声の調子が良い時は誰でも上手くいくもの、ボイトレで喉に神経を行き渡らせ”声の底上げ”を目指す

僕がプロのシンガーとしての活動を始めたばかりの頃、ある先輩シンガーからこんなことを言われました。

「調子が良い時は誰でも上手くいくものだ。問題は調子が悪い時にどれほどの仕事が出来るか?それが君の実力だ」

なるほど・・・この言葉は、歌に限らず色々なジャンルでも当てはまることだと思います。野球のピッチャー、特にチームのエースと呼ばれる選手に必要なのは”悪い時でも悪いなりに試合を作れる”、そんな能力だと言われます。それほど実力のないピッチャーでも一年に一度か二度、目の覚めるようなピッチングをすることがありますが、やっぱりそれは長続きしません。一方、エースピッチャーはいつでも必ず最低限の仕事(試合を作る)はやってのけます。そのうえで時々は素晴らしいピッチングも披露してくれます。つまりエースピッチャーとそうでないピッチャー、それぞれベストの力が発揮された時の投球内容はそれほど差がないのかもしれません。けれど何よりも「調子が悪い時の投球内容」に雲泥の差があるのです。

 

調子が良い時は「上手く歌えて当たり前」です

「今日、俺、むっちゃ声でるわ~♪」

こんな日は誰にでもありますね。たっぷりの睡眠が摂れていて身体の調子もよく、気持ちも充実している・・・そんな時は誰でも力強い声が出るものです。

けれど、そんな”絶好調時”の声・喉の状態を、真に受けてはいけません。単発的に”声が良く出る”状態は長続きせず、必ず近いうちに翳りが見え始めます。(そんな日に仲間とカラオケに行ったなら、早ければ、その日の最後には疲れてきて調子は下降線かもしれません)

特にその”声が良く出る”状態が「声量を伴っている」、つまり”大きな声を出せる”という意味での”絶好調”なら、早々に声は疲労してくるものと思って間違いないでしょう。これはただ単に、身体の調子が良いことで(全身の力を借りて)大きな声が出せているだけに過ぎないからです。

そもそも周りから見て「声が良く出ているねえ」という感想を頂くことは、多かれ少なかれ”呼吸・声量のサポート”が客観的に見え隠れしているのだと思います。機能回復が進んだ喉、自由度の高い喉から発せられる声からはそんな感想は生まれません。言葉にするには難しいのですが、何かこう、歌声が薄い金属的なベールに包まれたような・・・それでいて普通の人の話し声とは似ても似つかない・・・少なくとも「声が良く出ている」という表現とはかけ離れています。(あくまでも僕の主観ですが)

 

調子が良い時は「力づく」でも何とかなります

上の項にも書いたように、身体の調子が良い時は大量の息が吐け大きな声が出せるので、ほんの短い時間内ならパワフルに歌う事は可能です。(たくさんの息が作り出した”偽りのパワフルさ”なのですが)

つまり「力づく」でも歌えてしまうのです。

けれど、その歌に注意深く耳を傾けると・・・その声は大きく太いばかりで柔軟性に欠け、艶がなく遠くの人の耳に届けることは難しいでしょう。またスタミナ面でも問題があり、2~3分持たすのがやっとだと思います。おまけに曲の後半になると高音部分は音程に届かずフラットしてくるはずです。

・・・こう書くと、この項のタイトル「力づくでも何とかなる」は偽りですね!

やっぱり「力づく」では何ともならないのです。

 

調子が悪い時こそ「喉の神経支配」が問われます

寝不足で身体が辛い、風邪気味で喉の調子が悪い・・・そんな時は「力づく」で何とかしようとしても出来ません。

少しでもボイトレをかじったことがある人なら、ふとこんな風に考えるかもしれません。「息の力で声を押し出してはいけない!適正な声量で歌い、決して張り上げてはいけない。地声と裏声をスムーズに行き来して”繋ぐ”ように心がけよう」

けれど、残念なことに突然そんなことをやろうとしても喉は簡単には言う事を聞いてくれません。喉に”神経支配”が行き届いていない、つまり”やろうと思っても出来ない”状態なのです。

喉の筋肉はそう簡単には思い通りに動かすことはできません。

ボイストレーニングの大きな目的は「喉の神経支配」を目覚めさせること、つまり「やろうとしたことを出来るようにすること」だとも言えます。

 

目指すは「声の底上げ」です

調子が悪い時でも充分に歌うことができるようにするためには、神経支配の行き届いた喉が必要です。そして、ボイトレによってそれは必ず身に付けることができます。

そうなれば、多少の慎重さは必要だとしても、不調の時に「全然歌えない!」なんてことは無くなるはずです。

これぞまさしく「声の底上げ」だと言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

調子の良い時はある程度大きな声も出せ、それなりに歌う事も可能だと思います。けれどそれはあくまでも”たまたま身体の調子が良かった”だけの一時的なものであり、真に受けてはいけません。

あくまでも目指すは「声の底上げ」です!

そのために必要なことは「喉に神経を行き渡らせること」です。そして”喉の神経支配の目覚め”は、ボイトレの大きな目的の一つです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

PAGE TOP