歌は立って歌うもの? 座っても寝そべっても、どんな大勢でも歌えるはずです

「立って歌った方が声がよく出る」「座っていると声が出しにくい」

また「歌は立って歌うものだ!」という人もいます。

僕はその意見には疑問を持ちます。

発声は喉の仕事です。

座っていても、歩きながらでも、そして究極的には寝そべっていても、立っている時と変わらない発声が可能であり、またそのような状態を目指す事が真のボイストレーニングだとも思っています。

僕のレッスンでは、生徒さんと僕は共に座って発声するようにしています。僕自身が「姿勢を正さないで」デモンストレーションする様子も見てもらう為です。

今回は、こんな内容で書き進めてみたいと思います。

お付き合いください。


「立たないと歌えない」は先入観です

僕もかつては「立たないと良い声が出ない」と思い込んでいて、ライブはもちろんカラオケでも、それこそ友人の前で歌って見せる時も、いつも立ち上がって姿勢を整えてから歌っていました。

しかし、これは完全に誤りであり、先入観からくる思い込みです。

例えば「アンプラグド」「アコースティック」と呼ばれるライブの形態では、シンガーは座って歌っている事も多いと思います。このシンガーたちがこういうライブ形態の時には、難易度の低い歌ばかり選んでいるでしょうか?また、アコースティックライブでは途端にいつもと違う魅力のない声で歌っているでしょうか?・・・決してそんな事はないはずです。

皆さんの周りで歌の上手い人の事を思い出してください。その人はカラオケでは、いつも立って歌っているでしょうか?・・・そういう人ほど、むしろソファに腰かけたまま、とてもリラックスした様子で歌ってはいないでしょうか?

 

「立たないと歌えない」のなら、喉意外が発声に加担しています

「いや、本当に立って歌うと良い声が出るんだよ!」という人、立った時と立たない時とで声のトーンや声量に明らかに差がある人は、「喉以外が発声に加担している」ともいえます。

「お腹を固めないと歌えない」「強すぎる息を使って発声している」・・・

こんな場合は確かに「立つ」と「立たない」とでは声の調子は変わるでしょう。

そんな人は次の点をチェックしてみて下さい。

  • 低音~中音域は充実した声を出せるが、高音域は苦しくフラットしてしまう。
  • 「声量があるね」と、よく言われる。
  • 高音域の母音を正しく発声出来ない。(例えば「ア」を「オ」っぽくしないと上手く歌えない)
  • 数曲歌っただけで喉がヒリヒリする。歌えば歌う程、段々声の調子が悪くなってくる。
  • 歌っているとすぐに喉が渇く。

上記のような人は、おそらく「強い息」「体や喉の緊張」など、良くない発声が癖づいてしまっています。

つまり「立たないと良い声が出ない」という事は、「立った姿勢の時だけ可能な事(息を強くする・お腹を固める等)」の助けを借りて歌っている事になります。

つまり健康的な発声の原点である「喉に100%の仕事を委ねる」事に、大きく矛盾しています。

「やたらと大きく太いがフラットしがちな高い声」「隣の部屋まで聴こえるような野太い声」・・・こういった人は声帯を常に危険にさらしていることになります。必要以上の息を声帯に当て続けているため、喉がすぐに痛くなったり声が出なくなったりします。カラオケの次の日には声が掠れて「スカスカ」になる人は要注意です。

発声を「息を強くすること」に依存させていると、常に好不調の大きな波の中に身をおかなければなりません。「息を強く出せるような全身状態の時」また「声帯がその強い息に負けないくらい無傷な時」という、相当限定された状態の時にしか調子よく歌う事は出来ません。また音程(特に高音)をフィットさせる手段は「強い息」しかないので、歌の後半はどんどんフラットしてしまいます。

 

究極的には「寝そべっても歌えます」

立っていても座っていても、あるいは寝そべっていても歌える・・・究極的な「喉だけによる発声」です。

もちろん発声には「最低限の呼吸」は必要なので、呼吸もままならないような押し潰されたような姿勢では歌う事は難しいでしょう。

しかし、普通に呼吸が出来ていて喉をコントロールできる状態や姿勢ならば歌う事は可能なはずであり、また可能な方向でボイトレを進めるべきです。

ミュージカルなどでは椅子に座るシーン、床に足を投げ出す場面、そして時には「寝そべって演技」しなければならない事もあるはずです。こんな状況の時に「いつもと調子の違う、弱々しい声」しか出せないとなると・・・このジャンルは基本的にはマイクを使わないので、ホール全体に響く声を「どんな体勢でも」出せないといけません。

 

まとめ

立って姿勢を正して歌う・・・確かに一般的な「良い声」のイメージには合致します。

「立って歌う事」が、上手く歌える!というメンタル面でのサポートだけなら良いのですが、発声に加担する諸所の動作を含むとなると問題です。

上に書いたような「強すぎる息」等を連想させる声の現れがある場合は、むしろ「立って歌う事が喉の機能を阻害している」ともいえます。

ぜひ、どんな体勢でも歌える事が「正解」であるという考えで、ボイトレに励んでいただきたいと思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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