忘れががちになる戒め「急がば回れ」。ボイトレの大通りを走ろう。不調な時、不安な時にこそ思い出したい言葉。

僕が住んでいる京都は世界有数の観光都市です。街には国内外からの旅行者の方々がたくさんお見えになり、交通機関は年がら年中込み合っている印象です。

大阪へ仕事で出かけると渋滞に巻き込まれることがありますが、渋滞の深刻さでは京都も負けていないかもしれません。根がせっかちな僕は、渋滞に巻き込まれるとつい脇道に逸れてみたくなります。京都市内の道路は”碁盤の目”のような作りになっているので、脇道に逸れても東西南北を見失うことはまずありません。運転中、前方を見て混雑を予感するとつい細い道に入って渋滞を避けようと試みますが・・・これはほとんどが失敗に終わります。やっぱり結局大きな道を予定通り走るほうが早く目的地に到着します。脇道に逸れてみたものの、再び大通りに戻ると・・・さっきまで後方にいた車の後ろを自分が追いかけている・・・そんな情けないことになったりします。

そんな時、こんな戒めがあったことを思い出します。

急がば回れ

早く着こうと思うなら、危険な近道より遠くても安全確実な方法をとったほうが早く目的を達することができるというたとえ。

正にそのとおり!事故の危険・・・慣れない道・・・かえって遅くなる・・・脇道に逸れるとロクなことはありません。そういえば、僕が前職である印刷の仕事をしていた時の仲間に「お客さんとの打ち合わせに遅れそうな時でも、絶対近道を探したり焦ったりしてはいけない」と言っていた人がいました・・・彼は「急がば回れ」の意味をよく理解していた人なのでしょう。

さて、石橋ボイストレーニング教室のサブタイトルには「急がば回れ」という言葉を添付しています。「急がば回れ」は、僕自身がボイストレーニングを何年もやってきて、また職業歌手として何年もステージで歌ってきて感じた「とにかくインスタントに即効的に声の問題を解決する手段はない」という強い確信を表すのに一番ピッタリくる言葉でした。

けれど、僕自身この「急がば回れ」の戒めを守れていないと感じる事も多いです。

特に喉の調子が悪い時、上手く歌えなかったライブの後などは脇道に逸れたくなることが多々あります。声区分離の重要性を忘れ、とにかく「ミックスしよう」と躍起になり・・・何よりも僕がまだ”ボイトレ道半ば”であることを忘れてしまっています。

「歌声を早く何とかしたい」という欲求はとても大きなものであり、上手くいかなくて心が折れそうな時・・・早く調子を取り戻したくて焦る気持ちになっている時なんかに、ふと脇道に逸れたい衝動に抗えなくなりそうな時もあります。

ボイストレーニングの歴史上、「歌声を早く何とかしたい」という欲求を叶えるための即効性のあるボイトレ方法が考え出された背景には(もちろんそんなボイトレ方法は考えだされませんでしたが)産業革命の影響があるようです。(武田梵声先生の記述より)

何もかもが先進的な工場の中で「とにかく早く量産」されることこそが正義とされていた時代の負の影響がボイトレの世界にまで及んでいたのですね。人間の欲望は何と深いことでしょうか。また反面、放っておくと人間の衝動は常に「とにかく早く量産」という方向へ向かってしまうことは避けられないのだろうと思います。僕自身も、自分の歌声に関してそんな衝動を抑えられない時があります。

そんな時、とにかく我にかえり「急がば回れ」の戒めをもう一度思い出せればと思います。せっかく自分のホームページのキャッチコピーにしているのですから・・・僕自身がそれを守れないでどうしますか!

声の完成までは6~10年・・・喉とは植物のようなもの、種を撒き水を与える・・・僕たちの脇道に逸れたくなる焦る気持ちを、再び大通りに戻してくれる言葉はたくさんあります。

そんな言葉を思い出しながら、日々ボイトレの大通りを悠然と歩きたいものです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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