心理学用語で「主張的セルフハンディキャッピング」という言葉があります。
「主張的セルフハンディキャッピング」とは、予防的な発言をして周囲の友人などに広める行為。失敗したときに、周囲の評価を下げないようにし、成功した時はより周囲の評価を高めるための事前工作として、周囲の人からの防御のためにする。
・・・僕には身に覚えがあります。
僕は学生の頃からこの「主張的セルフハンディキャッピング」を頻繁にやっていたように思います。
例えばテストの直前には「僕、全然勉強出来てないねん」・・・
そして今の仕事、つまりキャバンクラブ大阪を始めとするシンガーとしての立場になっても「今日は調子が悪いねん」・・・
「主張的セルフハンディキャッピング」という言葉を知ってから、過去の自分を思い出して恥ずかしい気持ちになりました。
そして、次の一文は衝撃的であり、自分の「主張的セルフハンディキャッピング体質」を改めるきっかけにしたいと思います。
セルフハンディキャッピングをする人はしない人に比べて成功の確率が下がってしまうという事が分かっています。
レッスンでも「主張的セルフハンディキャッピング」はしない方がいい
さすがにボイストレーナーとしての立場では主張的セルフハンディキャッピングする事は少ないとは思いますが・・・
トレーナーが「僕、今日は調子が出ないねん」と、デモンストレーションを渋るなんていけませんね!
そもそも、発声のデモンストレーションと実際の歌では、その難易度は正に「雲泥の差」です。仮に酷い風邪で声が上手く出ない時でもデモンストレーションなら可能でしょうが、歌うとなると曲目を限定しないと難しいかもしれません。
レッスンにおいては、生徒さんも「主張的セルフハンディキャッピング」は、もちろんしない方が良いと思います。
ボイストレーナーとて人間ですので、生徒さんから「今日、私調子が悪いので、上手く発声出来ないと思います」と気勢を削がれては、レッスンの熱意に影響するかもしれません。
やはり、嘘でも「絶好調です!早く声を聴いてもらいたくてウズウズしています!」と言われた方が「よーし!受けて立とうじゃないか!」と熱くなるものです。
発表の場でも気を付けたい
さて、少し話が変わりますが、僕が30代の頃にギターを教わっていた先生からこんな言葉を度々言われていました。
「発表会やライブではネガティブなМCはしないように!」と。
僕が通っていたギター教室では、一年に一回、定期演奏会が開催されていました。
この定期演奏会では、自分の出番になると、曲の演奏を始める前に「自己紹介」「曲の紹介」「どんな演奏をしたいか」などを、演奏者自身がМCで説明する、という方式をとっていました。
その時のМCでネガティブな内容を話さないように注意していました。
例えば、究極の「ネガティブМC」は、こうなります・・・
こんにちは、石橋謙一郎と申します。超初心者です。今日演奏する曲はとりわけ好きな曲という事はないのですが、僕に弾ける曲はこれしかないので選びました。きっと何度も間違うし、下手をすると途中で演奏を止めてしまうかもしれませんが、取り敢えず弾かせて頂きます。苦痛でしょうが、我慢して聴いて下さい。
これでは演奏会自体が憂鬱で薄暗いものになってしまいそうで、誰も喜ぶ人はいないでしょう。
では、こんな風にМCをされたら・・・
こんにちは、石橋謙一郎と申します!ギターを始めたばかりで毎日ワクワクしながら練習しています。今日は僕が絶対弾きたい、大好きな曲を選びました。練習の成果を発揮できるように思い切って演奏したいと思います。ぜひ楽しんでください!
おお!よっしゃ、聴いたろうやないか!頑張れ!という気になるでしょう。
演奏会は活力あるものになり、来てくれた人を幸せに出来そうです!
上記のネガティブなМCは、そのまま「主張的セルフハンディキャッピングしている事」に等しいです。
つまり、演奏に失敗しても「初心者だから」「好きな曲ではないから」「間違えるって言ったでしょう?」と、演奏前から言い訳をたくさん作っているのです。
そして主張的セルフハンディキャッピングの原理からすると、この人は「失敗する確率が高い」事になります。
主張的アドバンテージング
発声に関しては「声が出ない」というイメージを決して持ってはいけない!と、何度か書いてきました。
「メンタルコンセプト」という考えから「喉はイメージした方向に自然に調整される」事が分かっているからです。
「声が出ない」イメージを持つことは、わざわざ「声を出しにくく」しているようなものです。
つまり「声が出ている状態」をイメージする事が「実際に声が出る」事の大きな助けになるのです。
主張的セルフハンディキャッピングは「メンタルコンセプト」とは少し違いますが、「失敗する確率が高くなる」という点では同じです。
皆さんも僕もセルフハンディキャッピングなどせずに、虚勢でもカラ元気でも何でもいいので、やる前からたくさん言い訳を並べる事はやめた方が良いですね!
特にライブや発表会は、お客さんを楽しませる事が全てです。
そこにアマもプロも関係ありません。
マイナスな言葉・後ろ向きな言葉を一切並べず、お客さんを笑顔にする・・・相応の準備をしていれば、誰も言い訳を並べる必要はありません。
そこで、こんな言葉を作ってみました・・・
「主張的セルフアドバンテージング」!!!
「主張的セルフアドバンテージング」とは、前向きな発言をして周囲の友人などに広める行為。とにかくプラスの発言・プラスの思考をして、現実の課題を克服しようとする事。「主張的セルフアドバンテージング」する事によって、課題が克服された例もたくさんある。
※造語なので英語としての整合性や意味付けの点はご容赦下さい。
以上、ご精読ありがとうございました。