【フースラーの言葉】良い声・美しい声を求めていく努力が発声を助ける、喉を調整する

声のひびきの美しさを得ようとする努力だけでさえ、知識はなくても、発声器官から最も重要な過程を魔法で作り出すのである。美しいということは、この場合には自動的調整作用さえもっている。

フースラー

僕は少し料理をします。それほど誉められたものではありませんが、「焼きそば」「麻婆豆腐」「回鍋肉」・・・中華料理が得意で、料理本や”クックパッド”のお世話になりながら色々と作っています。

最近では上述の”クックパッド”のように、どんな料理でもネットでレシピを知ることが出来る便利な世の中です。おかげで料理本の売り上げは下がっているのではないでしょうか?ボイトレの情報も同じことですね。その気になればネット上でかなりの知識を得ることができます。けれど料理でもボイトレでも、情報を見つけてそれをそのまま家で実践しただけで上手くいくなら誰も苦労しません。理想はやっぱりマンツーマンのレッスンです。生徒さんが先生のまえで実行してみる・・・それに対してリアルタイムに先生からの指示が飛ぶ・・・時には予想だにしなかったアドバイスも飛び出すでしょう。そんな過程の中にこそ本に書かれていない”たくさんの大切なことが含まれているのです。

料理をしていると「切れる包丁」の大切さを感じます。研がれていない切れ味の悪い包丁は、使いにくいばかりか料理の味にまで影響を与えるようです。大きさが不揃いになって火が通らない部分が出来てしまったり、材料の断面が壊れて旨味が逃げたり・・・

これは、料理をやってみて初めて気付くことなのではないでしょうか。僕も自分で包丁を使うまでは「材料なんてバラバラになりさえすればいいんだ」くらいにしか考えていませんでした。けれど、実際には”材料の大きさが不揃い”という見た目の悪さ以上に、料理の味そのものを悪くしてしまうようです。道具の手入れは想像以上に大切なのですね。

声についても同じことが言えます。声とは「歌うこと」のために使われる、いわば”道具”であるわけですが、これが錆びついていたり壊れていたのでは歌う際に不具合を感じるでしょう。いやそれどころか、最後まで歌うことさえ難しはずです。

「声の質なんかどうだっていいんだ、ただ最後まで歌えればいいんだ」・・・この考えは間違っています。よしんばそう考えたとしても、それは不可能なことなのです。適当に出した声は結局途中で破綻し、きちんと最後まで歌うことを阻むはずです。

「声の質」にこだわること無くして声の改善・歌の上達はあり得ません。「音質にこだわることが歌う能力を育てる」・・・これは確かに言えることです。

 

「音質にこだわる」ことが上達を促した僕の経験

僕がクラシックギターをやり始めたころの話です。

それまでアコースティックギターやエレキギターしか弾いたことがなかった僕は、クラシックギター特有の「爪で弾く」右手の使い方が上手くいかずに悩んでいました。先生から教わったとおりに爪で弦を弾こうとするのですが、ペチペチと不快な音がするばかりでレコードで聴くような豊かな甘い音色には程遠い音しか出せませんでした。

その時の僕は、音楽の勉強よりも「自分が弾くギターの音色」にしか興味が持てず、爪の長さや形を変えたり弦への当て方を変えたり・・・曲を弾かずにそんなことばかりに時間を費やしていました。

そしてついに理想に近いギターの音色を出すフォームを見つけましたが、そうすると不思議なことに今まで難しくて弾けなかった練習曲を割と簡単に弾くことが出来ました!ペチペチと汚い音で弾いていた時には最後まで弾くことさえ難しかった曲が弾けるようになっていたのです!

つまり、音色を求めて色々試しているうちに僕は初めて”練習曲を最後まで弾けるフォーム”にたどり着いたのだと思っています。

結局、音色へのこだわりが正しいフォームを生み、演奏能力を進歩させたのです。

 

「魔法で作り出し」「自動的に調整される」喉の素晴らしい能力

冒頭の引用文の中でフースラーは「魔法」「自動的に」という言葉を使って、喉の能力の凄さ・素晴らしさについて書いています。

「声の美しさ」を求めることが、喉を(魔法のように)自動調整する・・・確かにそうだと思います!

こんな実験はどうでしょうか・・・

カラオケで好きな歌を歌うとします。次の2種類の方法で試してみましょう。

  1. 徹底的に”よく響く声”を出すように意識して、丁寧に歌う。
  2. ただやみくもに、行き当たりばったりで歌う。

きっと(1)の方が楽々と歌い切ることが出来るのではないでしょうか。それこそ魔法のように自動的に喉が調整されて・・・

 

さて、冒頭の引用文の中には「声のひびきの美しさを得ようとする努力だけでさえ、知識はなくても」とあります。

この言葉にはボイストレーニングの根本的な指針が詰まっているようにさえ感じます。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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