ボイストレーニング的マナーからの脱却。ボイトレ用語やスケール練習は必須ではない

社会のマナーや美意識によって出す事が許されなくなる、もしくは躊躇してしまう声が世の中には沢山あります。

ダミ声やガラガラ声は「汚い声・悪い声」の一言で片づけられてしまう事もあります。

また、女性が男性のような太い声を出す事、男性が甲高く話す事も躊躇してしまいます。

もっとシンプルに、大声で割れるような声を出す事も大人にとってはマナー違反になるかもしれません。

現代の日本で社会生活を営む上では、ある程度のマナーの中に生きる事は必要ですし、その為に上記の声を封印することは仕方がない事です。

でも、ボイストレーニングにおいては「自分が出せる声は全部出してやる!」という気概は必要だと思います。

度々書いているように、ボイトレとは「出した事のない声を使って未使用の筋肉を目覚めさせる」行為だともいえます。

確かにボイトレには形骸化したイメージがあります。

先生が弾くキーボードのスケールに合わせて「マママママ~♪」と半音ずつ音を上げていくといったような・・・

そして、その時に発声されている声のイメージはやさしくクリアーな声でしょうか・・・

少し厳しい言い方をすると、世の中のおびただしい数のボイトレ学習者の中の一体何人の人が劇的な声の変化を得たでしょうか?

きっと、そんなに多くはないと思います。

つまり、既存のイメージ通りの「ボイストレーニング的マナー」の中からは何も得られない人の方が圧倒的に多いという事だと思います。

ひょっとすると、僕たちが持っているボイトレのイメージから遠く離れる事、ボイトレの世界では当たり前に使われている用語や道具、そういったものを捨て去る事によって声が解放される事さえあり得るのではないかと考えてしまいます。

今回は、僕が過去に受けたボイストレーニングの経験から、僕自身のレッスンで実際にやらないようにしている・控えている事等を書いていきます。

お付き合いください。


 

専門用語はなるべく使わない

僕自身のレッスンでの声区を表す用語は「地声」「裏声」を使うようにしています。

完全な「2声区理論」を前提としたレッスンなので、その二つしか必要ありません。

これはただ単純に僕の言葉に対する美意識の問題と、もうひとつは「地声」「裏声」の方が「チェストボイス」「ヘッドボイス」よりも一般的だからです。

歌を歌った事がない人、ボイトレした事がない人でも「地声」「裏声」という言葉は知っているでしょうし、「こんな声だな」という漠然としたイメージもあると思います。

それをわざわざ「チェストボイス」「ヘッドボイス」という、下手をすると「胸の共鳴」「頭の共鳴」という間違った連想を生むかもしれない難しい用語に言い換える必要はないと思っています。

そして、裏声に関しては「ヘッドボイス」「ファルセット」を使い分けるメソッドが多いですが、僕自身がこの二つの用語で混乱した経験から「ファルセット=息漏れの裏声」として区別しています。

それでなくとも、レッスンを受ける側は多少の緊張があります。

ややこしい言葉や覚えるべきことは極力少ない方が良いと思います。

 

スケール練習の功罪 ~罪の方が多い~

ボイトレの現場では初心者にもいきなりスケールを歌わせることが多いです。

僕のレッスンでは、よく使われる1オクターブや1オクターブ半のスケール練習はあまり行なっていません。

特にボイトレを始めたばかりの人にとっては何よりも「地声と裏声の分離」を最重視しています。

例え半オクターブであっても、スケールの中で素早く音を行き来させるスケール練習は、地声・裏声の分離と強化が相当進むまではやるべきでないと思っています。

スケール練習は多かれ少なかれ、喉の使い方のグラデーション的な変化を必要とします。

当然、地声の最高音では「少し裏声の力を借りる」ことになるでしょう。

この時点では「地声っぽい裏声」や「裏声っぽい地声」は必要ないと考えます。

スケール練習は必要ない。やればやるほどそのスケールが上手く歌えるようになるだけだ」という意見もあります。

僕も概ね共感できます。

スケール練習で絶対にやってはいけない事がもう一つ。

それは過剰に「音程を合わせにいく」事です。

僕自身、ボイトレ中に「もっとしっかり音程を合わせて!」と指示された経験もあり、独習でのスケール練習でも音程合わせに躍起になっていました。

けれども何度か練習して、どうしても合わせられない音がある時は必ず原因があります。

そして「対処療法」でもって、「少しこの音はシャープ気味に歌おう」とか「声量を落として音程を合わせにいく」という事をやってしまうと、問題の根幹をほったらかしにしてしまいます。

その努力は大変な回り道です。

決して「対処療法」で「そのスケールだけを解決」することのないようにして下さい。

さらに、トレーナーさんに習っているなら、「この部分が必ず外れる・歌いにくいのはなぜか?」と質問してみると良いと思います。

例えば ブレイク付近(地声と裏声が交差する辺り)の音が外れるのであれば、地声と裏声の融合が不完全な事が原因です。この状態ではブレイク付近の音程をきちんと合わせるのは厳しいと思いますので、融合の訓練やそれ以前の分離・強化へと立ち返った方が良いと思います。

 

上記の場合では、これ以上スケール練習を続けるのはほとんど無駄だと思います。

それなら、実際の歌をたくさん歌う方が良いと思います。

「慣れる」ためにやるなら歌を歌った方が良いです。

発表会やライブでスケールを披露するわけではないので・・・

 

 

スケール練習に対して僕が強く思う事

 

今練習しているスケールの目的は何でしょうか?

おそらく「地声と裏声を“とりあえず”繋ぐ事」ではないでしょうか?

もしそうだとしたら、今行なっているスケール練習は不要です。

裏声と地声がそれぞれ独立して強く出せないうちに「とりあえず繋いだ声」は歌には使えません。

ご存知の通り「歌うこと」は、決して易しいことではありません。

「とりあえず繋いだ」程度の声では、せいぜいそのスケールが上手く歌えるようになるだけだと思います。

 

“急がば回れ”!

結局「裏声と地声の分離・強化」へと立ち返る事が一番の近道だと思います。

 

こんなレッスン、あっても良い!

 

例えば、敢えてキーボードは使わず、僕が発する無茶苦茶な言葉の無茶苦茶な奇声を生徒さんが真似をするだけのレッスン。

きっと未使用の筋肉がたくさん鍛えられると思いますよ!

 

寝そべって発声するレッスン。

「発声とは100%喉の仕事である」という事を体感してもらえると思います!

呼吸に頼る悪癖がたちどころに治るかもしれません!

 

こんなユニークなレッスンがあっても良いのかもしれませんね! 

 


どんなジャンルであっても「既存のマナー」は必ずありますが、それがそのジャンルに必要なスキルアップを妨げている場合も多いと思います。

もし、ボイトレ生活に行き詰まりを感じていたなら、今やっている事の亜流の考えでは埒が明かないと思います。

思い切った脱却、「進歩的なマナー違反」の心意気が必要なのではないかと思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

PAGE TOP