【ボイトレ格言】ボイトレが好き、声を感じる、歌唱テクニックを捨てる

先日、友人と話をしていた時のことです。

彼に「ブログを書いているのだけれど、書くネタに困ることがよくあるよ」と告白すると、「君はボイストレーナーなんだから、年がら年中、声の事を考えてるんだろう?だったら日記を書いたとしても自動的に”ボイトレの記事”になるはずじゃあないか」とのこと。

まあ、確かにそうですね。毎日ボイトレしたりレッスンしたりライブで歌ったりしているわけなので、何も気付きがないことの方が不自然なんですが・・・実際のところ僕は、彼の言うように”年がら年中、声の事を考えている”わけではないのかもしれませんね・・・平凡ですねえ、僕は・・・

けれど、世の中には本当に「年がら年中」そのことばっかり考えている人達もいるものです。

今回のボイトレ格言は、そんな”年がら年中”一つのことばかり考えていそうな人の言葉を紹介したいと思います。


ピアノを弾いてます

ヴィルヘルム・バックハウス

これだけでは何のことか分かりませんね・・・

ドイツ出身のピアニスト・バックハウスが、記者からの「余暇の時間は何をして過ごしているのですか?」という」質問に対する答えがこの言葉です。

バックハウスは亡くなる直前までコンサート活動を続けた人です。つまり彼の人生は”ピアノ漬け”だったはずなのに、なんと余暇の時間にまでピアノを弾いて過ごすというのです!

誰かが僕に「あなたはボイトレが好きですか?歌が好きですか?」と質問したら、「好きです!」と答える自信はありますが・・・とてもバックハウスの域には及びません。ここまでいくともう「ピアノが好き」なんていう甘っちょろいものではないのでしょう。きっと、ピアノを弾くために生まれてきたような人なのでしょうね!

バックハウスは最後の演奏会の途中で心臓発作に見舞われましたが、曲目を変更してその演奏会を何とかやり終えました。そして何日か後に亡くなるわけですが・・・とんでもない精神力です!

 

2歳の子供の頃から耳に問題があったんだ。神経が死んでいると言われた。今は20パーセントくらい耳が聞こえている。

ブライアン・ウィルソン

ビーチボーイズのリーダーで作曲家のブライアン・ウィルソンは片方の耳しか聴こえなかったそうです。そんなハンデの中、ポップ史上類をみない天才的なレコードを作った人です。

ボブ・ディランをして「ブライアン・ウィルソンの耳は、スミソニアン博物館に寄与するべきだ」と言わしめたブライアン、他の人とは違う何か特別な感覚で音を捉えていた人なのかもしれません。「片耳の聴力がない」ことがブライアンの”音を捉える(耳ではない)器官”を磨いていって、あの複雑な音楽を聴き分けられる感覚を育んだのかもしれません。

ボイストレーニングにおいては、耳からの感覚だけに頼らずに「声を感覚として捉える」ことがとても大切です。またそれは訓練によってどんどん磨かれていきます。そんな感覚の目覚めも歌の上達のためには必要不可欠なことです。

 

テクニックを捨て去るインテリジェンスが必要だ

ロバート・フリップ

今でも活動を続ける息の長いロックバンド「キングクリムゾン」のリーダーでギタリストのロバート・フリップの言葉です。

フリップはロックに知的な要素を持ち込み「踊るための音楽」からの脱却を目指した人ですが、一方では偏屈で皮肉屋の”奇人”としても知られています。

そんなフリップは「”知的に”テクニックを捨て去れ」と説いています。一旦身に付けたテクニックを意志の力で剥いでいく、という意味にとれます。

歌う上では(特に初心者のうちは)、全ては”テクニック”によって成り立っています。ビブラート、感情表現、アゴーギグ(テンポの揺れ)・・・そして正しい音程をとることさえ全て”テクニック”です。けれどその先の、本当に人が感動するような歌のためには”テクニックを捨て去る”ことが必要であり、その剥がれた内側からその歌手の生々しい内面や人間性が現れてくるのでしょう。

ロバート・フリップは「テクニックなんていらないよ。ただ感情のままに弾けばいいんだ」と言っているわけでは決してありません。むしろテクニックを身に付けることの重要性も説いていると思います。(事実、フリップの演奏はとても”テクニカル”なものです)

フリップは「早く弾けるのは良いことだ、けれどそれは音楽とは何の関係もない」とも語っています。いつもただ”高い音域で”歌おうとする僕には耳の痛い言葉です・・・とても”早く弾ける”フリップが言うからこそ、とても説得力のある言葉に聞こえます。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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