強い地声と強い裏声を作る。素材に手を加えないミックスボイスは失敗する

僕自身が「取り敢えず繋げる」という、インスタントなミックボイスで失敗した経験から、「声区の分離・強化・(再)融合」というボイストレーニングの伝統的な3つのステップがとても重要であると、このブログでも何度か書いてきました。

面倒な事は抜きにして、「地声と裏声をミックスする」という過程へ一足飛びで辿りつきたい気持ちは、僕も良く分かります。

そして、稀にこのような「取り敢えず繋げる」という訓練で上手くいったという人もいるのかもしれませんが、仮に現状上手くいっていたとしても、将来何かのバランスが狂ってきた時に、修復のプロセスを自分で見つけられるか否かは、上で書いた「分離・強化・(再)融合」の概念を知っているかどうかに大きく左右されると思います。

やはり「地声」「裏声」という「声にとっての、たった二つの素材」に対して手を加えようとするかどうか?そしてボイトレとは「素材に対して手を加える」ものだという事を知っているかどうか?は歌を生涯の友とする人全てにとって、とても大きな意味を持つのだと思います。

今回は上記の内容で掘り下げてみたいと思います。

お付き合い下さい。


素材が悪いのに、綺麗に完成するはずはありません

「取り敢えず繋ぐミックスボイス」・・・僕自身何の疑問も持たずに一生懸命練習していた時期があります。

つまり「最初からスケール練習などを使って地声と裏声をミックスする」訓練を長い間やってきました。

現実には「声の一本化」には6年~10年かかると言われています。僕自身の自分のトレーニングに対する体感としても、やはり「6年~10年」かかりそうです!(残念ながら例外はなさそうです!笑)

しかし、冷静に考えると、このような訓練方法は「素材に対する働きかけ」を一切していません。

声に必要な素材とは、たった二つ、つまり「地声」と「裏声」ですが、それに手を加える事を一切行いません。

これでは「木を見て森を見ず」ならぬ「森を見て木を見ず」であり、声の不自由さの根本的な「素材の質」に目をつむったまま練習を続けることになります。

 

まずは「上質な素材」を追求していくべきです

声にとっての素材の質を高めていく、つまり「地声」「裏声」をそれぞれ、より一層上質なものに鍛えていくという事が大切になってきます。

「上質なミックスボイス」とは「上質な地声」と「上質な裏声」によって成り立っている、という考え方です。

 

「素材同士のバランス」も大切です

実際は「地声」と「裏声」のバランスもとても大きな問題です。

「地声」ばかりがとても強く「裏声」が弱い、またはその逆・・・ほとんどの人はバランスが崩れているので、ボイストレーニングを進めるにおいては「弱い方を強化する」という考えを持たねばなりません。

「取り敢えずミックスボイスを出そう」とすると、上記とは逆に「強い方を弱くしてバランスをとる」事しか出来ません。僕の経験からも、こうやって繋げたミックスボイスはとても危うく、少しバランスを崩すと途端に崩壊してしまいます。(多くは”声が裏返る”という現れ方をします)

正しいボイストレーニングとは、地声と裏声の「強い方はより強く」、「弱い方はそれに追いつくように更に強く」という考え方で、それぞれに働きかけていきます。

つまり「強い方に合わせる」どころか、両方を更にどんどん強くしていき、より高いレベルでバランスをとっていくのです。

これが3つのステップのうちの「強化」です。

 

苦境に立った時には「素材」を見直す事が出来ます

仮に「取り敢えず繋いだミックスボイス」で、上手く歌えている人がいるとします。

こういう幸運な人がいないとは限りません。ある程度強い地声と裏声を持っていて、そのバランスが良好だった場合は・・・いきなり上手くいく人もいるでしょう。

ただ、この人は一旦その絶妙なバランスが崩れた時に、自分で修復する事が出来るでしょうか?

ミックスする以前の「素材に対する働きかけ」を経験していないと、どこから手をつけて良いかわからないのではないでしょうか?

一方、素材に手を加えた経験のある人は、そんな時も強いです!上手くいかない理由を「素材」に求める、つまり地声と裏声をそれぞれ取り出して個別に強化し再びバランスを整える事が可能でしょう。

有名な海外の歌手でも、ある時を境に急に声が衰える人がいます。声に魅力がなくなり、キーを何音も下げないと歌えなくなっている歌手はたくさんいます。こういう人達は「全盛期は、自然に上手く歌えていた」ために、「素材を見つめ直す」という事を知らないのかもしれません。なので一旦声のバランスを崩すと、途端に雪崩式に衰えてくるのかもしれません。

 

ミックスジュースに例えると・・・

例えば美味しいミックスジュースを作りたい!とします。

取り敢えず作ってみたものの、風味が今一つで全然美味しくありません。

理由を考えてみると・・・牛乳は古く腐りかけていて、バナナは黒く変色していました!

これでは(どんなに高性能のジューサーを使ったとしても)美味しいミックスジュースは出来っこありません。

やはり、まずは何よりも先に「瑞々しく風味豊かなバナナ」と「深いコクの新鮮な牛乳」を手に入れる事から始めなければなりません。

 

まとめ

「良い素材」こそが「良い料理」の大前提であるように、自由度の高い声には必ず「良い地声」と「良い裏声」が必要です。

この根本的なステップをすっ飛ばした先に、「自由に歌う」という未来はありません。

ボイトレの3つのステップ「声区の分離・強化・(再)融合」、特に「分離と強化」は一見面倒くさく、時間ばかりかかる事のように思われるかもしれませんが、結果的に回り道をしないでゴールに辿りつくための「最短ルート」でもあります。

ぜひ、正しい概念の上でボイトレに励んで頂きたいと思います。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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