高い声で歌う事=ボイトレ学習者共通の憧れ。その方法を知る事はボイストレーナー必須・最重要の専門性。

僕の古い知人に洋菓子職人の人がいました。彼は京都でも有名なケーキ屋さんの職人さんで、そのお店の名物はモンブランケーキでした。栗が豊かに香って・・・生クリームも品が良くて・・・確かにお店の名物の名に恥じない逸品!とても美味しかったことをよく覚えています。

聞くと、そのお店に訪れる人の多くはやはりこのモンブランがお目当てのようで、ほとんどの人がモンブランを購入していくとのことです。

ある時、彼は少し冗談交じりにこんなことを言っていました。

「誰もかれもがモンブラン、モンブラン!うちには他のケーキもあるんだぞ!」

なるほど、嬉しさ半分、悔しさ半分といったところでしょうか。彼には他のケーキも美味しく作っているという自負があるのでしょう、他のケーキも味わってみてほしい!けれど現実的にはお客さんのお目当はほとんどモンブランばっかり!「そりゃモンブランには確かに自信はあるけどさあ、ちょっと人気が偏り過ぎではないかい?」といったところでしょう。

彼のお店に限らず、名物や目玉商品を抱えているところは、案外皆そんな思いなのかもしれませんね。ある種の嬉しい悲鳴、贅沢なジレンマとでもいいましょうか・・・人気があればあったで、その裏には必ずちょっとしたジレンマが生まれてくるものなのでしょうね。

さて、ではボイストレーニングの世界、つまりボイストレーナーにとっての上記モンブラン=名物・目玉商品とは何か!

それは、やっぱり何と言っても「高い声、高音、ハイトーンで歌えるようになる」ということになると思います。

昨今のボイトレ事情から考えると、僕たちボイストレーナーが高音発声に対して苦手意識を持っていては、商売を成り立たせるのが中々難しいとさえいえます。

僕が教わった先生方の話・・・何冊も読んだボイトレ本・・・巷で聴く音楽から・・・そして何より僕自身がレッスンを行なっての体感、また僕自身の歌の嗜好から考えても「高い声で歌うこと」は、たとえそれが音楽的に価値があろうがなかろうが、多くの生徒さんの最大の欲求であることは間違いがないように思います。

ボイストレーナー家業を開業してからというもの、僕が最も数多く受け取る悩みは「高い声が出ない」ことです。またシンガーとしての僕の行く手を阻もうとする最大の壁は「高い声が出るだろうか?という不安」です。事実、ライブ前に僕が長い時間をかけて行なうウォーミングアップは一体何のために行なうのか?と問われたら、それはとてもシンプルにいうと「高い声が出ない」という状態に陥らないためです!と答えることも出来るでしょう。(ライブで歌った時、お客さんに悟られてしまうシンガーの不備の代表格は「声が出てない」「高い音が苦しそう」などです)

話しは戻りますが、僕が誰かから「高い声が出ない悩み」の相談を受けた時、上記の知人ではありませんが「誰もかれもが高い声高い声!歌の魅力はもっと他のところにだってあるんだぜ」と考えなくもないですが、これはむしろ意気に感じるべきものなのだと思っています。質問してくれた人は”高い声”に関する悩みを自分では解決することができず、僕に専門的な解決を求めているのですから。そして昨今のボイトレの世界では「高い声が出ない」悩みの解決方法を知っていることこそが、生徒さんの立場からは一番有益な”専門性”なのだと日々感じています

考えてみれば当然ですね!トレーナーである僕が「もっと高い音を!さらに高い音程で!」という強い欲求を未だに捨てきれていないのですから。ちょっと大げさな言い方かもしれませんが「高い声で歌うこと」は、全国数百万人の(この数字は適当です!)ボイトレ学習者全員が持っている共通の憧れなのですね。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

PAGE TOP