けれど、僕を含めたほとんどの人は、あれこれ練習したり上手く歌えない箇所について色々考えたりしながら、やっとのことでその歌を”ものにする”ことができます。
何のためにボイストレーニングをして、喉を機能回復させなければいけないのか?
それは究極的には「どんな歌でも歌えるようになるため」です。(僕はそう願ってボイトレをしています)
つまりAという歌もBという歌もCという歌も、その歌のメロディーを覚える事が出来た時点で歌うことができるようになるためです。つまり「フラットしてしまう箇所の練習」「難しい高音をファルセットにする練習」・・・といった、”その歌に個別の”練習を極力やらないでその歌を歌えるようになりたいものです。
Aの歌のレッスンを受けて、細かい箇所を改善して数か月かかってようやく歌えるようになる・・・けれど次に取り掛かったBの歌でもまた同じような問題が待ち受けていて数か月費やしてしまう・・・・こういう練習の流れになってしまうと、生涯で歌える曲数は物凄く限られたものになるでしょうし、何よりもこのような練習はボイストレーニングではありませんし、もっと言えばボーカルトレーニングですらないただの”対処”であるとさえいえます。
ボイストレーニングには、少なく見積もっても年単位の時間がかかるでしょう。なので”声の完成”を待ってボイストレーニングだけをやっていたのでは、数年間「歌を発表すること」を我慢しなければいけません。
現実的には、純粋なボイトレで喉の機能回復を目指しながら、その時々の(ライブなり発表会なりの)発表の場に向けて、決められた曲をちゃんと聴かせられる完成度にまで高めていかなければなりません。
ある程度「対処療法」的な解決をしていくことは仕方がありません
ボイトレに奮闘中だ・・・声の完成には数年かかる・・・それまでライブや発表会には出ないでおこう!・・・そんな風に考える人は多分いないと思います。
つまり、全てのボイトレ学習者はトレーニングの道半ばで、言い換えれば「”喉”という楽器の修理の途中で」本番のステージに立たなければなりません。
そんな「治りかけの楽器」を抱えてステージでお客さんの心に届く歌を披露するためには、やはりある程度「対処療法」的な練習をしていかなければならないでしょう。
具体的には「必ず低くなってしまう一音がある」ならば「その音を高く」しなければなりませんし、「どうしても歌えない高音がある」ならば「地声を持ち上げるのか、裏声で歌うのか」考えなければなりません。
このような「対処療法」はボイストレーニングとは程遠いものです。言い換えればボイトレとは、こういった「対処療法」をせずに歌える喉にしていくために行うものだからです。
次の曲でも活かせる「再現性のある」解決策を
さて、とにもかくにも本番のステージで質の高い歌を聴かせるために「一音単位のピッチ調整」や「フレーズ単位での、歌う声区(地声か裏声か)の判断」という「対処療法」をしていかなければなりません。
けれど、その「対処療法」が、この歌だけにしか活かせない「再現性のない」ものになってしまうのは、あまりに勿体ないことだと思います。
ただ闇雲に「低く歌ってしまう音は高く歌おう」「高くてしんどいから裏声にしよう」という、原因を追究しないままの解決を行ってしまうと、次の曲に取り掛かった時にはその曲のための「また新たな対処療法」を一から求めていかなければなりません。そして下手をすると誰かのアドバイスなしには次の曲の問題点は解決することも難しいかもしれません。
上に挙げたことを例にとると・・・「低く歌ってしまう(フラットしてしまう)ことに」は「不得意なアンザッツ」「喉頭の位置取り」「母音の問題」など、それなりの原因があるはずです。また「裏声(ファルセット)でなければ歌えない」のは、根本的な喉の機能の未熟さ(ボイトレ不足)なので、次の曲でも今回に近い対処をしなければいけないかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事で書きたかったことは「一度経験した対処法を次の曲でも活かせるように」ということです。
そうすることで次の曲、またその次の曲という風に「歌を仕上げるスピード」もどんどん上がってくるはずです。
もちろん、その間もアンザッツなどの普段のボイトレは進めていきましょう。
この記事で書いた、面倒で細かい「対処療法」がいつの日か全く必要なくなることを夢見て・・・
以上、ご精読ありがとうございました。