一晩中泣き叫ぶことができる赤ちゃんの声への機能回復。呼吸や横隔膜のことは自然に任せる

このブログでは何度か「人間は本来歌える生き物である」という、フレデリックフースラーの言葉を引用させてもらいました。

僕はこの言葉が大好きです。練習に行き詰まった時・ボイトレの停滞期に、頭の中でこの言葉を思い出すと勇気が湧いてきます!

そしてフースラーの言うところの「喉の機能回復」という言い回しは、「声は才能ではない」という重要な前提をボイトレに与えてくれます。この前提によって、僕たちトレーナーは初めて「誰でも、いつでも、声を変える事が出来ますよ!」と、自信を持って言えるのです。

もちろん「誰でも、いつでも・・・」を可能にするのは、間違いのない訓練方法があってこそであり、僕がその事に気付けた事は本当に幸運でした。長い努力を重ね、僕たちに本物の喉の「事実」を知らせてくれている方の存在を忘れてはいけません。上記のフレデリックフースラーの著書は、とても分かり辛い内容なので、ご興味ある方は武田梵声先生著「フースラーメソード入門」をお奨めします。フースラーの原著を分かり易く解説し、さらにフースラーが到達しなかった「非西洋の声の神秘」へも踏み込んだ名著です。

ボイトレとは「喉の機能回復」を目的とするものであるならば、僕たちボイトレ学習者(というより全ての大人)の声は、ただ「衰弱している」”だけ”であるといえます。

しかし、一般的なボイトレの解釈からいうと、この「機能回復」というキーワードはマイナーなものかもしれません。

多くの人は、歌の「上達」のためにボイトレ教室に通うでしょう。また「あいつは生まれつき喉が強いから・・・」といったセリフも日常的に聞かれます。世間的にはまだ「回復」より「上達」という解釈なのだと思います。

さて、今回は「喉の機能回復」「喉の衰弱」をキーワードに「赤ちゃんの泣き声」を絡めて、色々と書いてみたいと思います。

お付き合い下さい。


赤ちゃんの夜泣きは「一晩中」

赤ちゃんは長時間、とても強く大きな声で泣く事ができます。

ボイトレの世界でも「赤ちゃんの泣き声」「赤ちゃんの喉のスタミナ」については、色々と論じられているようです。

僕が10年以上前に独学用に使っていたボイトレ本でも、「赤ちゃんの声の不思議」について書かれていました。

ただし、この本で書かれていた事・その結論は、赤ちゃんの「呼吸・横隔膜の働かせ方」が”理想的”であるというものでした。つまり「シンガーは赤ちゃんの呼吸・横隔膜の働かせ方を学ぶべきである」という答えで締めくくっていました。実際は発声に関して、呼吸や横隔膜を意識する必要はありません。むしろ僕たちは、呼吸や横隔膜の事は”自然に任せて”「喉だけ」に着目してトレーニングを続けるべきです。

やはり、声に関心を持つ人は皆、赤ちゃんがなぜ一晩中泣き続ける事ができるのか?について、強い興味を抱いているようです。

一晩中歌える大人はいない

「昨晩、うちの赤ん坊が一晩中泣いて、寝不足になってしまったよ」・・・こんな会話は、それほど珍しいものではなく、日常至る所で聞く事が出来るでしょう。

では「昨日、一晩中カラオケで歌っていたよ!」・・・こんなセリフを聞いたら、どう感じるでしょうか?「えっ?喉は大丈夫かい」もしくは「ほんまかいな!」と感じるでしょう。

つまり、僕たちの頭の中には「赤ちゃんは一晩中叫べるけれど、大人は一晩中歌えるはずはない」という認識・先入観があるという事です。

しかもそれは、ほとんどの場合「事実」です。

つまり「赤ちゃんより、大人の喉は弱い」のです。

大人が赤ちゃんより劣るのは「喉」だけ

では、人間の体の他の部分についてはどうでしょうか?

「手」「足」「頭」・・・その他、どの部位でも「大人が赤ちゃんより劣っている」という事は、ほぼないはずです。

例えば、ピアノは「手の指」を使って演奏しますが、生まれたての赤ちゃんには不可能でしょう。また、赤ちゃんが「足」を使ってサッカーをする事も、同様に難しいと思います。

そう考えると「喉」だけが特別な器官であるように思えてきます。

赤ちゃんは「泣く事」によって、空腹・不快感・痛みなどを伝えようとします。赤ちゃんにとって「泣く事」は、自分の身を助けてもらうために必要な事なのです。

つまり、赤ちゃんにとって「泣けない=喉が弱い」ことは、何にも増して「命取り」になることなのです。

上記から、こういう仮説を立ててみました

人間にとって、生まれてすぐ必要な事は「泣く事」である。赤ん坊が「泣けない」となると危険を周りに知らせる事が出来ないので、最悪の場合「命取り」になる。だから、全ての機能の中で「喉だけが、真っ先に100%の性能を発揮できる」ように、人間は作られている。

仮に、人間の赤ん坊が「生まれてすぐ走る事が出来る」なら、「喉が真っ先に100%の性能を発揮する」必要はないのかもしれません。「走って逃げる事」で危険から遠ざかる事が出来るからです。

 

赤ちゃんの喉に「機能回復させる」

上記の事から・・・

  1. 人間の喉は生まれた時から100%の性能を発揮できる
  2. 成長とともに、手や足その他の部位も本来の性能を発揮できる状態に育ってくる
  3. 他の部位が本来の力を発揮してくるに伴って、喉の機能は人間の日常の行動の中で赤ん坊の頃の重要性を失ってくる
  4. 喉の機能はどんどん衰弱してしまう

「喉の衰弱」は、このような経過をたどっているように思います。

僕たちがボイストレーニングによって目指している「喉の機能回復」とは、「赤ちゃんの頃、100%の性能を発揮できていた時代」にまでさかのぼる事ではないでしょうか?

 

まとめ

人間のあらゆる機能は、それが必要とされる順番で能力を発揮してくる、と考えると、「喉の機能」こそ(生命維持の目的から)その一番手となります。

生まれてすぐ、生命の危険を知らせるために必要な事は、何にも増して「強く・長く泣く事」だからです。

そして、僕たちが「喉の機能回復」によって目指すゴールは、「一晩中泣いていられる」赤ちゃんの喉であり、それこそが人間の喉が100%の能力を発揮している状態なのではないでしょうか?

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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