全ての声は喉で出すもの ~腹式呼吸は必要ない、喉だけに仕事をさせる~

僕がブログの中で度々書いてきたフレーズに「声は、ほぼ100%喉の仕事です」というものがあります。

ボイストレーニングってどういうもの?と尋ねると、「腹式呼吸」「腹筋を鍛える」「お腹から声を出す」「ストレッチをする」・・・といった「喉以外を鍛える」事をしなければいけない、というイメージを持たれる人も多いと思います。

僕自身も、かつては上記のイメージを強く持っており「腹式呼吸」を練習して、歌う前にジョギングするという日々を過ごしてきました。

でも、今はそのような「喉以外を鍛える」練習は意味がないどころか、長い目で見ると弊害ですらあるという事も、僕は身をもって知っています。

歌う前にストレッチやジョギングすると、歌い易くなる事はあると思います。これは当たり前の事です。経理の仕事をしている人でも朝ジョギングやストレッチをしてから出社すると頭が冴えて仕事ははかどるでしょう。発表会やライブ前に軽い運動をして頭をすっきりさせる事は、上手く歌うために多少の効果があるとは思いますが、普段のボイストレーニングにジョギングやストレッチを取り入れる事はナンセンスです。これらに喉を鍛える効果はまるでありません。

始めてレッスンをさせてもらう人の中には、まず最初に「足を肩幅に広げて、胸を張って、少し上方を見る」という風に姿勢を整えてから発声しようとする人がいらっしゃいます。

こういう人を見ると意識的であれ無意識であれ、「良い声=姿勢を正す」という概念・先入観が頭の中に出来上がっていて、まずはその先入観を取り払うところからスタートだな、と感じます。

そういう「喉以外にも仕事をさせる」事が身についてしまっている人(僕もかつてはそうでした)は、頭では「喉だけに仕事をさせなければ!」と考えていても、ふとした瞬間にかつて身に付けてしまった「喉以外にも仕事をさせる」癖が鎌首をもたげてくるものであり、これは仕方がない事だとも思います。

呼吸によって声を操作しようとする癖も同様で、理屈が分かったから今から治す!という訳にはいかないでしょうから、継続して諦めずに「喉だけに仕事をさせる」方向へもっていかなければなりません。

さて、今回はどうしたら「喉だけに仕事をさせる」ことが出来るのか?そんな事について書いてみたいと思います。

お付き合い下さい。


喉の仕事に手を出さない

発声に対して呼吸や腹筋を固めるなどの他の作用が加わると「自由に声を出せる機会を永久に失う」と言っても言い過ぎではないでしょう。

僕たちは本来は完全に自由な声の持ち主であったはずなので(赤ちゃんや子供の叫び声を思い出して下さい)、喉は「自由に動きたくてウズウズしている」と考えてはどうでしょうか?

それを「わざわざ」腹式呼吸で作った不必要な呼気や、身体の他の部分の力みによって阻害しているのです。

つまり喉は「声を出すのは俺の仕事だから、みんな手を出さないでね!素人が手を出すと足手まといになるからね!」と言いたいのです(笑)

つまり喉は「新しい仕事」を覚える必要はなく、「本来の仕事」をやりたがっていると考えてはいかがでしょうか?

 

喉以外が働かない状態で発声してみてください

では、喉以外が働かない状態・喉だけが働いた状態で発声するとはどういう事か?どんな感覚か?

それには「喉以外が仕事をしない姿勢」で発声してみる事です。

例えばこんな方法はどうでしょうか?

  • 部屋に寝そべってください。出来るだけ自然な姿勢で・・・試しに寝転びながら本なんか読んでもいいですね。そのまま何か少し歌ってみてください。
  • ソファーでゆっくりとテレビを観て下さい・・・番組の途中のコマーシャルで知っているものがあれば一緒に歌ってみてください。

上記は、ほぼ喉だけの仕事で発声できるはずです。

「喉から声が出ている」感覚が分かると思います。また高い音程は大声で張り上げたり、強い呼気で無理矢理出したり出来ないはずです。

僕は大学生の頃、友人たちと山へキャンプに行った事があります。友人の一人は大きな声で寝言を言う男だという事を知っていました。案の定、彼は寝言を言いました。寝たままの姿勢で、大きな声でハッキリと!・・・発声に「腹筋を固める事」や「意識して呼吸をコントロールする事」が必要無いという証明です。

また「赤ちゃんを寝かしつけるお母さん」をイメージしてください。

あんな不自然な姿勢でも、人はちゃんと歌う事が出来ます。

 

喉から声を出す

「腹から声を出す事が正しく、喉から声を出す事は誤りである」

この間違った考えは「しっかりした強い声=腹から出ているような感じがする」という、出ている声のトーンから「声の出し方」を勝手にイメージして伝えられてきたのでしょう。

また「甲高いダミ声=悪い声」という解釈も「腹から出ているような感じがしないから」という一方的な美意識からのものでしょう。実際は「甲高いダミ声」はボイストレーニングでは最も重要な声の一つなのですが・・・

その声が「腹から出ているようなトーン」であれ「喉で作られたようなトーン」であれ、すべて「喉から出る」ものです。

結論は「喉から声を出す事」だけが正しく、ボイストレーニングとはその事を思い出して再び身に付けていく事だともいえます。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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