歌の練習はボイトレではありません。歌ばかり歌っていたのでは、歌は上手くなりません。

克服したい歌の難しい箇所、出にくい音程を躍起になって練習する・・・

ついつい長々とやってしまいがちですが、これはあまり意味が無い上に余計な疲労を喉に蓄えてしまって、いわば害ですらあります。

仮に何とか歌えるようになったとしても根本的な問題は何一つ解決してないので、他の歌でまた同じ壁にぶち当たる事になります。

つまり風邪をひいて鼻水に悩まされているのに、身体そのものには何の処置もせずにティッシュを鼻に詰めてるようなものです。

「何とか歌えるようになる」とは、悪い言い方をすると「小細工を施して」という意味です。例えば「本来なら力強く歌いたい箇所を裏声で弱く歌う」「歌詞を曖昧にしてごまかす」「高音のフレーズを低くフェイクする」などです。しかし、これらの「小細工」を「独自の表現」として歌に取り込んでしまう方法もあります。例えば「高音を裏声で逃がす」歌い方を、「裏声で誤魔化した」ではなく「わざと裏声を使って対比させた」という風に表現へと転嫁するのです。声の完成には、年単位の時間が必要です。当然その過程で発表会やライブの機会はあると思うので、現実的な対処は必要になってきます。

この記事では、ボイトレと歌の練習とを区別して考える事について書いてみたいと思います。

お付き合い下さい。


難しい歌を繰り返し練習しても埒があきません

まず前提として、歌の練習はボイストレーニングではありません。

難しい歌を何度も歌って喉を疲れさせる・・・一見、体育会的で、喉の筋肉が激しく鍛えられているように感じますが・・・

確かに鍛えられてはいると思います。

ただし、鍛えられているのは「今のあなたが発声に使っている筋肉」のみであり、「未使用の筋肉」は鍛えられていません。

声が自由に出せない理由はの一つは「喉の筋肉の一部が未使用の状態」のまま放っておかれているからです。

なので「今、歌に使っている声」ばかり使う事はボイストレーニングにはならず、逆に喉の筋肉バランスの悪さを推し進めることになります。

おそらく、ボイストレーニングに通ったけれど改善しなかった、むしろ歌える歌が減った!という人は未使用の筋肉を未使用のままにして、すでに使っている筋肉ばかりを肥大させたからだと思います。僕自身、こういう経験があります。高音の歌ばかりを練習していて、歌える歌が極端に減ってしまった時期がありました。(ほんの一時期、声が良く出る瞬間があります。ただし、その後はまるで副作用のように喉の調子は下降線をたどります

 

ボイトレに時間をかけた方が早道です

難しい歌がある時は、とりあえず一旦その歌から離れた方がよろしいです。

そして基本的な発声を見直して、しばらくは基礎的な訓練だけに集中します。

そして三カ月後に満を持して問題の歌に再挑戦すれば、きっと以前とは違う感覚が得られるはずです。

歌唱テクニックにも、ボイストレーニングとしての価値があるものもあります。ビブラートや歪み声、母音の練習などは、喉の機能回復を推し進めてくれます。ただ、これらの練習も単音やごく簡単なスケールの中で練習する方が良いと思います。歌は(たとえどんなシンプルな歌でも)ボイトレのお供には複雑すぎます。ボイストレーニングは声のトーンや断絶など、とても細かい部分に注意を払いながら進めていかなければいけません。その為には使う音形はシンプルな方が適しています。

歌に関わる問題のほとんどは発声に関する問題です。

発声を見直す事は何より増して効果的で、他の方法は対処療法でしかありません。

ボイトレによって発声の諸所の問題が解決し始めると、歌の表現の領域まで自動的に解決に向かいます。それだけ「上手く歌う」ことは「喉の機能」に依存するといえます。あなたの周りの歌が上手い人を想像してみて下さい。「音域が広く声量がある(喉の機能が優れた)人」で、歌の下手な人は少なく、反対に「音域が狭く声量もない(喉の機能が未熟な)人」で歌の上手い人もいないでしょう。

また、人は皆その人なりの「歌心」を持っています。

そのせっかくの個性的な「歌心」も発声が不自由なままではいつまでたっても表には出てきません。

その「歌心」が美しいか否かはその後の問題にはなりますが・・・
(このあたりはジャンルに応じたマナーを身につける必要はあります。)

声(喉)や管楽器は「歌心」を隠せない楽器だと言われます。誰でも「個性的な歌心」を持っていて、それは例えば童謡のようなシンプルな歌を歌ったとしても「個性」として表に現れてきます。それは「息をそのまま音にする」という楽器の特性からだと思います。ピアニストやギタリストにも「息遣い」によって「歌心」を表現する奏者がいます。彼らは息を直接楽器に送り込めないために、楽器を「歌わせる」ことがとても困難です。「生まれつき無個性な歌手」を見つける事は、とても難しいのではないでしょうか?

 

まとめ

歌はボイトレには向きません。複雑すぎるからです。

とにかく、迷ったら基礎的な発声を見直す事です!

どんな分野でも、基礎練に一番時間をかけた人が一番早く目標に達する事が出来るのは共通なのかも知れませんね!

 

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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