僕は高校生の頃に初めてバンドを組み、それからずっと(時々は辞めたりしながら)演奏活動を続けてきています。
今になって思うと、昔の音源をほとんど残しておかなかったことが悔やまれます・・・(僕自身の声のビフォーアフターを聴いてもらえれば、生徒さん達の大きな励みになったでしょうから!)
なので、最近はほとんど毎回、ライブでの自分の演奏を録音するようにしていますので、時々は【歌唱サンプル】としてこのブログの中で公開していきたいと思います。
今回公開するのはFaithfullyです。アメリカのロックバンド・Journeyの曲で、僕くらいの世代(1970年代生まれ)の人にはとても馴染み深い曲だと思います。
(下記サンプルの録音日時は2018年8月19日です)
僕が初めてこの曲に挑戦したのは2012年のことです。当時の僕は「ボイトレ難民」となっており、色々なボイトレメソッドや練習方法を、ネット上の情報に流されるがままに貪っていた時期です。
その頃の僕にとってFaithfullyは、あまりにも敷居が高い曲でした。ライブで何度か歌ったこともありますが、あまり上手く歌えた記憶はありません。
それから6年越しの2018年に、再度この曲に挑戦してみると、以前よりずっと楽に歌えるようになっていました。
当然、僕はその間に歳をとっています。ボイトレを始めるのに年齢は関係ありません。(2018年の時点で47歳です)
以下、この曲に関する歌唱解説(僕自身の以前との感覚の違いなど)を並べてみます。
声に「歪み(ガム)」を加えられるようになった
以前はもっとクリアーな声で歌っていたと思います。(というより、クリアーな声でしか歌えなかったのです)
今回の録音では、全編を通して細かい歪み(ガム)を加えることが出来るようになりました。
歪み(ガム)は「喉が緊張していないこと」「呼気が強すぎないこと」「声区のブレンド状態が良いこと」などが前提条件になります。
つまり、過緊張状態にあった以前の喉から、また呼気の強さに頼る発声から、僕の喉は「機能回復」しつつあるということです。
音域が広がった
Faithfullyは、いわゆる「高音の歌」に属すると思いますが、以前よりも高音に対する不安が少なくなりました。
歌える音域を広げることができたのは(特に高音に関しては)、フラジオレット=ホイッスルボイスの開発も大きく関与していると思います。
フラジオレットの存在を(知識として)知っているのと知らないのとでは、その後の声の在り様に雲泥の差が出てきます。
「喉を吊る筋肉」が強くなった
「喉を吊る筋肉=喉頭懸垂機構が強くなった」とは、もちろん僕が目で見て確かめたわけではありませんが、その存在すら知らなかった僕が、毎日のアンザッツトレーニングによって声を変えることが出来たことは事実です。
フースラーは「話すこともままならない声の人でも、立派に歌える人がいる」と書いています。このことは「話すこと=ほぼ喉の中だけを使っている」「歌うこと=喉を吊る筋肉も使っている」という違いによるものです。
それほどアンザッツトレーニングには画期的な効果があることを、僕自身が実感しています。
メンタルコンセプトが出来るようになった
メンタルコンセプトとは、簡単にいうと「出したい声を頭の中でイメージすることによって、喉をその状態で機能させる」という概念で、ボイストレーニングをする上で、常に念頭に置くべき大切なことです。
この曲ではそのメンタルコンセプトを最大限に働かせるようにしています。
そして、Journeyのボーカリスト・スティーブペリーの声は「軽く漂うようで、少ししゃがれた高音」というイメージです。
ある曲を歌う前には、そのオリジナルの歌手の声をよく聴いて、頭の中で出来るだけ具体的に思い描く訓練をすることはとても”実戦的な”ボイトレといえます。
喉の機能回復が進んだ
歪み(ガム)を加えられるようになったのも、音域が広がり高音が楽になったのも・・・究極的にいえば「Faithfullyを歌うことが出来るようになった」のは「喉の機能回復が進んだから」です。
こう書くと”元も子もない”ことになりますが、ボイストレーニングとは「喉を回復させる」一点で言い表せるものであり、ガムの練習、フラジオレットの練習など、全ては「喉全体の回復」のための”いち要素”に過ぎません。
ボイトレで、ある特定の音質や音域の練習だけをすることは推奨されません。あくまでも「トータルな回復」という認識で取り組むことが大切です。
フースラーは「声の回復のための訓練は”治療”以外の何物でもない」と書いています。
いかがでしたでしょうか?
これからも、”ボイトレ学習者”としての僕自身の声の変化の過程を【歌唱サンプル】というカテゴリーの中で載せていきたいと思います。
何しろ「喉の機能回復」には時間がかかるものなので、それほど頻繁には変化をお聴かせできないかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
以上、ご精読ありがとうございました。