歌に腹式呼吸・肺活量は関係ない 歌う時の呼吸は喉が調整してくれる

「ボイストレーニング」と聞いて、何を思い浮かべるか?

「ピアノを使った音階練習」「喉を開いて声を出すこと」、人によっては「ストレッチ」というイメージを持たれるかもしれません。

僕がレッスンに新しい生徒さんをお迎えした時、また仲間のシンガーと話しをしていて・・・一番多く聞くフレーズは、やはり「腹式呼吸」を始めとする呼吸に関することです。

具体的には「以前ボイトレをやっていたのですが、未だに腹式呼吸が出来ません」「声を出すのにはどれくらいの呼吸の量が必要なのですか?」などです。

表現は様々ですが、かなりの割合の人が「腹式呼吸」「お腹から声を出す」といったベクトルのボイトレをしてきた、またはボイトレに関してそのような先入観・イメージを持っているように感じます。

僕自身は、フースラーメソードを知る事により「腹式呼吸神話」から解き放たれた経験があります。しかし世間一般的にはまだまだ「良い声=腹式呼吸」のイメージは根強く残っているようです。しかしそれも無理のない事のようにも感じます。僕は昭和46年生まれですが、僕たちは例えば音楽の授業で歌を歌う時、声の出ていない生徒に「腹から声を出せ!」・・・また朝礼で挨拶の声が小さい人にも「腹から声を出せ!」・・・ずっと言われ続けてきた世代です。今の教育現場に関しては僕は不勉強ですが、少なくとも僕たちの世代の人達には「声は100%喉の仕事である」という”事実”が「腹式呼吸神話」を上回るには、もう少し時間がかかるのかもしれません。

今回の記事は、最近の僕のレッスンでの体験を元に「腹式呼吸」「肺活量」について書き進めてみたいと思います。

お付き合い下さい。


「肺活量が弱いから歌えない」という事はありません(ちゃんと話せているなら)

「私、肺活量が弱いから歌が歌えないんです」

先日、新しい生徒さんをお迎えした時、こんな会話をしました。

続けて色々質問してみると、自分は音痴な上に声量が全然ないのでカラオケに行くことが億劫である、本当は歌いたいのだけれども・・・肺活量が弱い自分がカラオケで普通に歌えるようになるにはどうしたらいいのでしょうか?という事でした。

僕はその生徒さんと話していて、どうしても「歌えない人」には思えませんでした。

しかも「肺活量が弱い」という考えは、どうやら自己判断されているようでした。

 

話し声の強さは、歌声の強さに連動します

僕がその人と話をしていて「歌えない人」に見えなかった理由は、その人の「話し声」がとても強くて豊かに聴こえたからです。

その人は女性ですが、むしろ一般的な女性よりも強い声をしている、という印象さえ受けました。

後で聞いた話ですが、この方はお仕事上、毎日お客さんと会話をされているようでした。この方の「話し声の強さ」は、日常の声の使い方からの影響だったのだと思います。「パソコンに向かって無言で過ごす8時間」と「お客さんと情緒豊かに会話をして過ごす8時間」とでは、話し声に大きな差が出てくる事は簡単に想像できます。やはりボイストレーニングを合理的に進めるためには、日常の過ごし方にも”ほんの少しだけ気を配る”姿勢が必要ではないかと、改めて感じました。

冷静に考えれば分かる事ですが、「話し声」も「歌声」も同じ発声器官から作られるものなので、シンプルに「話せる=歌える」ということになります。

「話し声にはメロディーがなく、歌声にはメロディーがあるじゃないか?」という疑問も沸きますが、厳密にいうと話し声にも音階があります。僕たちは「怒り」「喜び」といった情感によって会話のイントネーションを変えているはずです。会話の声の音程を一音ずつ細かく分析すると楽譜に書き記す事さえ可能なはずです。つまり「話す事」と「歌う事」は、喉の仕事としては「大差ない」ことになります。

 

喉だけに仕事を任せておけば大丈夫です

上記のようなやりとりがあった後、「肺活量は関係ありません。そんなに強い声が出せているのですからボイストレーニングをしていけば、もちろん歌えるようになります」と、僕は申し上げました。

その後、少し声を出して頂きましたが、ちゃんと思い通りの音程を出されていましたよ!しかも強い声で!

それから、レッスンの最後の方では「喉が渇く」という訴えがありましたが、これはレッスンで発声練習をした時に「不必要な強い息」が使われている為です。

まだボイトレを始めたばかりなので、喉が必要な息の量を調整出来ていないだけです。喉の機能回復が進んでくると自動的に「必要な量の息」しか使われなくなってくるので喉は渇かなくなってきます。

 

まとめ

この生徒さんのように「歌えないと思い込んでいる」だけの人も意外に多いのかもしれません。

それから無意識のうちに「話し声」と「歌声」を分けて考えてしまう場合もあります。

ボイトレをして変わるのは「声」です。すべての「声」は連動して改善されてきます。話し声はそのままで歌声だけ改善する、またはその逆・・・その方が難しいことのように思います。

また、普通に会話出来ているなら「肺活量に問題がある」という事は考えられません。そう思い込んで呼吸の練習をする必要もありません。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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