ビブラートは歌いやすくなる。ジッとしているより動き続けている方が動作しやすい

僕は野球が大好きです。

父の影響で、子供の頃から熱心な「阪神タイガースファン」なんです!(僕は生まれてこのかた京都を出て暮らしたことがありません。大阪や兵庫と同じく、京都でもやはり阪神タイガースファンが圧倒的に多い印象です)

さて、少し想像してみてください。バッターボックスでピッチャーが投じるボールが来るのを待つバッターの姿を・・・何やら体のあちこちを小刻みに動かしてボールを待っていますね!もちろん選手によって程度の差はありますが、微動だにしないでジッと構えているバッターは少ないと思います。皆、足なり腕なり腰なりを”せわしなく”動かしてバットを構えています。

そんなバッターの構えは、ピッチャーの動きを読んで自分の体を動かし”バットを振るタイミングを計る”目的もありますが、もう一つは「次の動作に移行しやすくする」目的もあるのではないでしょうか?つまり、体をジッと硬直させておくのではなく、筋肉を適度に揺さぶりながらボールを待つことによって”バットが出やすく”しているのではないかと思います。(僕はただの野球ファンであり野球経験者ではないので指導の現場ではどうなのかは分かりませんが、少なくとも”原理的には”そういうことではないかと思います)

突然ここからはボイトレの話になりますが、このブログでも「ビブラート」について何度か書いてきました。※下記の記事をご一読ください。

「ビブラートは喉の自在性の現われ」「声の自由度をさらに高めるためにも、練習ではビブラートをかけよう!」・・・色々な言い方ができますが、”ビブラート”というものの性質をシンプルに表わすなら・・・

「正しい発声と深い関係があり、ボイトレとは切っても切り離せないもの」とだけは、いつでも口にすることができます。

 

ビブラートには”表現手法”に留まらない役割がたくさんあります

ビブラートをかける歌手かけない歌手、またビブラートの種類も大きな揺れから小さな揺れまで様々であり、それ自体は「表現手法の一つ」であり、またボーカリストの個性に大きく関わってきます。

例えば「前川清」の物真似をする時は、ほとんどの人があの独特で大きな揺れのビブラートを真似るでしょう。つまり前川清の個性の大きな部分は、あの”特徴のある大きな揺れのビブラート”が担っているのです。

ビブラートにはそんな歌の表現手法としての”表面的な”役割の他に「喉の自由度の”結果”となり、しかも”原因”ともなる」というもう一つの”機能的な役割があり、ボイストレーニングではむしろこの”機能的な役割”の方に注目するべきです。(ビブラートは自由度の高い喉でしかかけられず〈結果〉、また喉を更に自由にする効果もあります〈原因〉

そんなビブラートの”機能的な役割”についてもう一つ付け加えたいと思います。

 

ビブラートは歌いやすくしてくれる ~”規則的”で、次の動作に移行しやすいから~

自然なビブラートがかかっている声は、喉が”僅かなピッチの揺れ”を起こしている状態です。

つまりビブラートが自然にかかっている状態は、喉が硬直して「ジッと立ち止まっている」状態ではなく、筋肉が適度に揺さぶられている状態と考えることができます。

冒頭で書いた「ボールを待つバッター」と同じように、柔軟に柔らかに”次の動作”を待っている状態と捉えることができます。

そんな風に考えてみると「ビブラートのかかる喉は自由度が高い」ということは、尚更とても納得がいきます。

自然で健康的なビブラートの特徴として「規則的である」ということもあげられます。(健康的な”狭義の”ビブラートは、1秒間に6回半の揺れだと言われています)この「規則的である」という特徴も「ボールを待つバッター」の光景と一致します。規則的な動きこそが”次の動作に移りやすいのだとしたら、「ビブラート=わずかなピッチの揺れ」という”規則的な動き”が「歌の中での音程の変化=より大きなピッチの移動」という”次の動作”への移行を楽にしていることにも納得できます。

コーネリウス・L・リードは、自著「ベルカント唱法~その原理と実践」の中で、「ビブラートは歌唱を容易にする。全く動かないでいることは、自由に動いているよりずっと辛く疲れるから」と書き、さらに建築を例にあげ「大きな建物は完全な硬直状態からの負担軽減のために、振動と弾力のための余裕を持たせて建てられている」と続けています。※リードのいうビブラートは”理想的な喉の状態から自然に作られる”という、とても限定された意味でのビブラートです。この記事ではもっと広い意味で”音を規則的に揺らすこと”を「ビブラート」と捉えて書いてみました。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

野球のバッターと声を比べるのは、少し強引なこじ付けでしょうか?

確かにバッターのフォームは”身体全体を使った動き”であり、ビブラートは”喉の中の小さな筋肉だけによる動き”です。

けれど”人間の筋肉の動き”であることには変わりないので、そこに一致する法則があっても不思議ではないと思います。

また「不規則な動き」は辛くキツい、「規則的な動き」は疲れない・・・このことは僕たちが日常的に行なっている行動の中からも他にたくさん発見できそうです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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