一瞬の高音は意味がない。「持ちこたえられる喉」に育てる事が真のボイトレです

突然ですがプロレスラーのスタンハンセンの「ウィー!」という雄叫びをご存知でしょうか?

あの「ウィー!」は音程的にだけみると相当「ハイトーン」です。

だいたいhiA(高いラ)くらいでしょうか。

今では笑い話ですが、プロレスも好きだった僕はスタンハンセンの雄叫びの音程を実際に計測した事があるのです。世の中の「高音すべて」に過剰に反応していて、「良い歌・良い音楽」という本来の目的を見失っていた時期でした。ハンセンの雄叫びのように「瞬間的な高音」なら、たくさん転がっていると思います。あまり難しい事ではないからです。

「高いラ」と言えば、ボイトレ関連動画などでデモンストレーション用によく歌われている、レミオロメンの「粉雪」の最高音と一緒です。この歌の難しいところは最高音である「ラ」をどう出すか?ではありません。序盤の静かで低い導入からサビでは音域そのものが全体的に上がっていき、その中で「ラ」が何度か出てきます。このサビを「中音域で”持ちこたえながら”何度か出てくるラの音を捉えられるか?」が難しいのです。

ハンセンが「俺の最高音はhiA(高いラ)だぜ」とは言わないでしょうが・・・

つまり、「瞬間的に高音を出す」ことは、それほど難しいことではありません。

この記事では、喉の機能の重要なポイントである、色々な意味での「持ちこたえる」ことについて書いてみたいと思います。

お付き合い下さい。


色々な「持ちこたえる」

音程を持ちこたえる

高音でずっと歌う曲はもちろんですが、それほど高い音域でなくても同じ音がずっと続いたり、喚声点付近ばかりを歌う曲は「持ちこたえる」事が必要になってきます。

曲の後半になると音程がフラットしたり、ロングトーンの語尾が下がってしまったり・・・こういう事はよく起こります。録音して聴いてみると分かりますが、自分では同じ高さの音を保っているつもりでも微妙に語尾がフラットしてしまうのです。こういう現象は、日々のボイトレによって喉の機能回復が進んでこなければ「対処療法(つまり”フラットするから高く歌うようにする”)」しか手立てはありません。まずは録音して客観的にその状態を自覚しなければなりません。無意識に起こっている「フラット癖」をまずは意識する事から始めて、あとはボイストレーニングをしながら「音程を持ちこたえられる」喉を作っていきます。

メンタルを持ちこたえる

↑上記にも通じる事ですが、喚声点付近を頻繁に歌う曲や、後半に何度もサビを繰り返す曲などは「精神的に持ちこたえる」事が必要になってきます。

つまり「破綻させよう」とする曲の作りに抗って、強いメンタルで喉の神経支配を切ってしまわないように「持ちこたえ」なければなりません。

母音の調整も「メンタルの持ちこたえ」といえるかもしれません。曲の後半、喉に疲労がたまってくると「ア」のような母音はどんどん”開いて”いってしまいます。これを持ちこたえて、他の母音との整合性を保つ事はかなりの「メンタル的持ちこたえ」を必要とします。そして、母音の崩れは、そのまま喉の機能の崩壊~歌の崩壊へと繋がってしまいます。

 

表現を持ちこたえる

「曲の前半は感情豊かに歌えるけれど、後半になるほど一本調子になってしまう」「前半は豊かなビブラートをかけられるけれど、後半ではかける事が出来ない」

「持ちこたえられない喉」では、曲全体を通して、望むような表現が出来ません。

全ての感情表現や装飾は「喉の機能」に依存します。後半にビブラートがかけられなくなる原因は「喉の機能の未熟さ」です。つまり、あなたの喉の機能は「まだ後半にビブラートをかけれる程には回復していない」という事です。

 

まとめ

歌にとって何が難しいかといえば、この「持ちこたえる事」です。

音程はそんなに高くなく、簡単そうなのに完唱が難しい歌は、色々な意味で「持ちこたえなければならない」からです。

難しい歌のサビだけを歌うようなデモンストレーションはあまり意味がありません。

一曲全部を歌って「持ちこたえる事」が出来るかどうか?さらには2曲3曲と続けて歌って「持ちこたえる事」が出来るかどうか?この事が声の実力・歌の実力を測る上で一番大切な事です。そして、後半に大きな盛り上がり(転調して高くなったり、難しいフェイクがあったり)のある曲を上手く歌えるか?という事も歌の実力の大きな目安です。こういう歌はフィギュアスケートで最後の最後に大技ジャンプが組まれているようなものです。

ボイトレでも「持ちこたえる」練習は難易度が高く、トレーニングの仕上げとして使われます。

同一音程で、裏声~地声~裏声へとグラデーションで変化させる練習(メッサディボーチェ)が最高峰の練習だとされるのは、この練習が「持ちこたえる事」を訓練するからです。

さあ、僕も皆様も大いに「持ちこたえられる」喉を目指して、日々訓練を積み重ねていきましょう!

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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