歌の細部を丁寧に仕上げる。高い音や聴かせどころ意外に魂は宿り、ディテールを無視した歌は凸凹で不安定。

このあいだテレビを見ていたら久米宏さんが出ていました。朝の番組でしたが久米さんの話は終始とても興味深く、さすがに一時代を築いた人の言葉には重みがある!と頷きっぱなしだったのです。

久米さん、有名なニュース番組を担当していたころのキーワードは「魂はディテールに宿る」であったと語られていました。電波に乗る自分の発言の内容のみならず、自分が視聴者からどのように見られているか?その見せ方まで徹底的なセルフプロデュースを貫かれていたようです。象徴的なエピソードとして、その日の洋服に合わせてボールペンの色を変えていたとか・・・とにかくそのプロとしての姿勢は、分野を越えて誰もが志す高みである!、と僕は身震いさえ覚えたほどです。

久米さんは、共演者の方に「24時間番組のことだけを考えていてほしい」と望まれていたそうです。24時間、四六時中そのことばかりを考える!・・・これはもうその道での成功が確約されたも同然ですね!僕たちボイトレ学習者もそうあらねば!まあ、腹も空くし眠くもなるので中々難しいこととは思いますが、”四六時中そのことばかりを考える”ことができれば、ほとんどその仕事を成し遂げる切符を手に入れたようなものですね。

「魂はディテールに宿る(God is in the details.)」・・・調べてみるとどうやら建築分野で使われていた言葉のようです。細部に心を行き届かせ、隅々まで丁寧に仕上げる事で全体の美しさが生まれてくる、という意味なのでしょう。

ところで「歌を美しく聴かせる」・・・これも正に細部に心を行き届かせることによってしか成しえることができません!

今日、昨今の歌の多くは”より高い音程で歌うこと”が表面的な目標になってしまっている感もあります。事実、僕がレッスンさせていただいている方々の多くは、”高い声が出ない”という悩みを抱えていらっしゃいます。

サビの高音を美しく響かせて力強く歌いたい!・・・では、練習に練習を重ねこのことが叶ったとしましょう、けれどその前後の音やパッセージがデコボコしていたり苦し気であったりしては、歌全体の美しさなんて現れて来ようもありません。

かく言う僕も、”細部に心を行き届かせる”ことをせず、派手で煌びやかな高音への誘惑のままに歌っていた時期があります。けれども、自分のライブを絶えず録音して聴き直して”細部に心を行き届かせる”習慣がついてからは、(まことに手前味噌ながら)自分の歌を時折「まあまあだ」と感じられるようにまで、少し成長することができたように思います。

しかしこれは何も建築や歌に限ったことではありませんね。少し話は逸れますが、例えば洋食を食べに入った時、サラダの水切りがしっかりと出来ていない店なら、いくらメインのステーキが豪華でもあまり良い印象は残りませんね。野菜に残った水分はせっかくのドレッシングの美味しさを半減させるでしょうし、お肉への悪影響は言うまでもありません。

話を歌の方へ戻します。”細部に心を行き届かせる”とは、すなわち”丁寧に歌う”、”走らずに歌う”といった、オーソドックスな「良い歌唱」の条件にもピッタリとマッチするものです。

「あの人の歌は素晴らしいね」「そりゃ、細かい音にまで魂が宿っているもの!」なんて言われてみたいものです。そんな境地を目指して、ボイトレ道のどんどん先へと歩を進めたいですね。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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