【声区分離】離せば離すほどお互いを必要とする ~地声と裏声は、織姫と彦星である~

強く愛し合っているけれど天の川を挟んで離れ離れになってしまった織姫と彦星は、一年に一度、七夕の日にだけ再会する事が出来る・・・皆さんご存知の七夕伝説です。

二人は、離れている時間が長ければ長いほど、隔てている距離が遠ければ遠いほど「会いたい」という気持ちはどんどんと強くなっていったのではないでしょうか?

全くの余談ですが、織姫と彦星、実は恋愛に夢中になって仕事を怠けたために離れ離れにさせられたのですね。七夕伝説には「怠けてはいけない」という教訓も含まれているようです。

さて、ボイストレーニング、特に始めたばかりの頃は「声区の分離」、つまり地声と裏声をいかに分離して完全に独立させる事が出来るかがとても重要です。

もちろん、最終的には地声と裏声が完全に融合・一本化され、どこにも断絶や境目が存在しない声にしていく事がボイトレの目標ですが、それ以前のごく初期の段階では「声区の分離」は最も大切なプロセスで、ここにどれだけ多くの時間をかけるか?が、その後のトレーニングのあり方を決めてしまうとも言えます。

簡単にミックボイスを作ってしまうようなメソッドに欠けているのは、この「声区の分離」です。この最も大切なプロセスをすっ飛ばしてしまう事で、その後の何年かを無駄に過ごしてしまう事になると言っても言い過ぎではありません。

今回の記事では、地声と裏声を七夕伝説の織姫と彦星になぞらえて「声区分離」の大切さについて書いていきたいと思います。

お付き合い下さい。


分離の進んだ地声と裏声は、融合されやすい

さて、僕自身のシンガーとしての経験では、不思議な事に「声区の分離」が進めば進むほど、地声と裏声は「くっつこうとする印象があります。

もちろん「くっつける訓練=融合のトレーニング」は必要ですが、少なくとも、きちんと分離が進んだ地声と裏声は、融合のトレーニングに対してとても良く反応してくれ、融合のトレーニングにスムーズに入っていくことが出来ます。

僕は、かつて「短期間でミックスボイスを作る」トレーニングをやっていましたが、あんなに「くっつける」練習ばかりしていたのに全然「くっつかなかった」地声と裏声は、全く逆のこと、つまり「くっつかないようにする=分離する」事に重点をおいた途端に「見事にくっつき始めた!」そんな印象です。

僕はレッスンでも自分のボイトレでも、常に「声区の分離」に時間をかけるようにしています。分離のプロセスに「やり過ぎ」という事はないと思ってす。

 

不調の時には「声区分離」へと原点回帰する

歌い過ぎ・寝不足・お酒の影響・・・喉が疲れていて声が思うように出ない時は、より初歩的なプロセス、つまり「声区の分離」へと回帰するべきです。

このことは僕自身のライブでの経験から、いつも皆さんにお伝えしています。

例えばライブの当日に喉の調子が悪く、地声と裏声の境目(喚声点)の辺りの声が上手く出ない!そんな時は「くっつけよう」とせず、「くっつかないようにする」事を真っ先にやった方が良いです。

具体的には「地声と裏声を、出来るだけ純粋な状態で交互に出す」などのウォーミングアップです。上記のような不調時は「地声と裏声を分けて出すための神経がこんがらがっている」と考えてはどうでしょうか?それぞれ交互に発声して、こんがらがった神経をほどいていく・・・そんなイメージです。

 

離れていても「お互いを必要としている」

織姫と彦星は、神様の逆鱗に触れて天の川の両端に離れ離れにさせられましたが、離れてみてお互いの存在の大切さを身に染みて感じたのではないでしょうか?

地声と裏声も同じようなものです。

離せば離すほど、お互いを必要とし、再びくっつこうとする・・・正に織姫と彦星のようです!

人間の声は「地声と裏声に分かれていない」のが本来の姿だとも言われています。このことは赤ん坊や幼児の声を聴くと、決してファンタジーではない事がわかります。(赤ん坊や幼児の声は完璧に融合されていて、地声と裏声の区別がありません) ボイストレーニングの概念を「融合した声を作る」から「融合した声に戻す・回復させる」という方向に切り替えると、「離せば離すほどくっつこうとする地声と裏声」の理屈は納得のいくものに思えてきます。

まとめ

地声と裏声は、元来分かれているものではなかったが、何らかの事情で離れ離れになった。

だから、離せば離すほど「くっつこう」とする。さながら織姫と彦星のように・・・

一見こじつけのような話に聞こえるかもしれませんが、ボイストレーニングを進めていくと「声区の分離」がいかに大切か、分離なき融合はあり得ない!という事を体感としてわかってもらえると思います。

僕は、頭の片隅にいつも「地声と裏声に分かれている状態=仮の姿」であるという考えを持つようにしています。

「融合した声を”作る”」と「融合した声に”戻す”」・・・この二つの考えのうち、どちらをボイトレの方向性として持つか?・・・とても重要な事だと思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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