「家では上手く歌えるのに、カラオケになると音程が取り辛いのはなぜか?」・・・こんな質問を受けました。
確かに、誰でも練習よりは本番の方が何割かマイナスの出来栄えになるのは仕方のない事ですが、マイクを持つと途端に歌い辛い・音程がとれないとなると、色々な原因が絡み合っていそうです。
この記事は、そんな悩みの解決策について書いてみたいと思います。
お付き合いください。
家とカラオケボックスの環境の違い
家での練習とカラオケボックスで歌う事では、どんなところが違うのか?について考えてみます。
隣の部屋の音漏れ
カラオケボックスは、隣の部屋の音がかなり漏れて聴こえてきます。
このことが、音程が取り辛い原因になっている事は充分に考えられます。
隣の部屋の歌声だけでなく、伴奏の音も大きく漏れてくる場合が多く、特に低音が響いてくると相当歌い辛いとは思います。
お店によっては隣の人の発声の癖まで分かってしまう程、音が漏れてくる事もあります。店舗によって音漏れの度合いも差があるようなので、出来るだけ防音のしっかりしたお店を選びたいものです。
エコーがかかり過ぎている
カラオケボックスでは、深いエコーがかかっている状態がデフォルトとなっています。
深すぎるエコーは、音を「あやふや」にしてしまいます。
それでなくても部屋全体が響いてワンワン鳴っている状態なので、むしろエコーは浅めの方が音程は取りやすいと思います。
深いエコーが歌を上手く聴こえさせる・音程のズレを誤魔化してくれる、という考えは持たない方が良いでしょう。
歌と伴奏の音量バランスが悪い
歌ばかり大きすぎる、伴奏ばかり大きい、どちらも歌い辛くなると思います。
特に「歌ばかり大きい」は、カラオケの現場では起こりがちです。
こうなると伴奏を良く聴いて歌う事ができなくなるので、音程は外れがちになります。
歌のボリュームが伴奏に比べて大きすぎると「自分の声に埋もれて歌う」状態になり、「伴奏と歌とを同時に聴いて、音の全体像を捉える」という基本的な事が出来なくなります。こういう場合、歌の音程は大体が「フラット気味」になります。
伴奏のボリュームばかりが大きくなると、自分の声が聴こえ辛いことから、”反射的・自動的に”(特に初心者は)声を張り上げてしまいます。喉の中には「強すぎる息が声帯を無理やり動かそうと」していたり、「声帯の振動が不自然」だったり・・・とても”不健康な”状態が生まれてしまっています。こんな時の声は(力を込めているにも関わらず)声量が今一つであったり、音質がいびつで汚かったりと・・・聴いていて心地の良いものではありません。(不健康な喉が作り出す声は、間違いなく「不健康」な印象を聴き手に与えます)
振動と耳からのインプットの違い
そして、家での練習とカラオケボックスで歌う事の一番大きな違いは「振動も含めて感じるか、耳で聴くか」という事です。
家で歌っている時、つまりマイクを使わない場合は声を、「振動も含めて」感じ、その情報をもとに音程などを調整する事になります。
一方、カラオケなどでマイクを使って歌う時は、スピーカーから聴こえてくる自分の声を「耳からの情報として」インプットしなければなりません。
この違いが「マイクを使う・使わない」で、歌い易さに差が出る一番大きな原因です。
もちろん、毎日の生活では自分の声を振動も含めて感じている僕たちにとっては、マイクを使って(スピーカーから聴こえてくる声を捉えて)歌う事の方が何倍も難しいのです。
家での練習では「伴奏=耳からの情報」と「自分の声=振動も含む」とを組み合わせて歌っていると考えられます。一方、カラオケでは「伴奏=耳からの情報」と「自分の声=耳からの情報」の組み合わせで歌う事になります。この二つは、似て非なるものだと考えた方が良いでしょう。
普段から振動も含めて感じている自分の声と、録音した自分の声を比べた時、誰でも最初はとても違和感をおぼえます。つまり、この二つは感じ方・聴こえ方に大きな違いがあるという事なのです。
解決策
まずは、音漏れの少ない店舗を選んだり、エコーを浅くしたり、伴奏と歌の音量バランスを整えたり・・・簡単に解決出来そうな事はとりあえずやってみて下さい。
そして上述のように歌い辛さの一番の原因である「振動も含んだ声」と「耳からのインプットだけの声」の問題を解決するために・・・
伴奏・歌ともに音量を小さめにする
伴奏と歌、両方の音量をあまり大きくしすぎないようにして下さい。
この目的は「自分の声を振動からも感じる」余地を残しておくためです。
大きすぎる音量の中では「全ての音を耳からのインプットだけで聴いて」歌う事になります。
家で歌っている時と出来るだけ近い環境で歌う事を考えた方が良いと思います。
耳からのインプットに慣れる
これはシンプルに「経験」の問題です。
「マイクで拾われた自分の声がスピーカーを介して、自分の耳に戻ってくる」という、回りくどいプロセスに慣れる事です。
歌いにくさの原因は「普段の声とマイクを通した声とのギャップ」にあるので、それぞれ録音して聴き比べてみて、ギャップを埋めていく作業をすると良いと思います。
カラオケで録音する、というと少々大げさに感じるかもしれませんが、「監督なき練習」を続けていても一向にギャップは埋まりません。録音機を「監督役」に任命しましょう!
まとめ
かく言う僕自身も、かつては「マイクを使うと音痴になる」時代がありました。
それほどマイクの有無は、上手く歌う事に大きく影響します。
また、家で練習すればするほど(振動を含めて自分の声を捉える経験が多ければ多いほど)、マイクを使って歌うことに戸惑うかもしれません。
しかし、このギャップは時間をかけて取り組めば必ず埋まります。
録音して聴き比べる必要はあるかもしれませんが、ぜひ取り組んでもらいたいと思います。
以上、ご精読ありがとうございました。