発声における舌の位置 ~もちろん、気にしてはいけません~

「良い声を出す為には舌の位置に気を配ろう!」「舌根が喉を塞ぐと声が暗くなります。直ちに改善しましょう!」「常に舌は平らにすべし!」

このようなレッスンが行われる事も多いようです。

ネット上でも様々な意見が飛び交っているようです。

果たして、舌の位置と発声との関係は?

良い声を出す為には舌の訓練をせねばならないのか?

今回は上記の内容となります。

お付き合いください。


 

結論から申します。舌の位置の訓練は必要ありません。

 

まず、冷静に、シンプルに考えた方が良いと思います。

舌の位置や形、舌をどこにおいて発声すると良い声になるのか?

そんな事を考えて歌なんか歌えるはずはありません。

 

「いや、レッスンで舌根を平らにするようにトレーニングしたら、声の響きが確かに良くなりました!」

もちろん、こういう意見もありましょう。

確かにそうだとも思います。

声帯の振動は声道での共鳴によって増幅されて「声」となって発せられるので、舌根を平らにして共鳴部分である口の中の体積が広まれば響きは良くなることが想像できます。

ただし、それはトレーニングレベルでのことです。

問題は「トレーニングの時意外に、つまり実際の歌の中で、そんな絶妙な舌の操作ができるのか?」という事に尽きると思います。

レッスンでは単独の母音のみのトレーニングでしょうか?それとも「アエイオウ」と母音を変化させてのトレーニングでしょうか?

いずれにしても、歌の中・会話の中での母音の操作はその何十倍・何百倍も複雑なものです。

少なくとも舌のトレーニングが、歌や会話のような「あまりに複雑な母音の操作」に対して対応できるかと考えると、無理だと思います。

もちろんデモンストレーション程度の発声においては「舌根を平らに」したまま実行することは可能かもしれませんが・・・

そのまま本番の歌に応用するには、あまりに現実離れしています。

 

「いや、憧れの歌手のライブ映像を見ると、舌根は確かに平らでした!」との反論も出てくると思います。

僕は歌手の歌っている時の舌根の形について注目した事はありません。

おそらく、上手い歌手の舌根は平らで、舌の位置は理想的な状態にあるでしょう。

でもそれは「良い声で歌っている事の結果」の一つに過ぎないと思います。

素晴らしい声で観客を魅了している最中の歌手は「正しい舌の状態」「正しい呼吸の状態」「正しい喉の状態」である可能性はとても高いとは思いますが、これはあくまでも「良い声が出ている事に付随して現れた”諸所の状態”」であると思います。

この歌手は、間違っても「舌の位置」についてトレーニングしたり「舌根の形」を気にしながら歌っているわけではありません。

あくまでも彼らが唯一求めたものは「良い声」だけです。

そして、彼らが「良い声」で歌っている時は「舌の状態は」は必ず「正しい」のです。

つまり、「良い声が正しい舌の状態を作る」のですが、正しい舌の状態が良い声を作る」わけではないです。

よって、舌に関するどのような訓練も一切必要ありません。

「現れた状態」から良い声を辿る事は出来ません。

上記のように、「上手い発声の人の映像などを見て、その人に現れている体の状態を訓練する」トレーニングは道筋が逆転してしまっていると感じます。

ボイストレーニングは「発せられている声」が全てです。

必ず「聴く」という事を唯一最大の関心事にしていかないと、声を育てる事は中々難しいと思います。

自主練されている時の生徒さんは、発声している感覚なんかも日々変わっていきます。

その「自分自身の発声の体感」みたいなものも自主練においては重要であり、かつ励みになります。

でも僕たちトレーナーは、どうあがいてみてもその生徒さんの「体感」を共有できない運命なのですから、生徒さんが発している現状の声にのみ神経を尖らせるように努めていくべきだと思います。


なお、以下のブログでも今回と同じような結論となっている記事がございます。

ぜひ、参照にされてください。

ご精読ありがとうございました。

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