診てもらえるのなら、飼い主さんはどれだけ安心なことでしょう。とにかく、世の中には本当に色々な仕事があるものですね。

そういえば・・・僕たちボイストレーナーも、そんな珍しい職業=究極のスペシャリストの一つだと言えるでしょうね。

 

さて、ある人から「感情労働」という仕事の分別・概念があることを教えてもらいました。

体を使った作業を賃金に変える「肉体労働」、頭を使って創出したアイデアなどを賃金に変える「頭脳労働」に対して、「感情労働」とは、感情を抑えたり高ぶらせたりコントロールすることによって賃金を得る仕事のことを指すようです。その職種に求められる”ひな型となる感情”があり、その感情を提供することが必要となる仕事のことです。

もちろんどんな仕事でも感情のコントロールなしには成立しないとは思いますが、それを殊更に求められる職業といえば「接客業」が最たるものでしょうか。レストランに行って食事をする時、僕たちは代金を支払うことになりますが、その代金の内訳の中には料理そのもの意外にも「お店の雰囲気」「空調などの環境」そして「店員さんによる接客」も含まれています。たとえ不愉快な気持ちであっても店員さんは笑顔でお客さんに接しなければいけません。まさに感情をコントロールする必要があり、そのことで対価を得る「感情労働」ということになるでしょう。

なるほど、”感情労働”ねえ・・・

そういえばシンガー・歌手も、ある種の”感情労働者”と言えるかもしれませんね。

僕自身、正直に申し上げると、いつもステージではニコニコしているように心がけていますが、実は毎度ご機嫌なわけではありませんものね!

寝不足で体が辛い・・・声の調子が悪く、上手く歌える自信がない・・・足を捻挫して、立っているのも辛い・・・そんなマイナスな精神状態の時でも明るく振舞うのがシンガーの務めでもあります。そして、楽し気な歌・希望に満ちた内容の歌の時には思いっきりプラスのエネルギーを放出するように努力しなければなりません。

また例えば、こんな場合も考えられます。昨日とても良いことがあった!楽しくて嬉しくて仕方がない!そんな精神状態の時でも、暗く憂鬱な失恋の歌を歌う時には、切なくやるせない感情を乗せて歌わなければいけません。

結局、人前で歌を披露するということは、自分の現状の感情を押し殺すなり捻じ曲げるなりして、その曲が求める”ひな形の感情”に自分を寄せていく、ということになるのですね。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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