歌声の意外性は聴く人に強烈な印象を与える。相反する声を操る能力が、喉には備わっている。

いよいよ暑くなってきました。日中は30℃に迫る日もあり、早くも水分補給を気にかける季節になりました。

ドラッグストアに立ち寄ると「熱中症対策コーナー」のような広いスペースが設けられています。そこには各種ドリンクや塩分チャージキャンディー、その他便利グッズなどがこれでもか!とばかりに並べられています。

うーむ、令和へと改元された今思い返してみると、昭和〜平成の初期にはこのような光景は見られませんでした。特に僕たちが10代を過ごした昭和末期には熱中症という言葉すらなかったように思います。それだけ地球は暑くなったということなのでしょうね、来たる夏の暑さに一抹の不安が宿ります。

 

先日、ある人と話をしていた時のこと、お互いの第一印象の話題になりました。その人は僕に対して「何があっても怒らない人、ゆったりと構えて物事を考えられる人」という第一印象を持っていたようです。うん、そのイメージ、嫌な気はしません。もし「気の短そうな人」という印象を与えていたとしたら、ボイストレーナーとしての僕は先行きを大いに懸念しなければいけません。事実、自分でも”僕は怒りっぽい”とは思っていませんが。

けれど「ゆったりと構えて物事を考えられる人」という印象は、実際の僕の性質からはかなり外れています。僕はとても”せっかち”な人間であり、家族や近しい知人には度々そのことで注意を受けます。「もっとのんびり考えたらどうだ」「おまえと居ると、こっちまでせかせか動かなくちゃならん気分になる」と。

僕は「ああ、よかった」と思いました。やっぱり”せっかちな人”よりも”ゆったりと構える人”という第一印象を持たれる方が、ボイストレーナーとしての仕事には有益だと思うからです。僕は新規の生徒さん募集を、ネットからの申し込みにほぼ頼っています。やっぱり、初対面で「この先生、せっかちそう」とは思われたくないです。

さて、僕は歌声に関しては最低でも二つのカラーの声を操れるようになるべきだと考えています。シンプルにいうと「荒々しい声」と「やさしい声」です。ハードなロック曲を歌う為の歪んだ野性的な声・・・甘いバラードを歌う為の優しく包み込むような声・・・そんな相反する二つの歌声を、一つのライブの中でお客さんに聴かせることができたなら・・・そのライブは変化に富み、色彩豊かで、深い味わいのものとなるはずです。そんな対極的な二つの声色を”意外性”という調味料を加えた上で聴かせることができたなら、お客さんが受け取る印象はより強烈なものになるはずです。

例えば、こんなライブ構成はどうでしょうか?

シンガーがステージに上がってくる、優し気に微笑んでいます。とても大らかな様子でライブの紹介を始めます。その話し声は・・・やっぱりソフトで甘い印象です。さあ、いよいよライブが始まり、そのシンガーが歌います・・・彼の外見的な印象のとおり、バラードにピッタリの甘い声です。

何曲か歌ったあと、そのシンガーがМCを始めました。「次の曲は少しハードな曲です、聴いてください」・・・やおら、そのシンガーは荒々しく歪んだ声で歌い始めました!お客さんはビックリして聴いています。彼の声に対する第一印象は覆り、”甘く優しいばかりじゃない”そのシンガーの歌声のバリエーションに圧倒されています。

音楽において”意外性”は、とても大切なスパイスです。第一印象を覆す・・・お客さんをビックリさせる構成や曲順を工夫することによって、シンガーの歌声をより強烈な印象に聴かせることは可能だと思います。

また、僕たちの喉は意外性を演出するための、相反する歌声を操るだけの能力を備えています。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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