話し声の特徴から、苦手な母音やアンザッツから、声の傾向を予想する 

僕がお世話になっているキャバンクラブ大阪は、毎日ビートルズナンバーのみを演奏する日本でも稀なライブハウスです。

世界一有名なバンドであるビートルズは、一般的なバンドとしてのジャンル分けとしては「ボーカルグループ」と呼ばれる事が多いようです。

僕の主観ではビートルズは正真正銘の「ロックバンド」なのですが・・・世間の認知としては「イエスタデイ」や「レットイットビー」等のスローなバラードのイメージが強いようです。しかしコアなファンでビートルズを「バラードで有名な・・・」という修飾語で語る人はあまりいないように思います。ビートルズは世間のイメージとは裏腹に、実はとても激しいロックを演奏していました。特にジョンとポールの歌声を先入観なしに聴いていみてください。ほとんど「歪み=ガム」の塊です!

ビートルズがなぜ「ボーカルグループ」という冠をつけられていたか?それは「メンバー4人全員が歌えるから」だと思います。

ジョンレノンとポールマッカートニーという、当代随一の名シンガー2人を擁し、第三のシンガー・ジョージハリソンが個性的な歌声で彩を加え、ドラムスのリンゴスターでさえアルバム中必ず1曲は歌っていました。

こういうスタイルのグループは「ロック」のジャンルの中ではとても珍しいです。お店での通常営業ステージでは、この「メンバー全員が歌える」というビートルズの特徴をお客さんに感じていただくために、必ず4人各々のボーカル曲がリストに加えられます。

さて、そんなビートルズのバンド編成上の特徴から、お店には常時「4人のシンガー」が在籍している事になります。そして、僕は毎日「自分を含めた4人のシンガーの声」を分析するチャンスがあります。これはボイストレーナーとしてはとても良い仕事環境だと思っています。

最近、僕は自分自身を「ボイトレおたく(もちろん良い意味で 笑)」だと思う事があります。人が歌ったり話したりする声を分析したくなるからです。

当然、楽屋でも声・歌についての話題が出る事も多く、中にはボイストレーニングにとても興味を持っているシンガーもおり、そんな人と共演する日の楽屋では、僕もつい熱くなり「ボイトレおたくトーク」に花が咲きます。

ボイトレおたく同士の会話は、周りから見ると一種異様な光景かもしれません。何しろ出てくるセリフは「アンザッツ5番」とか「フースラー」など、普通の人は使わない言葉ばかりです。

さて先日、あるシンガーと楽屋で話をしていた時、僕は彼の歌声と話し声から彼の声の傾向を予想していました。そして、その予想が的中した事例があったので、今回はその事について書いてみたいと思います。

 

お付き合い下さい。


声の傾向を予想する

僕たちが演奏したり歌ったりする曲の多くはビートルズの有名曲です。時折マニアックな曲もリクエストに応えてお届けする事はありますが、基本は誰でも知っているような超メジャーな曲を中心にメニューを組んでいきます。

そんないつものステージで、上述したボイトレマニアのシンガーが歌っている声を聴いていました。(もちろん僕も同じステージに上がり、一緒にベースを弾いていました)

彼はこれまではずっとYUBAメソッドをやっていましたが、最近になってアンザッツを始めた、と言っていました。

ちなみに彼の話し声は「太く豊かで低い」傾向にあります。

分かりにくいので、彼の声の傾向を少しまとめます。

  • 太く豊かな低い声で話す
  • これまではYUBAメソッドをやっていた
  • 最近になってアンザッツを始めた

彼の声を聴いているうちに、僕のボイストレーナーとしての興味が沸々と沸きあがり、以下の仮説を立ててみました。

  • 「イ」母音が歌いにくい
  • 「ウ」母音が得意

さて、楽屋に戻って彼に尋ねたところ、僕の予想は的中しました。

第一に、なぜ「イ」母音が苦手だろうと考えたかというと、「彼の話し声」と「最近アンザッツを始めた」という2点からです。

彼の話し声の特徴からして「アンザッツ5番が弱い」事が感じ取れます。僕はアンザッツを始める前の彼の話し声をよく知っていますが、彼の話し声には「まだ」アンザッツの効果が現れていません。つまり元々5番が弱いタイプの声なのですが、その日聴いた声もやっぱり5番が弱い特徴を備えたままでした。

「アンザッツ5番」は「イ」母音と大きな関りがあります。つまり5番が育っていない人は「イ」母音が歌いにくいのです。

 

もう一つの予想「ウ」母音が得意な事も、やはり的中していました。その理由は彼がこれまで取り組んできたYUBAメソッドの影響です。

ボイトレを独学で勉強されている方はご存知だと思いますが、YUBAメソッドは「裏声のホーホー」で有名になったメソッドです。裏声で「ホーホー♪」と歌う事によって「歌う為の筋肉を鍛えるという説明がされています。そしてこの「ホーホー♪」は、アンザッツに当てはめると「4番」の音色なのです。

そして「アンザッツ4番」は「ウ」母音と深い関係があります。つまり彼はYUBAメソッドを長くやっていたので「ウ」母音が育っているのです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ボイトレを学んで人の声を良く聴いていると、その人の声の傾向が分かってきます。

それからもう一つ、今回の事例から言える事は「歌いにくいには必ず理由がある」という事です。

「アンザッツの育ち方のアンバランス」「母音の問題」など・・・原因は様々でしょう(しかし根っこで繋がっている場合も多いのですが)

しかし、必ず原因を求めて解決していく事は可能だと思います。

やみくもに「苦手な曲は1000回歌って克服する!」というような方向性の練習をしないで、きちんと分析して(もしくはトレーナーに分析してもらって)筋道を立てて改善していく事が大切だと思います。

声とは、そういう「理詰め」で改良が可能なものだからです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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