皆さん、ショッピングモールなどでの店員さんの呼び込みの声「いらっしゃいませ~」を聞かれた事があると思います。
業種としては洋服屋さんが多いでしょうか。
語尾を長く伸ばして、しゃくりあげるような、かなり独特なイントネーションのですね。
文字で表すと「いらっしゃいませ~~~↑」といった感じでしょうか?
試しにやってみるとこんな感じでしょうか?
とにかく、あの独特な言い回しにはボイストレーニング的秘密が隠されいると思います。
今回はそんな内容となります。
お付き合い下さい。
違和感のある音質とイントネーション→目立つ!
あの呼び込み声、シンプルに「目立って・際立って」いますね。
あの巨大なショッピングモールの中で、あの雑踏の中で、一層際立って聴こえています。
そして、僕みたいに「なぜ、あんな変なイントネーションにするんだろう?」と不思議に思う人たちが少なからずいる。
これらの事は、あの呼び込み声が「効果を上げている・目的を達している」証明ですね。
店員さんたちは「音楽的に美しい表現の呼び込み声」を出したい訳ではなく、「お客さんにお店に入ってきてもらう」事のみが目的なのですから。
つまり、あの呼び込み声は「ユニーク」なんです。
悪い言い方をすると「珍妙」なんです。
でも、それで良いんですね!呼び込みなんですから。
あの声が「健康的かつ際立って聞こえる」事の二つの理由
喉の位置が高い
他の記事でも何度か触れている事ですが「喉の位置が高い声」は、耐久力のある発声にとってとても重要な事です。
そして「喉の位置が高い声」の音色的な特徴は「良く通る・キンキンしている」事です。
この音質は雑踏の中でも良く響き、埋もれにくいです。
例えば、こういう地声系の「喉の位置の低い声」だと、すぐに疲れてしまう上に、声の通りが悪く周りの音に埋もれてしまうでしょう。↓
裏声に逃がしている
語尾をしゃくり上げる事によって、毎回毎回「裏声の領域に意図的に入っていく」事をやっています。
これは、いわば無意識にミックスボイスを作り続けているようなもの、つまり裏声のサポートが働いている状態なので、喉への負担は少なくなります。
「ヒーカップ唱法」という歌唱法があります。これは、この呼び込み声と同じように「語尾をしゃくり上げて」裏声のサポートを使いながら歌っていきます。この「ヒーカップ唱法」、その歌手の個性や特徴としても認識され、また声の安全性においても優れています。つまりは「一石二鳥」なのです。
「しゃくり上げる」事をしなくても、語尾が裏声の領域に入ってさえいけば同じ効果が得られるので、例えばこれでも良い訳です↓
※まあ、音程を上げた方が楽ですね。これはメッサディボーチェという訓練の変形です。洋服売るのに、いちいちこんな事やってられません。
歪み成分は無い
「喉の位置が高い」「裏声に逃がしている」ことの他にもう一つ、声の安全性を高め、なおかつ声量を確保してくれるもの。
それは「歪み(ガム)」です。
ガム声、所謂「ダミ声」は長時間の発声でも疲れず、また大きな声量を生みます。
しかし、店員さんの呼び込み声に「歪み(ガム)」要素は全くありません。
これは、要するに販売しているもの・場所のマナーによるものでしょう。
商店街の魚屋さんや八百屋さん(あくまで僕が持っているイメージです!)のように、こんな呼び込み声は似つかわしくないとの判断でしょう↓
まとめ
こうやって分析していくと、店員さんの呼び込み声にもやっぱり必然的な理由がありました。
その秘密はやっぱり・・・
- 喉の位置
- 裏声のサポート
誰が考え出した方法かは分かりませんが、上手く考えてあると思います。
上で触れた「ヒーカップ唱法」が個性と安全性を兼ね備えたものならば、まさにこの呼び込み声も同じく「一石二鳥」です。
雑踏の中でも際立っていて、しかも安全です。
以上、ご精読ありがとうございました。