ハイトーン歌手はホームランバッターか? ~高音で歌うことの誘惑~

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本屋さんのボイトレ関連書籍の棚を見ると「高い声で歌うための・・・」「憧れのハイトーンボイス・・・」のようなタイトルの本がたくさん見つかります。

巷で溢れる音楽でも、高音で歌われている曲が本当に多いです。

さてハイトーンで歌うことは、それ自体が音楽の良し悪しを決めるものではないはずですが、多くの人が憧れてその魅力に取り憑かれている事も事実ですね。

そしてそんな「ハイトーン信仰」はカストラート(去勢された男性歌手)の時代にさかのぼれば、歌の歴史の一側面そのものと言えます。

男子を去勢して少年の高音を失わないようにして、カストラートと呼ばれる「高音の歌手」を無理矢理作り出していました。もちろん倫理的に大問題な事は間違いありませんが、それだけ人間の「ハイトーン・高音」への憧れには抗い難かったということなのでしょう。

「売れる曲」にするために、もっと高くもっと高く!と半音でもキーを上げて録音する事が、実際に行なわれているようです。確かに高音で歌われた歌にはインパクトがあり、カラオケで「難しい」とされる歌のキーは、ほとんどが高いです。(ライブでキーが下げられている場合も多いですが・・・)

今回は「高音の抗い難い誘惑」について、僕自身の経験も交えて書いていきたいと思います。

お付き合い下さい。


ハイトーンは諸刃の剣

高い声で歌う事は喉を壊したりフォームを崩したりしやすいのですが、一度その快感を味わってしまうと抜け出せなくなります。

ちょうど野球選手がホームランを打つと、その快感が忘れられず大振りになって調子を崩してしまうようなものです。

高音で歌う事は、歌のテクニックの中でも最も難しいものです。そして、それが可能か否かは「喉の機能状態」に100%依存します。つまり「高い声=才能や生まれつき」ではありません。しかし多くの人は「自分は高い声で歌う事は出来ないのだ」と諦めてしまっています。

僕も「よくあんなに高い声が出ますね!」という誉められ方をする時があります。「高音を出す事」は、音楽とは直接関係ない事は分かっていても、正直にいうとやっぱり嬉しいものです!(高音で歌える事は、喉の自由度の目安にはなると思います。)

実際には、調子が悪くなった目安として、最初に「地声と裏声の境目=喚声点」付近が出しにくくなります。つまり「高音と低音はそれぞれちゃんと出せるけれど、上手く繋がらない」という現象です。

 

練習の秘密

ホームランバッターはスタンドにボールを放り込む練習ばかりをしてるわけではありません。

そんな練習ばかりではホームラン数は伸びません。

下半身を鍛えたり単打を打つ練習をしたりスローイングをしたり、一見ホームランとは関係ない練習をたくさんしているでしょう。

歌も同じだと思います。

高い声の練習ばかりしていてはいつまでも音域は広がらないでしょう。

むしろ、え?こんな声で練習するの?と思うような、実際の歌には使えないような声での練習にこそ音域拡大、高い声で歌う事のヒントがあります。

声は固着を起こしやすいので「高い声ばかり練習する事」は危険です。高音は出るようになったけれど、今まで歌えていた中音域を失った!とあっては元も子もありません。「色々なトーンの、色々な音域の声を出す!」、このこともボイストレーニングを成功させるコツの一つです。

正しく声のトレーニングをすれば喉の耐久性は高まり、良いバランスで高い声を出せるようになります。

さらには多少のパワープレーや大振りにも耐えられるようになります。

もし高い声で歌いたい!と願うのであれば、もうこの際清々しく「ハイトーン信仰者」となりましょう!そして正しく声を育てていきましょう!

70年代、イギリスやアメリカのロック(所謂ハードロック)界では、「声が高い事が正義であった」時代が確かにあります。あの時代の、例えば「ディープパープル」「レッドツェッペリン」等のバンドのシンガーは「高く歌う事」を最大のアイデンティティとしていました。しかし彼らの多くは、かなり早い時期に自身のハイトーンを失っています。おそらく、あの時代のロック界には「声を生理的・科学的な根拠でもって」考えるような土壌がなく、もちろんボイストレーニングも一般的ではなかったと思います。それに比べると、今のハイトーン歌手は随分と自分の声を守る事が出来るようになったのではないでしょうか?

僕は若い頃からずっと「高い声で歌える奴」だったと思います。そして自分でも自信はありました。ところがプロのシンガーとして歌うようになってから、僕より高い声で歌える人と出会いました。この時は大きな敗北感を覚えました。音楽性が優劣が「音域」によって決まるものでは決してないのですが・・・多くのハイトーン歌手の人達も同じような感情を持っているのではないでしょうか?

僕は歌の後半を「低くフェイク」する事が嫌いです。そして(ハモる場合は)誰よりも高いパートを歌いたいです。もうこれは立派な「ハイトーン信仰者」ですね!(笑)

 

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以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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