レッスンと自主練習での違いは「監督者がいるかいないか?」という事になります。
例えば「狙って出しているはずの音色がズレてきてしまっていたことが次のレッスンで分かった」なんて事は常に起こってきます。
そしてレッスンとは、そのベクトルを修正するためにあるので、「まあ多少間違ってても次回レッスンで修正してもらったらいいや!」ぐらいの気持ちでガンガン発声して頂きたいと思います。
間違った事をやってきてもらうというのは意外に重要で、その間違いに気づくとそっちの方向に「立ち入り禁止」看板を立てることができます。
例えば、いくらネットや本の情報で「地声の持ち上げは危険!」と書かれていても実際に体験してみて「ほんまにしんどいなあ」と感じるまでは現実味がないですからね。
地声の持ち上げ自体が悪いのでは決してありません。まだ喉が弱いボイトレ初心者の方の持ち上げが危険なだけです。強い声を作る為には、ある程度の地声の持ち上げはむしろ必要な事なので、レッスンでは少しずつ慎重に「持ち上げ・張り上げ」もやってもらっています。
さて、もし半年~1年、更には何年もの期間、ボイトレに通ってレッスンを受け続けても問題が一向に改善されない、下手をすると前より悪くなっている!なんて事も結構あります。
今回は、もし周りにそういう方がいらっしゃったり、御自分がそういう状況に陥っていたりする時に、また自主練習の密度を上げたい方に読んでもらいたい記事です。
お付き合い下さい。
自主練習中に心がけてもらいたい事
もっと声量は上がりませんか?
いつも同じ声量で練習していたのではもったいないです。
常にもっと強く出せないか?と考える事が大切です。
「分離」された地声と裏声はそれぞれ「強化」しなければならないので、地声、裏声を個別に発生する時には常に「もう一押し!」声量を上げる意識を持って下さい。「強く大きな地声」と「強く大きな裏声」を手に入れましょう!
ボイストレーニングでは「裏声を純化する」「地声と裏声をバランスよく融合する」など、デリケートな練習は必要ですが、あくまでも「強い声」「大きな声」を手に入れる!という根源的な目的を失ってはいけません。手に入れたい声の理想は、いつも「強く・大きく」です。
もっとテンポを落とせませんか?
音階練習などでは気付かないうちに意外に速いテンポで練習してしまっている事はよくあります。
これは流れ作業で惰性になってしまい、大変もったいないです。
極端にゆったりとしたテンポで練習すると、おざなりになっていた箇所が見えてくるかもしれません。
ほとんどの場合は、ゆったりとしたテンポでの練習は、速いテンポでの練習よりも難しく、忍耐のいる事です。
もう一つ先の音へは行けませんか?
いつも同じ音を限界と決めていてはもったいないです。
例えば裏声の下降練習、今の限界の音が「ド」なら、次の「シ」まで下降できないか、攻略できないか悪戦苦闘してみることが大切です。
裏声が下の音域に半音伸びただけで声は少し自由になるはずです。
音階練習では(たとえ指示されていなくても)「再低音=シュナル~最高音=フラジオレットまで」行き来してみると良いと思います。これは、今のあなたが持っている「全ての音域」という事になります。歌に使える音域とはまた別の問題になりますが・・・
もっと音色に磨きはかけられませんか?
中途半端な音色での練習はもったいないです。
深い声を出す時は「もっと深く!」。明るい声を出す時は「もっと明るく!」。
出したい音の純度が高い程、訓練効果は高いです。
ボイストレーニングでは、音色に関しては常に「より極端に」という発想を持つべきです。これはあくまでも「訓練」なので、実際の歌に使う音色かどうかは、全く考慮する必要はありません。
母音が曖昧になっていませんか?
練習メニューで指示されている母音にはそれ相応の意味があるので、必ず指示された母音で発声するようにしましょう。
また、曖昧な母音は訓練効果を下げてしまうので、母音は常に明瞭にハッキリと発音する事が大切です。
もっと可動域を広げられませんか?
音の最後を何となく終わらせるのはもったいないです!
「小さなビブラート」「大きな揺らぎ」等、音を動かして遊んでみる事で、声の柔軟性はどんどん高まっていきます。
ビブラートなどの装飾表現テクニックは、喉の機能回復にも一役買ってくれます。ぜひ「積極的に音を揺らしてみるべき」です。
以上は具体的に練習で心がけてもらいたい事です。
練習項目の見直しも
もし何年もトレーニングをしているのに全然効果が出ない、または効果が余りにも少ない場合には、次のような項目を見直してみてはどうでしょうか?
練習内容自体を見直す
あまりに効果の出方が遅いだとか効果が全く出ないとか、前より歌いにくくなった等だと、練習自体を見直した方が良いかもしれません。
この際「誰々さんはこの方法で上手くなった」とかいうのはあまり参考にならないと思います。
例えば、今自分が歌で主に使っている声区・音色=男性なら地声(または地声のようなトーン)・女性なら裏声(または裏声のようなトーン)以外の声区・音色を積極的に開発しようとしていないのなら、方向性が間違っているのかもしれません。
練習の質を見直す
求められた音域まで発声していない、求められた音質を出そうとしていない、速すぎるテンポで練習している、いつも小さな声で練習している等、見直してみると良いかもしれません。
練習の量を見直す
週に30分とか、レッスン前にちょろちょろっと、とか余りに練習量が少なすぎるとさすがに効果は出ません。
テキストの読解が不足している(ボイトレ本での独習の方)
ボイトレ本の中には有益なものもたくさん有りますが、書いてある内容を浅く読んで理解した気になっていると当然効果は薄いものとなります。
例えば、息漏れの裏声、支えのある裏声・・・額面通りに受け取ってその通りにやってこそ効果があるので、もう一度全編を読み通してみて、サンプルCDがあるならもう一度しっかり模倣する方が良いと思います。
更には、低い男性声・高い男性声・低い女性声等、声種別に音源が収録されている場合は、ちゃんと自分に合った音源を選んで練習しないと効果は半減します。いや半減どころか無駄な呼吸の量で高音を出そうとした場合、逆効果になってしまいます。(学習者の心理として、ちょっと高い、ちょっとキツめの音源で練習したくなるんですね!僕もそうでした!負荷をかけた方が早く上手くなるような気がして!)
生徒・トレーナー共に惰性になってしまっている
何年もボイトレに通っていても一向に改善されないならば、この可能性もあります。
そんな時は一度きちんとトレーナーに話してみて、それでも改善されないなら思い切ってトレーナーを変えてみる方が良いかもしれません。
最初はお互いに熱意を持ってレッスンをしていたのに、いつのまにか定期的に通う事だけが目標になってしまった、という事はあり得ます。
せっかく時間やお金をかけてボイトレしているのだから、合理的な練習をしたいものです。
ぜひ参考にしてください。
以上、ご精読ありがとうございました。