ライブ前の喉の調整。声が”重い”と感じるとき、ビジュアルイメージとメンタルコンセプト、そしてモニター

僕はボイトレをはじめて、かれこれ10年になりますが、声というのは本当に扱いの難しいものだと強く感じ続けています。

身体やメンタルの不調は声に即座に現れてしまいますし、「よし絶好調!」と言わんばかりにライブをスタートさせても、失望するような結果になることも少なくありません。(僕の場合はさすがに、ここ最近はそれも減ってはきましたが)

正しくボイトレしている全ての人の喉は、日々そのポテンシャルを上げ続けているはずです。今持っている力を普通に出せれば、右肩上がりに成長している声を聴かせられるはずなのですが・・・中々そう上手くはいかないのが実情です。

僕の声をシビアに聴いてくれているお客さんからは「先月の方が声がよく出ていたね!」との感想をいただくこともあります。「え?今日の方が調子が良かったし、声もずっと安定していたと思うけど・・・」と反論したくなりますが・・・お客さんの感想こそが信用すべき指標ですね。「調子が良かった」「安定していた」などは僕自身の体感でしかありませんので。”先月と今月”・・・ボイトレは、たった一ヶ月では目を見張る成果は現れにくいものです。最低でも3ヶ月、いや半年・・・声の成長はそれくらいゆっくりとしていて、歩みの遅いものです。

とはいえ、ライブで歌うシンガーにとっての準備やウォーミングアップ、これはとても大切なものです。素晴らしい能力を持ったアスリートでも、身体の準備なしに良い記録を達成することは難しいのと同様に、シンガーにとってのウォーミングアップは”今日聴かせ得る最高の声”を引き出すために間違いのない方法で念入りに行ないたいものです。(特に調子の悪い時のウォーミングアップ、これは念には念をいれなければなりません)

 

さて、先日のライブ、僕の声はリハーサルでとても”重く”感じられていました。「調子悪いな、高音がちょっと厳しいな」と、そんな感じだったのですが、諦めずに色々試したところ、本番では割合上手くいったのではないかと思います。

今回はそんな”ウォーミングアップ成功体験記”を、記事として書き残したいと思います。

 

声が重い=声に”地声感”が強く残り、高音との間に壁があるようなイメージ

一般的に”声が重い”という表現を使うことがありますが、僕も調子の悪い時はそんな”声が重い”という感覚を味わいます。

声が重い・・・言うまでもなく極めて比喩的な表現です。声に重量などありませんので。けれど的を得た表現だと思います。深酒した翌日の朝なんかに”体が重い”と感じることがありますが、まさにあんな感じです。声が言うことを聞いてくれない、反応が遅い、何一つ上手くやれそうな気がしない・・・そんな感じです。

”重い声”の音質的な特徴は「地声感いっぱい」「ダンディ」「声に厚みがある」といった印象でしょうか。油断するとピッチはフラット気味になります。換声点より上の音域を出すことがとても難しく感じます。誰しも換声点辺りには大なり小なりの”溝”のような断絶を感じるものですが、その”溝”はとてつもなく大きい”大河”のようにさえ感じられます。

もちろん「ダンディで厚みのある声」が悪いわけではありませんが、その日の僕はそんな音質的な特徴を声にまとう必要はありませんでした。むしろ高音を歌うための”声の軽さ”こそが、今日のライブには必要でした。

結局、リハーサルでは声の重さを取ることができませんでした。「このままではいかん!負け戦を自ら志願するようなものだ」という思いで、リハーサル終了から本番までのおよそ一時間、色々と策を練ることにしました。

 

”一本化された声”のビジュアルイメージを脳裏に焼き付ける

ボイトレする目標を一言で現すなら「低音から高音まで、換声点を超えて声を一本化する」ということになるでしょうか。

地声と裏声の音域が切れ目なく繋がっている、しかも裏声の音域にも地声のパワーが活きている・・・そんな声を目指して僕たちボイトレ学習者は日々練習しているのであります。

そんな”一本化された声”のビジュアル的なイメージを、僕は「先の尖った鉛筆」のようなものと捉えています。声の持つ質感や音量は、少なくともその日の声が軌道に乗ってくるまでは”高音に向かって先細りするイメージ”を持つべきだと僕は考えています。そうすることで高音では少ない息で、喉をより小さな動きでコントロールすることが”自動的に”できるようになります。

調子が上がってくれば、厚みのある高音で声量豊かに歌うことも可能ですが、ライブの序盤のうちは、”高音を先細り”させるイメージを最優先させることにしました。

 

”軽い声の歌手”をメンタルコンセプトする

それから次は”軽い声”の歌手の声を、聴くなり想像するなりして、頭の中で明確にその声のイメージを作り上げます。

僕がその日イメージしたのはジャーニーのスティーブペリーの声です。スティーブペリーの声からは”重さ”や”圧力”を僕は感じません。この一見イメトレ的にも感じることが、歌の現場ではとても役に立ちます。

自分の出したい声を頭の中でイメージすることは、声にとって見過ごせない大切な準備の一つです。

 

モニター音量を少しだけ上げる

もう一つ、少し裏技を使いました。

実はリハーサルの時、僕は自分のモニター音量がとても小さいと感じていました。最近はアコギライブも多い僕の耳は”自分の声を潤沢に聴く”という贅沢を味わう機会が多くなっています。僕にとっては久しぶりのバンド形態のライブだったので、正直に言うとリハーサルで歌い始めた瞬間は「うわあ、こんな大音量の中で歌わなければいけないんだあ」と思いました。ここ最近の僕の耳と喉は甘やかされすぎていたのですね。

けれど、僕はリハーサルではモニター音量を敢えてそのままにしておきました。

そしてリハーサルが終わって本番までの間に「僕のモニターの音量を少しだけ上げてください」と、音響さんに頼みました。野球の選手が練習では重いバットを振り、本番では軽いバットを使う。そんなイメージです。

自分の声を聴きすぎること・・・ピッチがフラットするなど弊害も多いですが、調子の悪いシンガーにとっては”心の拠り所”となるのもまた事実です。いつもの練習の時のように”自分の声を聴きながら”歌えるんですから、これほど安心することはありませんね。

「自分の声を聴きながら歌うこと」・・・その利点は声の音質を改善しやすいことです。また音質をリアルタイムに改善していくことで、喉の機能を高め調子を上げることができます。「良い音質の声が出ている=喉がリラックスしている」という図式です。

 

と、まあこんな感じでライブのための準備をしました。

最後の項の”モニター云々”は、かなり飛び道具的なのですが・・・ライブで歌うシンガーとは、どんな飛び道具を使ってでも戦に勝ちたいものなのです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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