ツインボーカル・デュエット 喉の位置は?歪みは?相方の声を分析する

バンドの中でシンガーは、基本は「一人」であることがほとんどですが、時には「ボーカル2人」「ボーカル3人」といった例もあります。

所謂「ツインボーカル」を売り物にしているバンドをいくつも思い出します。また時には「ボーカル3人」なんていうパターンさえあります!

「サイモンとガーファンクル」「ピーター・ポール&マリー」といったアコースティック系のグループを除いても、思いつくだけでもたくさんの「複数ボーカル」スタイルのグループがあります。スウェーデンの「アバ」は、最も成功したツインボーカルスタイルのグループです。アメリカの「スリードッグナイト」はとても個性的な3人のシンガーを擁しています。個人的には、日本の「クリスタルキング」を強烈に記憶しています。「クリスタルキング」はベルティング系とハイトーン系、完全に個性の異なる2人のシンガーが歌っている、まさに不世出のグループでした。

さて、僕はキャバンクラブ大阪でビートルズナンバーを歌う仕事に就いていますが、このビートルズはツインボーカルスタイルの草分けともいえると思います。

ビートルズは「ジョンレノン」と「ポールマッカートニー」という、共にロック史に名を残すべき2人の名シンガーを擁していました。

ビートルズは「4人とも歌える」事を売りにしていましたが、ジョージハリスンとリンゴスターはシンガーとしては控え目な存在でした。やはりジョンとポールの声の魅力は絶大でした。2人の声はその時代の白人ミュージシャンの中でも指折りのインパクトを持っていました。彼らは黒人音楽に対する造詣がとても深く、声色や歌唱法にもその影響が大きく表れています。ビートルズという「白人のフィルター」を通して黒人音楽の魅力を知った人は数知れないのではないでしょうか?

ジョンとポールは、その強烈な声を時にぶつけ合い、時に寄り添い・・・ビートルズの音楽にパワフルな魅力を与え続けてきました。

もちろん、僕たちの仕事は「お客さんにビートルズの魅力を感じてもらうこと」に尽きるのですが、その一要素として「ジョンとポールの声のぶつかり合い」を表現する事はとても大きな比重を占めています。

さて、僕のキャバンクラブ大阪での役割は「ポールマッカートニー役」です。

仕事柄、何人もの個性豊かな「ジョンレノン役」と相まみえる事になるわけですが・・・そんな中で僕は相方の個性を殺さず、また相方と自分の魅力がより一層お客さんに伝わるように努めなければなりません。

そんな、ツインボーカルスタイルでの「相手の個性の光らせ方」「自分の光り方」について、この記事で少し書いてみたいと思います。

実際にツインボーカルスタイルで活動されているバンドのシンガーはそう多くないとは思います。この記事が、カラオケでデュエットする時などの参考にもなればとても嬉しいです。

この記事でのツインボーカルとはコーラス(ハモリ)という意味ではなく、あくまでも二人のシンガーが曲の部分部分をそれぞれソロで歌う、という意味で書いています。コーラスの場合は「ぶつけ合う」という選択はないでしょう。(一部のソウルフルなアメリカンスタイルのコーラスには「ぶつけ合う」に近い表現をするものもありますが・・・)

お付き合い下さい。

 

相方の声の個性を分析する

上記で少し書いた「クリスタルキング」のように、相方が「声のトーン」「音域」「歌唱スタイル」全てにおいて正反対の個性の持ち主である場合、ほとんど何の努力も必要なくお互いの個性が明確に浮かび上がってくると思います。

しかし、2人のスタイルにそこまで大きな差が無い場合は個性を際立たせる事は難しくなり、下手をするとツインボーカルの魅力が何も伝えられない、ということにもなりかねません。

そんな時は、相方の声を大まかに分析してみましょう。

分析項目は「喉の位置の高低はどうか?」「ガム(歪み)はあるか?」「ビブラートを多用するか?」等・・・

試しに相方の声や歌い方の真似をしてみても良いでしょう。そうする事で上記の項目の答えが見つかると思います。

 

対立か、協調か

上記で書いたビートルズのジョンとポールは、お互いの声を「ぶつけ合うか」「寄り添うか」・・・曲によって、また曲の部分によっても巧みに選択していました。

ジョンとポールのように、はっきとした意図をもって「対立か強調か」を表現した方が、音楽はよりソリッドなものになると思います。

具体的に書くと・・・相方が「喉の位置が高い」「ガム(歪み)の無い」「ノンビブラート」というスタイルで歌っているなら。

  1. 「喉の位置が低く深みのある声を少し歪ませて、ビブラート交じりで歌う」ことによって対立関係を作り、お互いの個性を際立たせる。
  2. 「喉の位置が高く鋭い声をクリアーに、ノンビブラートで歌う」ことによって協調関係を作り、音楽を整合性のあるスマートなものとして聴かせる。

上記のような両極端の選択肢が考えられます。

実際には上に書いたような「ゼロか100か!」といった選択にはならないと思いますが、音楽的なインパクトを考えると「自分で考えているより”極端に”」表現しないと、お客さんには中々伝わらないものです。つまり「徹底的な対立」か「徹底的に協調」かを意図した方が、お客さんには伝わりやすいと思います。

ビートルズにおいては「対立か協調か」を選択するのは、決まってポールの役割でした。ジョンはあくまでも「不変の個性」に拘った人でした。一方ポールの「可変の個性」は、ジョンの個性に寄り添いもでき、またぶつかる事もできました。ビートルズは「ジョン=不変」と「ポール=可変」が組み合わさる事によって、その音楽は無限のバリエーションを持つことになりました。

クラシック音楽的なマナーの中では「極端」な事が、いつも正義とされてきました。つまり「徹底的な対立」か「徹底的に協調」か・・・(あくまでもクラシック音楽的マナーからは)この二つの選択肢のどちらかが「正解」とされていました。

まとめ

いかがだったでしょうか?

まあ、あまり難しく考えずに、デュエットする機会があったら「相方とは全然違う声で歌ってやる!」と意気込んでみてください。

ボイストレーニングの見地からは「そっくりに模倣する」事と同じくらい「まったく正反対の声を出す」事は訓練価値が高いと思います。

また、相方そっくりに歌ってみても面白い反応が見られそうです(笑)

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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