物真似芸人さんは皆、歌が上手いと言われています。
「〇〇のそっくりさん」のようなタイプではなく、色々な人の物真似をする人は特に喉の自由度が高いはずですね。
「物真似のレパートリーを増やす」という事は「喉の可動性を高める」という事と同じ意味なので、あの人達は毎日、高いレベルのボイストレーニングを行なっているようなものです。
さて、今回は動物声帯模写で有名な「江戸屋猫八」さんをボイトレ的観点で聴いてみたいと思います。
お付き合い下さい。
歪んだミックスボイスが聴けます
まずは、江戸屋猫八さんです↓
「江戸屋猫八」の名は代々受け継がれているようです。この方は”三代目江戸屋猫八”です。
1:42あたりから2種類のニワトリの鳴き真似が披露されます。
ミックスボイスの感覚を掴むために「ニワトリの鳴き真似をする」という方法が使われる事がありますが、猫八さんのミックスボイスはもう一歩上を行っています。
このニワトリの泣き声、かなり「歪んで」います。
これは「ガム発声」とも言い、とても健康的な発声であり、喉への負担はほとんどありません。
この「歪み」はロック歌手がシャウトで使うガラガラとした濁った声と原理は同じです。
猫八さんはミックスボイスと歪み声の名手なんですね!
”江戸屋猫八”の名は世襲制のようなので、おそらく先代から手ほどきを受けたのでしょう。一体どんなレッスンだったのか!見てみたいものです!
フラジオレットが聴けます
さらに4:15あたり、コオロギと鈴虫の鳴き真似が披露されます。
ここでは裏声よりさらに高い声である「フラジオレット」が使われています。
フラジオレットは操作が難しいのですが、猫八さんはコオロギと鈴虫で、それぞれ音程の差をつける妙技を聴かせてくれます!
僕自身はフラジオレットは歌った後は出せない事もあります。猫八さんは自由自在のようです。素晴らしい喉です!
話し声にも注目してください
そして、猫八さんの話している声に細かな歪みがあるのが聴こえるでしょうか?
決して「きれいな声」ではなく、むしろ「ダミ声」に近い印象です。
実は、地声と裏声のミックス状態が促進されてくると、話し声も少し歪んできます。
ツアー中のロック歌手のインタビュー映像を見ると、話し声が歪んでいる事が多いです。
これは、ロックバンド「Yes」のボーカリスト・ジョンアンダーソンのインタビュー映像です↓
ジョンアンダーソンは70歳を超えた今でも超ハイトーンで歌い続けている人です。
この人の声にも猫八さんと同じような歪みがあります。
猫八さんの声を聴いていると、ダミ声が決して不健康で聞き苦しい声ではない事が良く伝わります。
綺麗な声よりもダミ声の方が、むしろ安心感を与えるのではないでしょうか?
ダミ声によって群衆を動かした指導者の例はたくさんあります。綺麗な声ばかりが「魅力的な声」ではないという証明でしょう。
ニワトリやカエルの声を聴けなくなった?
この動画の中で猫八さんは「今の子供はニワトリやカエルの声を聴けなくなっているから可哀そうだ」というような話をしています。
単にネタとして使われただけだとは思いますが・・・
実は、ミックスボイスの感覚を掴むために「ニワトリやカエル」の鳴き真似をする、という方法が実際に存在します。
ニワトリやカエルの声は、地声と裏声の境目の音程(通常は発声が難しい箇所です)で発声すると上手く出せるので、初期のミックス状態を体感するために出してもらう事があります。
猫八さんが言うように、昭和の子供たちが普段の生活の中でニワトリやカエルの声をたっぷりと聴き、それを真似して遊んでいたなら・・・知らないうちに、高いレベルのボイストレーニングをやっていた可能性はあると思います。そんな風に考えると、僕たちには歌の練習とは違った観点のボイストレーニングも必要なのではないか?と強く思います。
以上、ご精読ありがとうございました。