危ういミックスボイスは歌には使えない、簡単に作ると簡単に壊れる

僕は、キャバンクラブ大阪で歌わせてもらうようになってからボイストレーニングを始めました。

というよりも、ボイトレどころか、自分の声というものに対して何ら手を加えようとは考えたことがなかったです。

どこかで「声や歌は、元々の才能が全て!人から教わって上手くなるもんじゃない!」という先入観があったのでしょう。

世間一般的には、このような「歌は才能」的な先入観をたくさんの人が抱えたままです。ギターをたどたどしく弾く人を見ると「ああ、習い始めたばかりの人なんやな」と思いますが、調子外れに歌う人に出会ったら「歌の才能ないんだな」と考える人も多いと思います。それだけに、声や歌に対しては誰に指摘されたわけでもなく勝手に「諦めて」しまっている人が多いのではないでしょうか?これはとても勿体ない事だと思います。

恥ずかしながら、僕は子供の頃から「歌の上手い奴」という、ある程度の自負を持っていました。高校生の頃から始めたバンドでは、僕はいつも一番難しいパートを歌っていました。また周りの人達と比べると歌える音域も広く、それなりに人から羨ましがられる存在だったと思います。そして、お店で歌う仕事を始めた時にも、実は「自信満々」だったのですが・・・現実は厳しかったのです。それまでの「月に1~2度歌う」ペースから「週に2~3度歌う」事になり、毎度毎度、絶好調の喉で臨める環境ではなくなりました。この時に喉を「連続運転」させることの難しさを思い知りました。

けれども、週に何度もステージ立って歌うとなると「流石にこのままじゃどうしようもないな」という思いが芽生えてきました。

その後は「一週間で高い声が出る」云々というキャッチコピーに胸躍らされたり、ネットを徘徊して書かれている情報を鵜呑みにしたり・・・上手くいかずに悩む事の連続でした。

その頃、僕の頭の中は「ミックスボイス」という言葉でほぼ埋め尽くされていたように思います。

とにかく地声と裏声の「境目を無くす・繋げる・スムーズに行き来する」・・・それ以外の事には目が行かない状況であり、また何を調べても、何を探しても「ミックスボイス」にぶち当たる環境だったと思います。

とにもかくにも「ミックスボイス」に取りつかれていた僕は、いつもとても危うい状態で歌わざるを得ませんでした。

そんな思い出話を交えながら、「ミックスボイス」に見切りをつけ正しいボイストレーニングに出会う事が誰にとっても不可欠である、という内容を書いていきたいと思います。

お付き合い下さい。


喉を温存する日々

当時の僕は喉に対して過剰に神経質になり、全て「無理をしない・温存する」方向で考えざるを得ませんでした。

ライブの日の前日は出来るだけ喉に負担をかけない・・・当日も本番まで喉のスタミナを温存する・・・

そんな状況で何とか乗り切ろうとしていました。

フースラーがいうところの「人間は皆、本来歌える生き物である」という考えからは、全く正反対の行動の毎日でした。当時の僕は「歌える生き物」にしてはあまりにも危うい喉しか持ち合わせていませんでした。どこかで聞きかじってきたインスタントな方法で、恐る恐る歌う・・・こんなことを長く続けていても一向に声は自由にならない、という誰でも分かる事実さえ分からなくなっていたのだと思います。

本番中、意識する事は「常にミックスボイスで」

本番でも、とにかく「繋ぐ・ミックスする」事ばかり考えていた時期があります。

「声量を上げてはいけない」「母音を曖昧にして何とかやり過ごす」・・・こういった「危ういミックスボイスを保持する方法」は知識としても経験からも分かっていました。

となると、当然「置きにいった」ような歌になり、「感情を乗せる」よりも「声が破綻しない」ような方向性に終始するので、お客さんにはさぞかし面白みのない頼りない歌として届いていたと思います。

今では笑い話になりますが、僕はMCの声も「ミックスボイス」っぽく出していた時期もあります!つまり、曲紹介の時もミックスボイスの感覚を失わないように、努めて「地声と裏声が混ざったようなトーン」の声を心掛けていたのです。今に思うと、まったく馬鹿げた事ですが、当時はそれだけ「ミックスを解く」事が怖かったのです。

 

一旦破綻すると、もう戻れない

さて、そんな風に何とか保っていた危ういミックスボイスの状態も、一度破綻すると、もうその日は元に戻す事が出来ませんでした。

なので一旦「今日はもうミックス出来ないな」という状態になると、次のステージから「声量を上げて、強い息で無理矢理高音を押し出す」歌い方に切り替えていた日もあります。

インスタントに作ったミックスボイスは、本当にいとも簡単に破綻します。僕はずっと「地声が強すぎる」傾向があったので、意識して地声を抑えられている間は何とかミックスできていても、そのバランスが崩れると途端に声の破綻となって現れていたのだと思います。バランスが崩れるにしても「裏声が強くなる」方向での崩れ方なら大きな破綻は起きないはずですが、当時はそんな事は勉強していませんでした。

僕は、この記事で書いた「ミックスボイスに躍起になっていた時代」の次には「腹式呼吸に躍起になる時代」へと足を踏み入れていきます!今にも壊れてしまいそうな危ういミックスボイスで慎重に慎重に歌っていた事の反動で、「お腹に力を入れて、出来るだけ強く息を吐いて、大声で歌う」という、これまた危険な方向へとシフトしていってしまったのです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

僕は自分自身のライブ経験から、危うい弱いミックスボイスは「実際の歌にはほとんど無力であると、確信をもってお伝えできます。

たとえ発声練習では充実した状態でミックスボイスが出せていたとしても、もしその声が「分離・強化・融合」というボイトレの3つの工程を経ていなければ歌には使えません。

それだけ、「練習と歌」には、とてつもなく大きな難易度的な乖離があります。

簡単に作られたものは、簡単に破綻するものです。

ぜひ、少し遠回りに感じる方法であっても「正しいボイトレ」を進めて頂きたく思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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