声域を広げるには? ~音程を積み算してはいけません~

「声域を広げるには?」「あの歌手は声域が広い!」等々・・・

声域(歌える音域)を広げる為にボイトレしている人も多いと思います。

事実、声域が狭いと歌える歌が限られてしまうので、「あの歌が歌いたい」「レパートリーを増やしたい」と考えると、広い声域を獲得する事が必須となってきます。

ただ「声域を広げる」という事は、日々ボイトレをして一音一音積み算のように出せる音域を増やしていく、というものでは決してありません。

この記事では、上記の内容で書いてみたいと思います。

お付き合い下さい。


声域拡大の第一歩は「2つの声区を使う」こと

声区とは「地声」「裏声」の事を指します。

声の状態は千差万別なのですが、中には地声でしか歌えない人や裏声しか出せない人がいらっしゃいます。

地声でしか歌えない人は男性に多い印象です。こういう人はとても大きな声で歌い、音程が高くなっても地声のまま持ち上げようとするので、裏声に移行する事が出来なくなっています。一方裏声でしか歌えない人は女性に多く、地声が衰弱していて低い音域も息交じりの弱い裏声で歌う癖がついてしまっています。こういった人たちは、反対の声区の機能が失われている訳では決してありません。ボイストレーニングをする事によって必ず地声・裏声、両方きちんと出せるようになります。

こういう「片方の声区しか持たない人」は、まず「反対側の声区」を取り戻さなければなりません。

つまり地声しか出せない人は裏声を、裏声しか出せない人は地声を、それぞれ出せるようにトレーニングする事が何より先に必要な事です。

そして「反対の声区」を取り戻す事は必ず可能であり、取り戻せた暁には声域は一挙に2倍に広がります。

ただし、この時点での「反対の声区を取り戻す事によって2倍になった声域」とは、ただ「発声可能である」というだけに留まります。現実問題として歌に使えるかというと、そう簡単にはいきません。しかし「発声可能」という意味では、この時点でもマイケルジャクソンやホイットニーヒューストンと遜色のない声域を(数値上は)得た事になります。

 

二つの声区を使って歌うための「声区融合」

上で書いたように2つの声区をそれぞれ獲得したならば、次はこの2つを繋いで一本化しなければ歌には使えません。

ここからが本当の意味でのボイトレのスタート地点といえるでしょう。

地声と裏声を繋ぐために、それぞれを個別に強化し、最適な状態で融合する・・・お馴染みのトレーニングに入っていきます。

ヨーデルや演歌など、地声と裏声が繋がっていないような表現を使うジャンルもあります。(これらのジャンルのシンガーは、声を「ひっくり返す」テクニックを多用します) ただ、彼らは「繋いでいない」だけで「繋げない」訳ではないと思います。「見事にひっくり返す」テクニックは相当に高い喉の機能を必要とします。彼らは「繋げる・繋げない」を使い分ける事が出来るはずです。

 

陥りがちな声域拡大の考え「音の積み算」

「俺の最高音は””だ!調子が良ければその上の””まで出せる!」「ボイトレを頑張って””まで出せるようになりたいです!」「声域が広がって””まで出せるようになった」・・・

こういったセリフを聞かれたことはないでしょうか?

このような思考は、いわば「音の積み算」での声域拡大であり、ボイトレを失敗させます。

上記で例に挙げたセリフは「張り上げ」「地声の持ち上げ」「息の強さで」といった考えに支配されていて、「地声と裏声を融合して一本化する」という、ボイストレーニングの根本的な概念と矛盾しています。

音程を積み算して声域を拡大する考えは、「腹式呼吸」「腹に力を入れて」といった「呼吸に頼る」トレーニングと同じ方向性です。これは真っ先に意識改革するべき発想で、この考えを捨てないとボイトレの成功はあり得ません。

 

地声と裏声の境目の音が難しいと感じるなら、正しい発声をしている証です

上記のような「音程の積み算」での発声では、音程が高くなればなるほど難しいはずですが、これは正しい発声ではありません。

地声と裏声が正しく融合された声の持ち主にとって一番難しいのは「地声と裏声の境目の音」であるはずです。

「地声と裏声の境目」の事を、喚声点・パッサジオなどと呼びます。具体的には地声を段々と上げていって苦しくなる手前のド~ミ辺りでしょうか。この近辺の音は声のトーンや母音の調整など、あらゆる意味で発声が難しいです。この喚声点の位置に男女の差はないという意見もありますが、僕がレッスンをしている感覚としては、女性の喚声点は男性よりも2~3音高い印象です。(ミ~ラ辺り)

逆からの発想で、喚声点付近の音を難しいと感じるような声のゴールに向かってボイトレをしていくべきであり、もしその辺りの音を(より高い音より)難しいと感じるならば、トレーニングの方向性は概ね正しいともいえます。

僕もライブが立て込んでくると、決まって歌いにくくなるのは「喚声点を多く含んだ歌」です。この近辺の音が「破綻しよう」とします。つまり、疲労によって地声と裏声の融合が上手くいっていない為です。

 

まとめ

地声と裏声、2つの声区が発声可能なら(数値上は)その人は3オクターブに近い声域を既に持っている事になります。

ただし、問題は「はたして、歌に使える声か?」という事であり、それを解決するためにボイストレーニングを行なっていると言えるでしょう。

また、決して「音程の積み算」で声域を拡大するという発想を持つべきではありません。

いつも、一番難しいのは喚声点付近の音であるべきで、そう感じられるならボイトレの方向性は間違っていません。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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