【ガム】お坊さんから学ぶ健康的な発声。声のスタミナの源となる歪み声、ダミ声

健康的で理にかなった発声というのは、こちらが声に対してアンテナを張っていたなら、意外なところで見つかるものです。

今回注目するのは「お坊さんの読経」です。

誰でも一度は耳にした事のある読経。

もちろんお坊さん個人個人で声質の個性はあるものの、皆さん共通の声のトーンで読経されますね。

低く、少しガラガラとした歪みがあって、鼻にかかったような・・・

特定のジャンルで使われている独特の声のトーン(電車の車掌さんの声など)には、伝統的に守られている「発声のテクニック」があるように思います。声を長時間使う為の工夫や改良が、先輩から後輩へと伝わっていく・・・そんな「たたき上げの技術」のようなものが隠されているのでしょう。(まさか電車の車掌さんやお坊さんが、皆でボイストレーニングをやっているとは考えられません)そういった「たたき上げの技術」を研究する事は、とても有益だと思います。何しろ、彼らは「喉の○○筋の働き」や「声帯が閉じる時云々・・・」といった、ボイストレーニング的知識を持たずに「現実に上手くいっている」のですから!

一日に何時間も声を使う職業の人には「個人の喉の能力」に頼らない「発声の秘密」(もしくは、喉を鍛えるシステム)があると思って間違いないと思います。例えば、お坊さんも、言うなれば「声でお金を取っている”声のプロ”」だともいえます。そんな「声のプロ」が何日もの連続使用に耐えられない喉しか持っていなかったら、仕事にならないでしょう。

今回はそんな読経の声に秘められた発声のテクニックについて書いてみたいと思います。

お付き合いください。


綺麗な澄んだ声ではなく「ダミ声」です

お坊さんは読経をクリアーな声では唱えません。

むしろ、歪み声(ガム声)を連想すると思います。

実はこの「歪み声・ガム声」(ダミ声ともいいます)にこそ発声の秘密の一旦があるんです。

喉に悪そうなイメージのダミ声、実は澄んで張りのある声よりも長時間の発声に適しているんです。

この「声の歪み」は「仮声帯」という、声帯とは別の「ヒダ」によって作られます。

「歪んだ声=喉に悪い」というイメージは、明らかに間違った先入観です。公園で走り回る子供の叫び声・赤ちゃんの鳴き声など、感情的に発せられた声の中にクリアーな声は少ないと思います。またチンパンジー・ゴリラなど、動物の声も歪んでいるものが多いのではないでしょうか?そう考えると「歪んだ声=自然な声」「クリアーな声=作られた不自然な声」という認識の方が、むしろ正しいのかもしれません。

僕は「歪み声」の練習をし始めた時、ほとんど全くと言っていいほど「歪ませる」事が出来ませんでした。おそらく僕も子供の頃は、物凄く歪んだ声で叫びながら公園を走り回っていたはずです。つまり「昔出せていた声が出せなくなっていた」のです。この事は「ボイストレーニングとは、喉の機能を”回復”させるもの」という概念にピッタリとフィットします。つまり新たに何かを得ようとするのではなく「取り戻そう」という考え方です。そしてレッスンをしていていつも感じます。現代のほとんどの人は「歪み声を失っています」

 

ところどころ入る「咳払い」

そして時々入る喉に絡ませるような咳払いもお坊さんの読経の特徴ですね。

咳払いは「仮声帯」を意図して鳴らす事が出来るのです。

あの読経途中の咳払いには大きな意味があると思います。

歪み声・ダミ声の練習は初めは「咳払い」の感覚の延長で行なっていきます。仮声帯を意図的に鳴らす事が出来る一番簡単な方法が「咳払い」だからです。僕たちが「歪み声の練習」として行なっている事を、お坊さんたちは毎日の読経のたびに行なっている事になります。そう考える、とてもつもない練習量です!毎日がボイストレーニング漬けなんですね!

 

まとめ

つまり、お坊さんの読経は、歪み声を使う事による耐久性のある発声に加えて、咳払いによって「仮声帯」を鳴らして、ダミ声の感覚を途切れないようにしているのです!

素晴らしい伝承テクニックです!

以上が僕の推論です(笑)多分合ってると思います。だって僕の演奏仲間のお坊さんは、強い声で長時間歌っても全然へこたれませんから!そのお坊さんは「朝から読経で喉が辛いわ!」と言いながら、いつも豊かな声量で歌ってくれます!

上記のお坊さん、一日に何軒も読経して回ることも頻繁にあるようです。素晴らしい喉のスタミナだと思います。そして「歪み声」こそ、喉のスタミナと豊かな声量を生む最も大切な要素です。

聴いていると、思わず眠気を誘われるような・・・現実に「心地よい読経」というものが存在します。読経を「心地よい」と感じるのは「東洋的美意識」だと言えます。読経の声には「歪みの要素」がありますが、この「歪みを美とする」価値観は「アジア・アフリカ的」だと言われています。事実、西洋オペラの声には「歪みの要素」は全くありません。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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