ロングトーンができない~喉の機能が未熟なためです~呼吸を調整してはいけません

この記事は2018年3月26日に公開したものを2018年6月19日に追記・再編集したものです。

フレーズの最後の部分、歌の一番最後の部分を同じ音程で長く伸ばす表現があります。

一般的に「ロングトーン」と呼ばれるテクニックです。

生徒さんからこの「ロングトーン」が不安定になる、声が震える、息が続かないのはどうしたら改善できるのか?

また効果的なロングトーンの練習方法は?という質問を受けました。

今回はその質疑応答の内容となります。

よろしくお付き合いください。


なぜロングトーンで歌わなければならないのか?

 これには二つの答えがあると思います。

曲がその音を必要としているから

作曲者が管楽器に音を長く伸ばす指示をするのと同じように、声という楽器に対して「ロングトーンが最適である」と判断して、そのように指示された場合です。

純粋に楽曲の完成度を高めるために「声を長く伸ばす事」が必要だという判断です。

歌手のテクニックを披露したいから

カリスマ性の高いスター歌手の場合、その歌手の歌唱力を聴衆にアピールする必要があります。

作曲者はその歌手の声が最も生きるキーで曲を書き、伴奏パートもあくまで歌声の魅力を引き立てる目的で書かれます。

そして、曲の一番盛り上がる箇所で、その歌手の一番歌い易い、良く響く声での「ロングトーン」が使われます。

この場合は「声を長く伸ばす事」は、楽曲を魅力的にする以上に歌唱力披露の意味合いが強いと思います。

上記のように、世間一般にロングトーンとはとても難しいテクニックだと認知されていて、ボイトレしている人の憧れでもある事は、ネットを検索するとたくさんの練習法が紹介されていることからも分かります。そして、実際に安定したロングトーンはボイトレを始めたばかりの人にはとても難しいという事もまた事実です。

僕は自作曲の中に、ロングトーンのように「ボーカルならではの歌唱テクニック」を散りばめる事が苦手です。ロングトーンやビブラートなどの歌唱テクニックは、ともすれば「くどく」なりがちです。「何もあんなに語尾を伸ばさなくてもいいのに・・・」と、聴き手に感じさせない絶妙なバランスで、こういったテクニックを散りばめていく事は、慎重なバランス感覚を必要とします。

 

ロングトーンに練習方法はあるのか?練習すれば出来るようになるのか?

 「ロングトーンで声がフラフラする・息が続かない」のは吸い込む息の量が足りないんだ!だから吸い込む息の量を増やそう!と考えてしまうと思います。

また、たくさんの息を吸い込んでもそれを一度に大量に吐き出してしまうと音を最後まで伸ばす事が出来ないので、出す息の量を抑えてロングトーンの箇所を歌おう、と考えます。

しかしながら、こんなことを歌の中で緻密な計算の上で行うことは、まず不可能でしょう。

「いや、ロングトーンの練習では息の量を調整して上手く伸ばせています!」という意見もありましょうが、それが可能なのは「数十秒の部分的な練習」だからです。

歌全体の中で、そのテクニックがはたして使えるでしょうか?

一つの曲をフルコーラスで歌う事と一部のみ歌う事では、難易度に天と地ほどの差があります。ボイトレの目的は、もちろん「一曲完全に歌える喉」を育てる事です。一音だけ・ワンフレーズだけ・サビだけのデモンストレーションは、実戦的には何の意味もないといえるでしょう。

それでなくとも、歌は困難の連続です。

音程の跳躍・絶えず飛び越えなければいけないブレイク(地声と裏声の裂け目)・難しい母音の引き渡し等々が急流のように僕たちの肉体と精神に襲い掛かってきます。

そんな中で「練習した通りに大きく息を吸って、ロングトーンの間中適切な量の息を吐き出し続ける」なんてアクロバティックな操作を喉に強いること、それは無茶というものです。

完全に自由な声を手に入れるまでは、僕たちは歌の中で本当にたくさんの作為的な動作をせねばなりません。

そして、唯一作為的にならずに自然に任せる事ができる動作、それは「呼吸」です。

僕たちが一秒も欠かさずに行なっている「呼吸」という動作に関して、僕たちは絶対の信頼を置いて良いと思います。

あるボイストレーナーの方がブログに書いてらっしゃいました。

生まれてこの方ずっと息をしている、僕たちは呼吸のプロなんだ」と。

まさにその通りだと思います。

呼吸に限らず、姿勢・舌の位置・口の開け方など、僕たちが普段から自然に行なっている動作をわざわざ練習する事はナンセンスです。最適な喉の状態から生まれる良い声で歌っている時には、(例えば)舌は最適な位置に自動的に調整されます。

呼吸は今の喉の状態に即した仕事を自動的にやってくれます。

「ロングトーンで息を使いすぎる」のは「今の喉の状態で、これだけ音を伸ばすには、これだけの息が必要なんだよお」と呼吸器官が、ある意味最適な仕事をしてくれているんです。


結論として、ロングトーンで息が続かない等の問題が起こる理由は只の一つ、「喉の機能が未熟な為」です。

喉が未熟なうちは、どう頑張っても息の量は不本意に消耗されてしまいます。

これはボイトレのプロセスの中では仕方のない事です。

でも、日々の正しい練習の結果「音域が広がった・声量も増した」頃に一度、以前は難しかったロングトーンを試してみてください。

息を少量しか出さないでおこう!とか考えなくとも、息は必要な分しか出なくなりますし、当然ロングトーンも以前よりもずっと楽に伸ばせるようになっているはずです。

結局はいつもの通り、元も子もない言い方になってしまいますが、息が続かないのも音を伸ばすと音程がフラフラするのも、根本的には「喉の機能回復」によってしか問題解決には至りません。

歌手の歌唱力アピールのためにわざわざ用意される事もあるロングトーン。

それだけ難しいテクニックなのですから、ボイストレーニング生活の最後の最後で成果として現れるものなのかもしれません。


最後に(以前にも書いたかもしれませんが)ボイストレーニングにおいて忘れてはいけない教訓を記させていただきます。

  • 歌の中の一部分・ほんの数十秒だけ上手くいったというような事は、実際の歌では使えない事が多いです。
  • 包丁(喉の機能)を砥がないうちから、刺身(ロングトーン等のテクニック)を上手に切る事は不可能です。

喉は植物に似ているとも言われます。

毎日地道にせっせと水と栄養を与え続ければ、きっと大輪の花を咲かせるでしょう!

 

以上、ご精読ありがとうございました!

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