テンポに関する再考。やっぱり走りがちなる、緊張に逆らうようにゆったりと歌い始める、テンポを飼いならす。

僕は数か月に一度、大阪府のとあるフレンチレストランで歌う機会があります。(いつも僕と仲間のシンガーで、デュオライブを行なっています)

といっても、そんなに堅苦しいお店ではなくお箸で食べるフランス料理のお店なので”レストラン”というよりは”ビストロ”という区分になる、オーナーの心づくしの料理が味わえるこじんまりとした素敵なお店です。(僕たち出演者にとってはライブ終了後の”まかない”の時間も楽しみの一つです。何しろ”フレンチのまかない”を出してくれるお店なんてそうそうありませんから!)

お客さんは食事を召し上がられ一息つかれたところで、いよいよライブスタートとなるわけですが・・・やはり普通のライブハウスとは違います、僕はいつも独特の緊張感を感じながら歌っています。その”独特さ”にはいろいろありまして、まず照明が煌々と点いているので、何というか・・・自分の全てが白日の下に晒されている気分になります。(通常のライブハウスは、決まって少々薄暗いものです) そして、お客さんの僕たちの歌への集中度もひと際高いように感じます。僕たちが普段出演しているライブでのお客さんはドリンクを飲みながら、また料理を召し上がりながら演奏を楽しまれますので、僕たちから目が離れる瞬間が断続的に訪れるわけですが、この”ビストロ”ではほぼ全員、全編ライブを直視されています。(それほど大きくないお店なので、よそ見もしにくいとは思います)

さて、そんな”ビストロ”でのライブ、僕は毎度楽しみにしているのですが、いつも演奏が落ち着かずフワフワした印象になることも多く、録音を聴き返してみては反省の極みなわけですが・・・

 

緊張=鼓動・呼吸はテンポに現れる

録音を聴いてまず気付くことは「テンポが走っている」という事実です。どの曲も何割か増しでテンポアップしている印象です。”テンポアップ”というと美しく聞こえますが、これは褒められたことではありません。ただ単に焦っているのです。自分では正規のテンポで歌っているつもりが「テンポをコントロールできていない」、そんな状態に陥っているのです。

”ビストロ”のステージでの僕の鼓動・呼吸は、上述したような”独特の緊張”のために乱れているはずです。そして、その鼓動・呼吸をそのまま歌に持ち込んでいたのではテンポが走るのも仕方のないことですね。

曲の印象を決めるとても大切な要素はテンポ、そしてそのテンポの中に内包されたニュアンスや印象です。

テンポを少し変えるだけで、シンガーは自分の歌のニュアンスを大きく変えることを迫られます。またそのテンポに必要なニュアンスを見つけ出し、歌声として表に出すこともシンガーの大切な仕事であると、僕は考えています。

モーツァルトの有名な言葉に「音楽においてもっとも不可欠でもっとも難しく、主要な事柄はテンポだ。」というものがあります。

 

鼓動・呼吸に逆らうように歌い始めることが必要

「照明が煌々と点いている」「お客さんが直視している」などというシンガーの都合がテンポに影響を与え、曲が求めているニュアンスから逸脱してしまうことがないように努めなければいけません。

もしシンガーが緊張していて鼓動が乱れ呼吸が荒くなっているのなら、それに逆らってでも求めているテンポを守らなければいけないのですが・・・よく語られるセリフに「ライブとは”生き物”なのだから、今の呼吸・今の感情で歌えば良いのだ」というものがありますが、それも曲のニュアンスが守られることが前提であり、ただ好きに歌えば良いというものではないでしょう。

このあたり、難しいコントロールですね。好き勝手なテンポ・感情で歌って良いはずはなく、またメトロノーム通りの杓子定規でも音楽が生きたものになりません。その曲が求めているニュアンスを決して逸脱することなく、その中で感情の高ぶりをコントロールしていく、その節度が大切なのでしょう。それこそがシンガーの美意識であるとも思います。

 

さて最後に、その日の”ビストロ”で歌ったビートルズの”イエスタデイ”を載せてみたいと思います。この曲はこの日歌った歌の中ではテンポ的にもマシに聴こえます。けれど、僕は「今日のイエスタデイは、とてもたっぷりとマッタリと歌うぞ!(もちろん、曲のニュアンスが守られるギリギリの線で)」と考えていました。なのでやっぱりその場の都合で”テンポが歪められた”ことは否めません。

シンガーの動揺や緊張に噛みつき、勝手に姿を変えてしまう猛獣=テンポ・・・”飼いならす”までには、僕自身まだまだ時間がかかりそうです。

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以上、ご精読ありがとうございました。

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