歌が「走ってしまう」ことを防ぐには?

曲が求めている本来のテンポより速くなってしまう事を「走る」と表現します。

僕も、いつも「走らない」ように気を付けてはいますが、慣れない場所やシチュエーションでのライブの時は、録音を聴き返すと「ちょっと走っちゃったな!」と感じる事は未だに時々あります。

歌が「走って」しまって、良い事は一つも起こらないと言っても良いと思いますが、歌の経験が浅い人ほど「走ってしまう」ものです。

※歌に限らずどの楽器でも、名人はどっしりとしたテンポでたっぷりと演奏することができるものです。

今回は、いかにしてテンポが「走る」事を防ぐか?これは、純粋に「ボーカルテクニック」の分野の話ではありますが、少しボイストレーニング的観点からもこの「走る」事について考えてみたいと思います。

よろしくお付き合い下さい。


なぜ「走ってしまう」のか?

これには、以下の原因が考えられます。

正規のテンポと自分の持っているテンポ感がずれている。

例えば「♩=120」のテンポを「♩=130」に解釈してしまっている、つまり実際のテンポと自分の持っているテンポ感にギャップがある場合です。

音楽にはこういったギャップは付き物です。

むしろ、自分の持っている音程やテンポの感覚は「正しくない」と自覚するべきです。

テンポの感覚的なギャップは「学習」する事で埋まってきます。

単純に正規のテンポを知らないだけなので、反復して体に正しいテンポを教え込む事で解決します。

お客さんを前に緊張してテンポが速くなってしまう。

初心者が、ライブや発表会などで陥りやすい現象です。

緊張すると「ドキドキして」、正規のテンポよりかなり速く演奏してしまう人を多く見かけます。

こういう状況の時「リラックスして!」というアドバイスはほとんど役に立ちません。

解決法としては・・・

可能ならばリハーサルを録音してみて下さい。

おそらくリハーサルの段階でもテンポは速くなってしまっていると思うので、本番では意識してたっぷりと演奏するのが良いでしょう。

そして、本番では大げさにゆったりと曲をスタートさせてみても良いかもしれません。

音楽(特に西洋音楽)は「(テンポ・音量・感情が)増幅・成長」する事を「美」としています。

なので、後半に向かってテンポが少し上がる事は音楽的に間違いではありません。

最近の録音は一定のテンポに合わせて録音される事が多いですが、一昔前の録音を聴くと曲の頭と最後では少しテンポが上がっている事が普通です。

人間の体のメカニズムにとっても「演奏していくうちにアドレナリンが出てきて少しテンポや音量が上がる」事は極めて自然です。

逆に、普通は曲の頭のテンポより最後のテンポが遅い事はあり得ません。

「遅くは出来ないが、速くは出来る」、これを演奏の鉄則と認識しておくべきです。

全編、一定のテンポで演奏する事は時として音楽的な不自然さを生んでしまいます。「テンポに縛られる」事によって感情表現が抑圧される可能性は大いにあり得ます。

 

「走らない」事はボイトレ的にも有益です。

歌が走らないようにするもう一つの方法は「歌詞を丁寧に歌う事」です。

「歌詞を丁寧に歌う」とは「母音を丁寧に歌う」事です。

喉を(短期的にも長期的にも)適正な状態にしておく(つまり歌い易くしておく)事にとって、「母音を丁寧に歌う」事はとても重要です。

母音を丁寧にレガート(音と音を繋いで)に歌う事で、「歌が走らなくなり」「喉が適正な動きをする手助けをします」

また母音の響きを保つことで、ミックスボイスの状態を促進させます。

おまけに聴いている人にとっても、言葉がはっきりと伝わるのですから。

つまり、歌詞を丁寧に歌って悪い事は一つも起こりません。

音楽的に正しく美しいと感じる音は、必ず正しいテクニックによってしか生まれない」といえます。これは「音楽の法則」だと言ってしまっても良い程、絶対的な原則です。この事を頭に置いておくと、日々のボイストレーニングの大きな手助けとなります。

 

まとめ

テンポが走らないようにするためには、自分の持っているテンポ感が正しくない事を前提に、正規のテンポとのギャップを埋めていかねばなりません。

緊張感のある本番では、ゆったりとしたテンポでスタートして「後で少し速くなる」事を前提としておいた方が良いと思います。

曲が進むに連れて少しテンポアップすることは音楽的に間違いではありません。

ボイストレーニングの見地からは、歌詞を丁寧に歌う事を是非実践してください。

「走らない」「適正な喉の状態が保たれる」「ミックスボイスを加速させる」・・・良い事だらけです!

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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