声の事を考えずに・考えながら。目標の一曲を2通りの方法で歌ってみる

ボイトレのレッスンを受けるきっかけは、人によって様々です。

「歌が上手くなりたいから」という漠然とした目的の人が一番多いとは思いますが、人によっては「〇〇という曲を歌えるようになりたい!」という、”憧れの一曲”をはっきりとボイトレの目標にしてレッスンに来られる人もいます。

確かに「憧れの一曲」は誰にでもありますね!「あの曲が歌えたらどんなに素晴らしいだろうなあ」と思う一曲が!

「トンネルは両側から掘りなさい」とは、僕が昔教わっていたギターの先生の言葉です。

ストイックで、時には”辛い”と感じる基礎練習ももちろん必要なのですが、ギターを始めるきっかけになった「憧れ」の気持ちを決して忘れてはいけない。「基礎練習」と「憧れ」の両側から掘っていった先にしか「本当のゴール」は存在しないのだ、という教えです。

これをボイトレに例えると、「アンザッツや母音の純化を毎日地道にやること」と同時に「絶対に歌えるようになりたい歌を時々歌ってみる」ことも忘れてはいけない、という事です。そもそもストイックな練習ばかりでは早々にボイトレに飽きてしまうでしょう。

さて、そんな「憧れの一曲」を日々のボイトレの合間に歌ってみるときには、ぜひ二通りの歌い方を試してみてほしいと思います。

今回はそんな内容で書き進めてみたいと思います。

お付き合いください。


「時々は歌ってみる」・・・ボイトレの進捗を確認する機会です

ボイトレをやっていると時々陥りそうになること、それは「ボイトレそのものが目的になる」ことではないでしょう?

つまり熱心にやればやるほど「各アンザッツの音色が良くなった」「裏声と地声の分離が進んだ」など、練習メニューの完成度そのものに満足してしまい、本来の「歌を自由に歌う」「話声を変える」といった目標を見失ってしまうことです。

「アンザッツの精度が上がること」「声区の分離が進むこと」は、それぞれもちろん大切なことで、訓練課程においては”喜ぶべきこと”なのですが、それ自体は「目標達成」ではありません。

(ここでは特に”歌”を目的とする場合について書きますが)「自由に歌える」ようになってこそのボイトレであることは言うまでもなく、そのための日々の地道な練習の積み重ねなのです。

やはり、時々は「憧れの一曲」を歌ってみて(反対側からもトンネルを掘って)ボイトレの成果を確認しながら、その後の練習を進めていきたいものです。

さて、実際に歌う時には、下記の「二通りの歌い方」を、ぜひ試してみてください。

 

1.「何も考えずに」歌ってみる

まず初めに「何も考えずに、何もコントロールしようとしないで」歌ってみてください。

つまり「歌い出しの声量をセーブして」とか「高音で声量が上がらないように、また裏声主体に移行するように」とか「一定の音域より上の音が”無理にベルト気味(張り上げ気味)”にならないように」とか・・・普通の歌の指導では当たり前に言われるような一切の喉のコントロールをせずに歌ってみてください。

「何も考えずに歌う」ことによって、あなたの「喉の機能」の現状が現れてくるはずです。

声区融合が甘ければ「高音が裏声主体にならず、張り上げ気味」になるかもしれません。息を消耗して苦しくなるようなら「喉が適度な息の量を調整できない=喉の機能が未熟である」からでしょう。

つまり全ては「喉の機能」が、まだ充分には回復していないことの現われです。そして「ボイトレ=喉を機能回復させること」なので、今の段階で”何も考えずに歌ったなら”、上のようなことが起こるのは、いわば当然のことでしょう。

何も考えずに歌ったら「憧れの一曲」の前に”返り討ち”にあうかもしれませんが、また数か月後に「何も考えずに」歌ってみてください。きっと少し前回と違う感触があるはずです。

 

2.「色々考えて」歌ってみる

そして、次には「色々考えて、つまり喉をコントロールして」歌ってみてください。

「歌い出しは声量をセーブして、少し裏声成分を混ぜて」「高音では意図的に地声成分を減らして、声量は抑えめに」「後半の高音が辛ければファルセットに逃げて」など・・・あなたが使えるあらゆるテクニックを使って歌いきって下さい。(当然、完ぺきに歌えた、というよりは”何とか歌えた”という印象になるとは思いますが)

「色々考えて歌う」ことは、ボイストレーニングの本来の目的である「自由に歌う」ことからはかけ離れていますが、「喉をコントロールできること」は、そのまま「高い機敏性」の現われともいえます。(少し矛盾するようですが、あまりに低い機能の喉では上に書いたような歌唱的なコントロールは難しいでしょう)

もし、「喉をコントロールして」つまり”八方手を尽くして”、一曲を歌いきることができたなら(ボイトレの過程=喉の機能回復途中としては)あなたは自分のボイトレの成果に自信を持って良いと思います。

「憧れの一曲」を(喉を細かくコントロールしながらとはいえ)”何とか歌えた”ことは凄いことです!

「何も考えずに歌う」にしても「色々考えて歌う」にしても、必ず最後まで歌うようにしてください。途中で声が裏返ったりしてもとにかく最後まで歌いきることが大切です。数か月後に再挑戦する時ももちろん最後まで歌って、前回との感覚の違いを実感してください。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ボイトレの究極の目標はやはり「何も考えずに歌う」つまり、何のコントロールもしないように歌っても喉がちゃんと全てが上手くいくように働いてくれるようにすることです。

あなたの周りにいる歌の上手い人を想像してみてください。その人は「何のコントロールもせず」に、”何となく”マイクを持って、”何となく”最後まで立派に歌いきってしまうと思います。

ただ、ボイトレの過程としては「色々考えて=コントロールしながら」歌うことも試してみるべきです。コントロール出来ることは高い機敏性の現われなのですから。

 

以上、ご精読ありがとうございます。

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