発声と姿勢は関係ありません。猫背でも、顎や肩が上がっても大丈夫です

この記事は2018年3月20日に公開したものを2018年6月12日に追記・再編集したものです。

良い声を出す為には、足を肩幅で開いて、猫背にならず、顎を引いて・・・

良い発声は良い姿勢から!肩が上がったり、ましてや猫背なんかでは声なんて出ませんよ!

果たして本当にそうでしょうか?

今回はそんな記事内容となります。どうぞお付き合いください。


声と姿勢~脈々と伝わる根性論の欠片

僕自身、ボイトレ本での独習や過去に受けたトレーナーさんからのレッスンでは必ず姿勢について触れられました。

内容はだいたいご想像の通りです。

そして、姿勢の改善が本質的に声の問題を解決する事はありません。

歌う姿勢云々についてはそれこそ幼稚園のお遊戯会~小学校の合唱大会の頃から、一種の既成概念のように、発声の基本であり最も重要な事の一つだと学んできました。

合唱の練習の時間、声が出ていない生徒に対して「もっと下半身で踏ん張って!背筋を伸ばして!」的な指導がなされていたのではないでしょうか?(もちろん武道的・精神鍛錬という意味では間違いではないとは思いますが)

ボイストレーニングとまでは言わずとも、社会の中でのこの「姿勢を正して腹から声出せ!」的な発想は、幼少の頃からの諸所の場面での間違った発声指導の積み重ねの産物です。

もしくは武道精神に結びつくような、いわば「根性論」と「発声のしくみ」をごちゃ混ぜにしているようなものです。

そして、それが「発声とはこうあるべき」というような既成概念を作ってしまい、そのままボイストレーニングの現場に持ち込まれています。

 

良い声は良い姿勢から!は本当でしょうか?

姿勢の縛りが強すぎます

ボイトレで教わった「所謂正しい姿勢」は、実際にライブやカラオケでどれほど役にたつか?シンプルに想像してみます。

レッスンで教わる「厳格で厳しく妥協ない身動きの取れないような姿勢で、しかもその姿勢を曲の間中ずっと維持したまま」何曲も歌う事なんて不可能なはずです。

もし、同時に「リラックスして」「腹式呼吸を意識して」等を同時に遂行するとなれば、超人的な身体と精神の能力が必要だと思います。

歌を歌うという事は、それ自体が物凄く難しいことです。

そして、多くの繊細なコントロールを必要とします。他の要素は出来るだけ自動化して自然でないといけません。

 

歌が上手い人の歌う姿を想像してみます

憧れの歌手や自分の周りで歌が上手い人はどのような姿勢で歌っているでしょうか?

ライブ映像を観て「さすが良い声の歌手は姿勢も良いよなあ。僕も姿勢を学ばなきゃ!」と真っ先に思うでしょうか?

カラオケで凄く歌の上手い人は、姿勢を整えてから歌っているでしょうか?

むしろ足を組んでソファに座ったまま、誰よりもラフな姿勢で歌っていないでしょうか?

こんなことを考えていると、少なくとも「姿勢が発声の基本である」とは言えないと思います。

 

予期せず出す大声・赤ちゃんの泣き声・走り回る子供の叫び声について考える

こたつでみかんを食べてテレビを見ていた。ふと横を見ると子供がみかんの皮を口いっぱいに頬張っていた。

「そんなん食べたらあかん!早く口から出しなさい」と叫ぶ声は、正しい姿勢から生まれているでしょうか?

こういう声は、瞬間的にではあるにせよ、喉のポテンシャルの大きな現れです。

長い時間泣き続けても枯れない赤ん坊は、まだ座ることさえ出来ないのではないでしょうか?

「理想的な発声は赤ん坊に学べ」とはよく言いますが、姿勢を重視する事とは大きく矛盾します。

公園で走り回る子供は猫背にならぬように注意して、顎を引いて、背筋を伸ばして叫んでいるのでしょうか?

あの大きな声を思い出してください。

少なくとも姿勢と声量は関係がなさそうです。

少し脱線しますが、車の中で歌っている人を見かけます。

信号待ちの時なんかに横の車を見ると、とても気持ち良さげに歌っていらっしゃいます。

あんな状態の時にこそ、その人の現状の一番良い声が出ているのだと思います。

もちろん良い姿勢ではありませんし、体を使って歌ってなんかいませんね。

 

楽器≠身体、楽器=喉

もちろん、背筋を伸ばしたり下半身を安定させたりする事が発声の助けになる事は無いとは言えませんが、それは「歌う前にちょっと散歩した」「歌う前に風呂に入って血行を良くした」程度の僅かな助けに過ぎません。

これらの事は、「喉」がより働きやすい環境を整えているに過ぎません。

「喉」が上手く働くのならば、たとえ寝そべっていても良い声が出ます。

僕のレッスンでは生徒さんには自由な姿勢で発声してもらっています。

トレーナーの目の前に背筋を真っすぐ伸ばして立って少し体を硬直させて口の開き方を気にしながら声を出す、というような事はいたしません。

これではがんじがらめで、未知の声が出る機会を失います。

ぜひ、「声と喉」にのみ、神経を尖らせてもらいたいです。

「根性論」や「姿勢主義」がボイストレーニングの現場に持ち込まれると、「声と喉」への注力が二の次になってしまいます。

姿勢についてのアドバイスでよく言われるところの「まずは楽器であるあなたの“身体”を最適な状態に保ち・・・」ではありません。

最適な状態に保つのは、いつも「喉」だけです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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