サビだけ上手く歌えるでは意味がない。1曲通して、何曲も続けて歌えてこそ

こんな質問を受けた事があります。

「サビだけ抜き出して歌うと、とても上手に歌えます。けれど一曲通してとなると途中で声が裏返ったりして上手くいきません。やっぱり僕は喉が弱いのでしょうか?それとも何か他に原因があるのでしょうか?」

この人は「喉の強さは天性のもの」だと信じていて、「サビだけしか上手く歌えない」のは「自分の喉が弱いから」だと考えているようです。

答えはもちろん「喉の機能の未熟さ」に集約されるのであって、何か他の原因があるわけではありません。

今回の記事は、この質問に答える形で書き進めていきたいと思います。

お付き合い下さい。


喉に「強い・弱い」はありません

まず話を進める前提として、喉に先天的な「強い・弱い」の差はありません。

いや、正しくいうと「声帯に」強い・弱いの差はないと言った方が正確でしょう。

もし「強い・弱い」の差があるとすれば、「喉周りの筋肉」の事を意味するでしょう。

しかし、この「喉周りの筋肉」は、鍛えて強くする事が充分可能である事が分かっています。

仮に、現状はこれらの筋肉が弱い状態であっても、改善は可能なのですから「僕の喉は弱い!」と諦めてしまう必要は全くありません。

この「喉周りの筋肉」を鍛えるトレーニングこそが、ご存知「アンザッツトレーニング」です。フースラーメソッドの根幹を成すともいえるこのトレーニングの効果は絶大です。

この方のように、喉が疲れてくると「声が裏返る」のは裏声と地声の融合が弱い事が原因です。ボイストレーニングの3つのステップは「(地声と裏声の)分離・強化・融合」です。「声が裏返る」ことは、シンプルに言えばボイトレが未完成であることの象徴だともいえます。

 

喉に「先天的な要因」は少ない

喉はとても個人差が少なく、また先天的な要因の少ない器官です。

このことは意外に知られていませんが、子供の頃からの喉を使ってきた環境の差が、大人になってからの声の差として現れくるのです。

そんな理由からも、声は後になってからも変える事が出来るのであって、決して「諦める」必要はありません。

僕は「正しくボイトレすれば、声は”誰でも”変える事が出来る」と信じています。そういう意味では他の楽器の習得よりも、むしろ「敷居が低い」とさえ言えると思います。「声を変える」事ほど、世間的な認識と事実がかけ離れている事も珍しいのではないでしょうか?つまり「変えられる」ことが歴然とした事実であるのに、皆さんほとんどが「変えられない」と信じています。

 

「サビだけ」と「一曲通して」では難易度が雲泥の差です

トレーニングの一環としてスケールを歌う事と、歌全体を一曲通して歌う事とでは、その難易度に相当な差がある事はお分かりだと思います。

それと同じように「サビだけ」と「一曲通して」では、「大人と子供ほどの違い」「雲泥の差」があると考えるべきです。

歌の一般的な構成から考えても、サビは大抵Aメロ・Bメロの後で出てきます。つまり、喉はサビを歌い始める前にたくさんの仕事をやり遂げなければなりません。一曲通して歌うことは、サビだけ抜き出して歌うこととは全く違う難しさがあるのは言うまでもありません。

「サビだけ歌う」ことは、歌の練習としてもトレーニングとしても、それほど必要な事でなないと思います。

訓練価値を求めるならアンザッツなどのトレーニングをするべきであり、歌の練習であればやはりフルコーラス歌う事で初めて意味のある練習になるでしょう。

喉にとって最も難しい事の一つは「持ちこたえること」です。歌はマラソンのように苦難の連続です。サビだけ抜き出して歌うのなら「持ちこたえる喉」はそれほど必要ありません。瞬間的に高いキーで歌うことはそれほど難しくありませんが、高いキーを続けて出して「持ちこたえる」ような歌は、とても難易度が高いといえます。

 

「何曲続けて歌えるか?」も指標のうち

上記のような「一曲通して歌う」ことの先には、「連続して何曲も歌えること」が次の目標として待っています。

例えばライブなどでは「一曲ずつ」よりも「何曲か続けて歌う」機会の方が圧倒的に多いです。

そして、そんな状態でも「持ちこたえられる喉」こそが、本当の意味での実戦的な喉なのだと思います。

「サビだけ」と「一曲通して」の間に難易度の大きな差があることと同じように、「一曲だけ」と「何曲か続けて」の間にも大きな開きがあります。特にライブで歌うシンガーは「何曲か続けて歌える喉」をボイトレの指標とするべきだと思います。そうする事で初めて「ライブで実力を発揮できる」シンガーへと階段を上っていけると思います。

ライブステージでのシンガーはほとんどの場合、曲間のМCも受け持つことになるでしょう。数曲歌って、エムシーをして、また数曲歌う・・・この繰り返しです。バンドで歌っているシンガーがボイトレのゴールとして見据えるのは「МCも含めた、ワンステージを持ちこたえられる喉」という事になるでしょうか。

 

まとめ

ボイストレーニングは、常に「実戦で対応可能な喉」という目標で進めるべきだと思います。

それはボイトレの目標をどこに置くか?で、各々違ってくると思います。カラオケで人より上手く歌いたいなら「一曲完全に歌える喉」は必須でしょう。一方バンドシンガーであればもっとタフな目標になるだろうと思います。

そういう意味では、「サビだけ抜き出して歌うこと」にはあまり意味がないように思います。

やはり、歌の最小単位は「一曲全部」であるべきです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

PAGE TOP