「気楽に一曲、歌ってみました」カテゴリーでは、その名の通り”気楽に歌った歌唱サンプル”を載せていきたいと考えています。これまでの「歌唱サンプル」はどちらかといえば”頑張って歌った”という印象の歌が多かったのですが、こちらのカテゴリーは、僕が長くレパートリーにしている曲や歌いたい曲、それも割合”気楽に歌える”曲を取り上げていきたいと思います。
なので必ずしも”ボイトレ的分析”を伴わないものになると思いますが、これを読んでくれた人・聴いてくれた人が「ああ、私の知らないこんな素敵な曲があるんだ!」と、その曲のオリジナルバージョンに興味を持っていただければ幸甚です。
僕自身の趣旨としても、とにかく”気楽に”歌うことを心掛けたいと思います。録り直しも出来るだけ少なくしたいと考えていますので「音程、外れてるやないか!」「リズム、走ってるやん!」といったお叱りも出てくるとは思いますが、そのあたりご容赦くださいませ。
さて、今回はキンクスの「This time tomorrow」を歌ってみました。
明日、僕らは何を知ることになるのだろう?
そう、僕らはここでじっとしたまま、飛行機の中で映画を見ているのだろうか?
太陽の熱さを背中に感じ、僕は悲しげに去って行く雲を眺めている
下界7マイルに世界が見えるけど、まったくちっぽけな世界だ
僕は自分がどこに行くのかを知らないし、知りたくない
下界が僕を見上げている気がするんだ
奇才・レイデイビスを擁するキンクスの1970年の曲「This time tomorrow」は、成功することを夢見て飛行機で旅立つ若者が主人公です。こういう気持ち、よく分かりますよね!期待と不安が半分半分・・・いや、ちょっと不安の方が大きいかな?自分はこれからどんな世界に出て行くのか、そこには何が待っているのか・・・歌詞からはそんな揺れ動く主人公の心情がとてもよく伝わってきます。曲も少し物悲し気で素晴らしいです。ギターの伴奏は”かき鳴らしている”という表現がぴったりの荒々しいものですが、メロディーからはホームシック的な深い哀愁が感じられます。
リードボーカルもレイデイビス自身ですが、レイの歌はお世辞にも上手いとは言えません。むしろ彼はアカデミックな声の訓練に自ら背を向け、ボイトレに精進する人たちをあざ笑うかのような”ヘタウマだけど最高に魅力的なボーカル”を惜しみなく披露してくれます。
さて、小学生のころ僕はボーイスカウトに入っていましたが、夏休みのキャンプの前日の夜はまさに「This time tomorrow」の主人公のような気分でした。当時の僕にとって未知らぬ土地での三泊四日のキャンプは”大冒険”でした。「明日の今頃、僕はどこで何をしているのだろう」・・・そんな思いで布団に潜り込んでいたはずです。
レイデイビスは詩人としても才能豊かであると言われています。なるほど・・・「This time tomorrow」の主人公の心情に、僕は自分の記憶の一場面をピッタリと重ね合わせることができます。
以上、ご精読ありがとうございました。