声のコンディション作りとウォーミングアップ。第一声から最高の声で歌うために

僕は週に2~4回、ステージで歌っていますが、当然のことながら声のコンディションは日々違います。

もちろん、その日のコンディションに即したウォーミングアップを”念入りに”やらなければなりません。(本番までの時間が限られている時などは少し焦ります。短い時間で効果の高いウォーミングアップを選ばなければなりませんので・・・)

ライブで歌う時に目指すべきはもちろん「一曲目の最初の音から最高の声で歌う」ことです。けれどこれが中々難しいのです。

歌い慣れた曲を慣れた場所で歌う・・・しかも大抵は何日か前(時には昨日!)にも歌った歌なのに、やっぱり最初の一曲・最初の音から最高の声で歌い始められることは本当に稀です。

先日、たまたま昼間の用事が長くかかり出勤が遅くなってしまった日がありました。いつもなら自分自身のボイストレーニングとウォーミングアップに一時間以上はかけるのですが、その日は30分くらいしか時間がありませんでした。

仕方がないのでアンザッツを少しやって、何曲か歌って・・・ウォーミングアップとしては明らかに不充分だったと思います。

不安なままステージに上がり歌い始めましたが、やっぱり何かしっくりきません。声の音質が今一つ、狙った音程に当たらない、声が一本に繋がらず断絶だらけ・・・お客さんに不調を悟られまいとすることに必死になっていました。

やはりライブにおいて準備不足は厳禁であり、少なくとも一時間以上はウォーミングアップのために使うべきだということを再認識した一夜でした。

そしてもう一つ、僕の心の中にはある悪習が存在していました。それは「ライブは段々と調子を上げていくもの」という間違った常識です。このことについてももう一度考え直す必要があると感じました。

考えてみれば当然のことですね。お客さんは「最初は調子の上がらない」シンガーの歌を聴きに来ているのではないのですから。やはり最初の曲の第一声から”ガツンとくるプロの歌声を聴くためにお金を払ってくれているのですから。

そして、上に書いたような「準備不足」「最初は調子が上がらない」といったことは、他の世界に置き換えたらゾッとするような結末を生んでしまいそうだということにも改めて気づきます。

 

短距離走の選手なら取り返しのつかないことになる

これが短距離走の選手ならどうなるのでしょうか?とんでもない後悔をすることになります!

例えばオリンピックの100m走に出場する選手なら、4年間という月日を「10秒」という瞬間的な時間の中に凝縮するためにコンディション作りをしているはずです。

精神的にも肉体的にも、尋常ではない神経を配って準備をしてスタートの合図を待っているはずです。

僕は、自分をウサイン・ボルトと比べるつもりはありませんが、こうやって書いてみると「4年間の努力が10秒で潰えるかもしれない」・・・そんな厳しい世界があることに愕然とします。

 

パン屋さんならお客さんが離れてしまう

また「段々と調子を上げていく」という事をパン屋さんがやってしまったらどうなるでしょうか?またたく間に客足は落ち、そのパン屋さんはいずれ潰れてしまうと思います。

例えば、朝一番にそのパン屋さんで買ったパンの味が今一つだったとします。その言い訳が「朝一番は調子が出ないんです。昼から焼くパンはもう少し美味しく焼きあがりますよ!後でもう一度来てくださいね!」

・・・誰も二度と行きません。関西風にいうと「知らんがな!」という表現になります。

結局、僕の持っていた「ライブは段々と調子を上げていくもの」という悪習は、パン屋さんに例えるとこんなとんでもないことなのです。

 

全ての音を大切にしたい

この記事を読んでくれたあなたは、ぜひ「全ての音を大切に」歌ってください。

「全ての音を大切に歌う」・・・もちろん僕自身への強い自戒でもあります。

確かに、声のコンディションを作ることはとても難しいことです。ギターやピアノを弾く人とは違う特別な繊細さがいることとは思います。

一方、周りの人は声を使う人に対して寛容な面もあります。

「あの人、今日は声の調子が悪そうだね。仕方がないよ、風邪の季節だから」「あの人、最後の曲では声が出ていなかったね。仕方がないよ、あんなにたくさん歌ったんだから」・・・声を使う人には同情が集まります。けれどギタリストやピアニストは、このような同情の声をかけてもらえるでしょうか?そんなことはないと思います。

喉は確かに”特別な”楽器だと思います。けれどその楽器を操っていくということもまた”特別な”難しさを伴っています。

だからこそ、他の楽器にはできない”特別な感動与える”ということが可能になるのだと思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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